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ぜんぶ、あなたのせいよ

人は、言い訳をしたがるようにできている。

何か失敗をしてしまった時、それを、
酒のせい、疲れのせい、上司のせい、部下のせい、
にして、自分の責任を認めたがらない。

本当は自分のせいだとどこかでわかっていても、
他のせい、人のせいにすることで、
自分を慰めてしまう心理は、
ある面、とっても人間らしい。

例えば、
あの夜「満月だったせい」、
あの日「雨が降ったせい」というように、
風物や情景のせいにしてしまうのも、
実に雅やかで、艶かしく、
そう言われたら、その通りだと認めてあげたくなる。

あの日、あの時、
あなたに抱かれたのは、

雪が降っていたから、
月が綺麗だったから、
花が咲いていたから、
鳥がさえずっていたから、
風が気持ちよかったから、

そうじゃなかったら、抱かれなかったのよ、と、
あなたに思わせぶりにすがりつかれれば、
私は愛おしく抱きしめるだろう。

そしてそのままあなたを激しく抱いて、
雪が溶けるほどに熱く燃え上がらせた後に、
「こんなに淫らな女になってしまって」と私が囁くと、

あなたは、きっと、
「ぜんぶ、あなたのせいよ」
と答えるに違いない。

それは最高の讃美。

素敵な責任転嫁。

全部、
私のせいにしてしまっていい。

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