20230921 引き続きサルトル

目当てにしていた戯曲「出口なし」も「汚れた手」も読み、どちらも緊張感のある良い戯曲で満足したのだが、熊野純彦『サルトル』で小説『自由への道』の語りについて触れたところがあり、

マチウの口から発せられたせりふが、ブリュネの口のなかでおわる。マチウか、ダニエルのものだったはずのことばが、文が終結するころにはボリスのものとなっている。ピトーと精神科医との会話が、ジョルジュとカフェのギャルソンとの会話に混じりあってゆく。…「外だわ……。すべて外で起こっているの」とイヴィックが呟くと、語りは外部へと溢れだしてゆく。

熊野純彦『サルトル』

これは、俺が修士論文(笑)で触れた「移人称」の硬派なものなのではないか? と思い、気づいたら「日本の古本屋」で『自由への道』6冊揃を買ってしまった(10年くらい前の出版だが、品切れになっている)。だいたい岡田利規の小説「三月の5日間」(今見たらこれもAmazonで品切れ……学生の頃はおもしろく読んだのだが、今ではもう読まれないのだろうなぁ)は2003年を舞台にしながら1968年的な主題があると感じていたが、学生の頃にサルトルを読んでいれば、修士論文もどこかしら変わったものになっていただろう。

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