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帰納と驚き

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#意識

帰納と驚き 序章

 本稿はいくつかの哲学の難問を足掛かりとして、私と世界の構造を粗描することを目的としている。
そのための主な道具はオッカムの剃刀だ。
世界が今このようにあるためにはどのような前提が要請されるのか?
私たちはこれから、不要な先入観を排して、可能な限り簡潔に、この要請される前提を追っていくことになる。
世界の前提を、その前提の前提を、そのまた前提を追う過程は、私の成り立ちを遡行する道程でもある。
その

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帰納と驚き 第4章 意識

 第1章では、私たちの知識および認識が、この世界を前提とした帰納によって得られることを確認した。
第3章では、「この世界」という言葉で私たちが素朴に思い浮かべる客観的世界が、意識に映る世界から帰納推論を経て獲得される概念であることが明らかになった。
つまり、知識と認識はこの客観的世界から帰納され、この客観的世界は意識に映る世界から帰納されているのだ。

 では、第3章で前提として扱った「意識に映る

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帰納と驚き 第5章 間違い

 前章では、私が無自覚に世界を予測していて、その予測と実際の世界の邂逅する場が意識であることが明らかになった。

 しかし、その章末でも触れたとおり、この説明には明白な問題がある。
前章の結論は、意識の前提として「予測」と「世界」とを要請していたが、私たちが一般的に言う「予測」とは意識のうえでなされるものだ。
意識のうえでなされるのではなく、その前提としてある「予測」とは何だろう?

 また「世界

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帰納と驚き 第6章 変化

 私たちは第3章で、客観的世界を構成する時間と空間が意識世界およびその斉一的変化を前提としていることを明らかにした。
続く第4章ではその意識世界の前提として、帰納の始点である原世界が要請されることが明かされた。
 
 では客観的世界のもう一つの前提として要請されていた「斉一的変化」はどうなったのだろう?
意識に映る世界はひとときも留まることなく変化しつづけている。
この意識世界の変化があるためには

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