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Forget Me Not

「私はあなたを愛して…」
と言い出してそこで言葉が止まったなら、
あなたは当然その後に続く言葉は、
「愛している」と思う。

だけど日本語の宿命として、
「愛していない」あるいは、
「愛していた」と続くことだってあるはず。

文章が最後まで終わらなければ、
相手の意図することがわからない日本語だから、
その言葉の流れが相手の心を動揺させ、
期待させ、不安にさせたりもする。

日本語は結論の前に、
様々な修飾語や形容詞を入れることができ、
相手の心を揺さぶり、いたぶり、喜ばせ、湿らせることができて、
言葉を巧みに使える人にとっては、
さながら言葉による前戯のようだ。

英語の場合は、
先に否定か肯定かをはっきりさせてしまうから、
こんな言葉遊びは難しいが、

Forget me not

という不思議なフレーズがある。
Do not forget me ではなく
Forget me not.

文字通り日本語と同じで
「私を忘れて」と思わせておいて、
「私を忘れないで」と
否定形を最後に持ってきているのはきっと、
恋人から忘れられたくないという気持ちが、
英語圏の人にとって共通しているからなのだろう。

いろんな制約がある世の中で、
会うに会えない男と女がたくさんいて、
夜を迎えるたびに、
自分のことを忘れないでと願っている。

忘れないで。
Forget me not.

「で」と “not”がきっと
一番最後の砦になって、
恋人たちを守ってくれるだろう。

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