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高三の夏に書いた雰囲気小説

およそ10年前、高三の夏に書いたらしい非常に短い小説が2本見つかり、記念に残しておこうと思い、あげておく。読めたものではないのだが……。何というか、ギャルゲーの影響を感じる。

「少年時代」

 いっしょに行かない? 
 そう彼が言ってくれた時には本当にどきどきしたし、すごく嬉しかった。
 彼はもう、帰ってしまっただろう。明日からはもう、今までと同じようには話せないのかもしれない。そう思うと、すこ

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従姉の死

 私はどこかに出かけていた。川沿いの道かもしれないし、納骨堂かもしれないし、ちょっと歩いて砂浜まで行ったのかもしれない。ともかくどこかに出かけ、そして父方の実家に帰ってきたところだった。靴を脱いで玄関を上がり、居間の戸を開けると祖父母や親戚が机を囲って黙って座っている。私を見上げ、叔父が「千夏の心臓が止まった」と呟く。いつもはひょうきんな叔父で、だから彼の真顔は他の人の真顔よりも真実味があると私は

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時の何かを知らない

一昨年から昨年にかけて書いた小説。原稿用紙142枚。縦書きPDF。

一 集合

 捜索は三月のある土曜の昼過ぎに始められた。
 その日はよく晴れていた。南風がやや強く、日向にいると暖かく、薄手のコートでも着ているとじんわりと暑さを覚える程であったが、日陰に入るとやはり時節並に肌寒く感じられた。
 その日、昼過ぎ、四人は校門を待ち合わせ場所としていた。
 まず現れたのは修二であった。学校は丘の上に

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