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ショートストーリー:好き嫌い

「ママー、今日のごはん何?」
「うーん、にんじんが沢山あるからそれ使おうかなー」
「えー、嫌だ!にんじん美味しくないもん!」

子供が妻のにんじん料理に反対している。
本来なら俺は妻を応援し、子供が食べるのを推奨するべきだろう。

しかし、それはできない。
何故なら、俺もにんじんが嫌いだからだ!

にんじんなんて食べれなくても問題ない。
俺はそう信じている。

だから今回はマー君を支援するのだ!
頑張れマー君、にんじんなんて不要だと妻に言うのだ!

「あ、じゃあこの前おばーちゃんの家で食べたにんじんしりしりにする?」
「あ、それなら食べれる!」

……なん、だと!?
マー君はいつの間にかにんじんを克服した、と言うのか?
……そんな、馬鹿な!
俺と同じくキャロットケーキすら食べれない、あのマー君が!?

「あ、貴方もそれでいい?」
「パパーにんじんしりしり食べよー!」

妻の笑顔と子供の笑顔。
その前に反抗することは出来なかった。
笑顔を浮かべる。

「わぁい、ままのりょうりたのしみだねー、まーくん」
「うん!」
「今日はにんじんパーティーね!」

顔で笑い、心で泣く。
これが父親なんだな、と。
そう思った。

その日大量のにんじんを食べた。


……美味しかったのが悔しいと思いました。


【あとがき】
大人になっても、意外と食べれるようになっても、美味しいと思っても、嫌だった野菜って苦手意識ありませんか?







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