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涙のカクテル

人は、

嬉しくて、
悲しくて、
感動して、
怒って、
痛くて、

涙を流す。

生物学的にみるならば、
どの涙の成分にもなんら変わりがないのだろうが、

涙を流す本人にとってみれば、
それぞれの涙に含まれるものは、全く違っている。

嬉しいならば、その喜びをさらに膨らませ、
悲しいならば、その心を癒し、
感動しているならば、さらに心を震わせて、
怒っているならば、その怒りを鎮めさせ、
痛いならば、その痛みすらも和らげる。

そんな成分が
その感情に応じて涙の中に分泌されるから、

涙がとめどなく流れるときは、
あえて涙を拭わないほうがいい。


あなたの涙をこの舌ですくい上げた時、
あなたの喜怒哀楽の成分がカクテルのように混ざり、
その時々で味が異なるのは、

私に抱かれて喜びと感動の味がもちろん多いのだけれども、
それ以外に
私に抱かれるまでに抱えてきた感情の涙の濃淡が混ざるから。

あなたの涙を舐めて、
あ、疲れていたんだな、
あ、元気で頑張っていたんだな、

と、

あなたのそれまでの感情の揺らぎが、
私にはわかる。

それがどんな味であろうとも、
私に抱かれた喜びと感動の成分に、
私もじわりと涙をにじませる。

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