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ショートストーリー:綺麗好きな人

駅に向かう途中で忘れ物に気付き家に戻る。
鍵を開けようとしたところ、何故か鍵が開いていた。
閉め忘れたのか、と思い玄関に入る。
知らない男が部屋に居た。

何故か俺の部屋を掃除していたが。

「……あの」
「……はい」
「……どなた、でしょうか?」

間違いなく知り合いではない。
沈黙が流れる。
マスクにサングラスに帽子を付け、手袋までつけている。

まさか、と思ってしまった。

「……ひょっとして空き巣ですか?」
「……」
「空き巣、なんですね?」
「……はい」

思ったより早く認めてくれた。
警察に通報しようかと思ったが。
それより気になったことを聞く。

「なんで掃除してるんですか?」
「……──だ」
「え?なんですか?」
「お前の部屋が汚すぎるからだ!!」

急に大声を上げ始めた。
何なんだ、いきなり!

「食べ終わったカップ麵の容器や缶はちゃんと洗ってから捨てろ!
匂いが酷いことになるだろ!
洗濯物はちゃんと畳んでタンスなりに仕舞え!
なんでそのまんま床に脱ぎ捨ててるんだ!
机の上に物を重ねて置くな!
ちゃんと換気しろ、埃だらけだろうが!」

ボロクソに言われる。

「綺麗好きな俺からしたら信じられん汚部屋だ!
今までの空き巣人生でぶっちぎりのワースト1だぞ!
思わず掃除してしまったじゃないか!?」
「す、すみません」
「全く。最低限綺麗にはしたが!
今度来る時までにもう少し綺麗にしとけよ!
じゃあな!」
「は、はい!ありがとうございました!」

そう言って玄関から見送る。
綺麗になった部屋に満足しながら、用事があることを思い出し。
駅に再度向かっている途中に思い出した。

「あ、警察呼ぶの忘れてた」



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