【連載小説】君の消えた日-二度の後悔と王朝の光- 0話 プロローグ-覆水盆に返らず-
【目次】
炎と煙に包まれた建物の中で目を覚ました。
少しだけ顔を上げてみると、色鮮やかな屏風や御簾、几帳にも燃え移っていた。身体をゆっくり起こそうとすると背中に激痛が走った。息を吸う度に苦しい。
部屋を仕切っていた御簾が燃えて落ちた。その奥に人影が見える。火の手が回る前に連れ出さなければと思い、痛みを堪えながら近づいた。
近くには血のついた短刀。
白い狩衣は真っ赤に染まり、血溜まりができている。
倒れている彼の虚ろな瞳は何を映しているか分からない。
ゆっくりと近づき、頬に触れると驚くほど冷たかった。首にも指を当てるが脈を感じることはできない。
守るべき人が死んだのになぜ自分は生きているのか。絶望感に苛まれてその場から動くことができなかった。
【次話はこちら】1話 幼馴染の噂1-火のない所に煙は立たぬ-
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