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ショートストーリー:ツアーガイド

「はーい、足元気をつけてくださいねー!
暗いので足を外さないでくださいねー!
危ないですからねー!」

たくさんのお客さんを引き連れて暗い洞窟を進む私は、ツアーガイドだ。
この仕事に憧れたのはいつからだったか。
気が付いたら人を導くこの仕事で働くのが夢だった。

とは言え、現在は思ってたのとは少し違うが。
私が案内している人達、実は既に亡くなっているのです。
私はこの人達をあの世、と呼ばれる地に導く案内人なのです。
勿論私も既に現世の生き物ではありません。

折角ツアーガイドの面接に合格したのにこんなことになるなんて。
親孝行も碌に行わない私は、最高の親不孝者でしょう。

…………。
ですが。
それでも。

「はーい、皆さんここからすこーし息苦しくなりますよー!
気をつけないとすーぐ悪霊化しちゃいますからねー!
気をしっかり持ってください!
それじゃあ、行きますよー!」

私は。
今の仕事を。
今の仕事に。

満足してます。


【あとがき】
夢が叶うならどんな状態でも良い、は本当なのかどうか。
悩ましいものがあると思います。

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