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人魚

連なった泡を眺めていた 
水面へと昇って消えてった
きれいだった
 
祈りを込めて歌を歌った
誰かに届けばと願うたび
儚かった
 
分かり合いたい もっと知りたい
望めば望むほどに息苦しくなる
これじゃまるで溺れているよう
ねぇ 私の居場所はまだ残っていますか?
 
あぁ 泳いで 泳いで 泳いで 
泳いで 泳いで 泳いで 泳いだ
この尾ひれが何のためにあるのか
分からないままに時間が経つから
 
仰いだ世界はきらきら光ってきれいで
少し怖かった
いつまでたっても臆病なままで
そっと遠くから眺めているだけ
憧れの場所も 憧れの人も
幻みたいに揺れている
 
例えばこの声と引き換えに
立派な脚を手に入れたとしたら
どうだろう
きっと目の前にいるであろう貴方にさえ
なにひとつ伝えられないんだ
 
もどかしくて 口を開けたって
冷たい空気が流れ込んでくるだけ
これじゃまるで打ち上げられた魚と
まるっきり同じじゃないか
 
あぁ 泳いで 泳いで 泳いで 
泳いで 泳いで 泳いで 泳いだ
くだらない妄想 振り切るように
今日も空を見上げて歌い出した
 
不安で不安で隠した気持ちが
何よりも大切だった
いてもたってもいられなくなってさ
こうして今も言葉を紡いでいる
生きてる世界が違うというなら
そんなことどうでもよくなるほどに
 
歌って 歌って 歌って 歌って
歌って 歌って 歌った
歌って 歌って 歌った
 
気付いて
私 ここにいるって気づいてほしくて
歌った
おとぎ話になるくらいならもう
不格好でもいい 貴方に会いたい
 
仰いだ 世界はきらきら光ってきれいで
少し怖かった
生きてる世界が違ったとしても
この声が貴方に届きますように
私がいたこと ここにいたこと
この歌が証明してくれる

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