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東京都知事選挙2024 分析① 小池百合子



はじめに

 過去最多56人が出馬した2024年の東京都知事選挙。主要4候補とされた小池百合子、石丸伸二、蓮舫、田母神俊雄の中ですと、石丸伸二が下馬評を覆し2位につけ、選挙後インタビューで報道陣に苦言を呈し波乱を巻き起こしました。またマスコミからの扱いが非常に限られていた、主要4候補を除いた52候補の得票率を合算すると10%以上に上り、多様な選択肢が示され選ばれていたことも特色でした。
 さて本選挙結果を分析すると、様々な傾向が浮かび上がってきました。母数の確保や簡潔性の観点から、得票率1%を超えた9候補に絞って、得票率順に独自の分析結果を紹介していきます。今回は、3期目当選の小池です。

集計方法

 以下の手法によりデータ集計をしています。

  1. 東京23区及び都内市部の各自治体を単位として得られた各候補者の得票率の集合を候補者ごとに表にまとめる(※1)

  2. 都内の23区及び市町村ごとの各候補者の得票率を色塗りマップにする

  3. 社会的背景として、老年人口割合、単独世帯割合、子育て世帯割合、外国人人口割合、平均年収、を1.の表に自治体ごとに併記する(※2)

  4. 各候補者・社会的背景の組み合わせで散布図を作成する

  5. 単独世帯割合(図1)、平均年収(図2)について老年人口割合が交絡因子となっている。同世代との比較という視点から表すため、平均年収については千代田区(11,212,575円)港区(13,967,976円)渋谷区(10,737,020円)が回帰直線から大きく外れるため、この3点を除外した(図3)を作成する

  6. (図1)(図3)の回帰直線から、老年人口割合から期待される期待単独世帯割合・期待平均年収を自治体ごとに算出。実際の値との差を実質単独世帯割合、実質平均年収として算出し併せて得票率との間の散布図を作成する

(図1)老年人口割合-単独世帯割合
(図2)老年人口割合-平均年収
(図3)実質老年人口割合-平均年収

 単独世帯割合・平均年収と実質単独世帯割合・実質平均年収のどちらが優れているということはありません。前者は年齢的背景を問わずどうなのかということを見るのに優れ、後者は同世代との比較という前提条件を含めてどうなのかということを見るのに優れます(老年人口割合が同じでも20代の割合に差ができるなどありますがノイズが入るリスクが上がるのでこれ以上細分化しません)。どちらの観点を重んじたいかによって使い分けができます。精度としては修正作業が間に入るぶん後者のほうが下がりますが、直接的なアプローチでわからないものが視覚化されます。
 少数の極端な高収入者に引っ張られる平均年収より年収の中央値や年収XY万円以上の人口割合等を使用するのが望ましかったのですが、区市町村レベルで細分したデータが見つからなかったり古すぎたり世帯年収しかなかったりといった事情により、妥協的に平均年収を使います。相関係数R^2や方程式が併記されていますが一部の平均年収が非常に高い自治体に引っ張られてx軸上の分布が歪んでいることに注意します。
 では早速紹介していきます。

小池百合子データ集

 まず得票率のマップを載せ、その後社会的背景との散布図を掲載します。

得票率

小池百合子得票率

 全自治体で得票率1位となっています。多摩や島嶼部を中心に街頭演説を行った影響もあってか、東京23区から離れるほど得票率が上がるといった結果となっています。23区の東部も得票率高めです。

老年人口割合

小池百合子-老年人口割合

 決定係数R^2が0.6以上と強い直線性となっており、高齢者の多い自治体から得票していることがわかります。これは全てに言えますが、高齢者の多い自治体から得票する傾向が強いからと言って、必ずしも高齢者からの得票率が高いとは限りませんが、その可能性としては高いということを示しており、推論の参考材料として十分に有用と思われます。

単独世帯割合・子育て世帯割合・実質単独世帯割合

小池百合子得票率-単独世帯割合

 単独世帯割合との関係性としては強い直線性で単独世帯割合の多い自治体で得票率が低くなっています。決定係数が老年人口割合とのそれと近い値であり、その影響が強く現れていると疑われます。

小池百合子-子育て世帯割合

 単独世帯割合との関係と概ね左右対称な形です。子育て世帯が多いほど単独世帯割合は少なくなりやすいため、予め書いておくとこれはすべての候補者共通して見られた傾向です。そのため実質子育て世帯との散布図は省略としました。

小池百合子得票率-実質単独世帯割合

 老年人口割合からの交絡の影響を取り除いた結果、先ほどと比べて直線性が大きく低下しました。それでも、単独世帯の多い自治体で得票率が低い傾向は保たれています。予め書きますが9候補の中で実質単独世帯との間の回帰直線の傾きがマイナスとなったのは小池のみです。小池は2期の間、子育て支援を手厚く行っていました。ゆえに子育て世帯からの支持を集め、反動として単独世帯からの得票率が低くなり、それが反映されたものと思われます。

外国人人口割合

小池百合子得票率-外国人人口割合

 外国人人口割合については弱くも多い自治体のほうが得票率が下がる傾向となっています。

平均年収・実質平均年収

小池百合子得票率-平均年収

 500万円ごろまで極めて強い直線性で右肩下がりとなりそれを超えるとほとんど40%周辺を保っています。

小池百合子-実質平均年収

 老年人口割合の影響を取り除いても依然、平均年収が少ない地域で得票率の高い傾向が残ります。

まとめ

 通算3期目当選の小池は、東京23区部で得票率が低く離れるほど高くなる傾向であり、23区の東部も高かったです。高齢者の多い地域で得票する傾向が特に大きくなっており、子育て世帯の多い地域からの得票率、平均年収の低い地域の得票率も高い傾向にありました。

注意書き

(※1)得票率データの参照元
東京都選挙管理委員会事務局 候補者別得票数(全候補)
https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/uploads/r06tochiji_kaihyo_kouhoshatokuhyo.pdf

(※2)各データの参照元

・老年人口割合・・・住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別) 令和6年1月 第3-1表 区市町村、年齢3区分別人口(人口総数)
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/juukiy/2024/jy24000001.htm

・単独世帯割合・子育て世帯割合・・・令和2年国勢調査 世帯の家族類型,世帯人員の人数別一般世帯数-全国,都道府県,市区町村
https://www.google.com/url?q=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/13271643/www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page%3D1%26toukei%3D00200521%26tstat%3D000001136464%26cycle%3D0%26tclass1%3D000001136466%26layout%3Ddatalist%26tclass2val%3D0&sa=D&source=editors&ust=1720786250720143&usg=AOvVaw3lcZzN9oqpbRIJ9llumLMx

・外国人人口割合・・・住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別) 令和6年1月 第3-3 区市町村、年齢3区分別人口(外国人)
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/juukiy/2024/jy24000001.htm

・平均年収・・・令和5年東京都 所得(年収)ランキング
https://www.nenshuu.net/prefecture/shotoku/shotoku_pre.php?prefecture=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD

 なお、子育て世帯とは、夫婦と子供からなる世帯、男親と子供からなる世帯、女親と子供からなる世帯、夫婦,子供と両親から成る世帯、夫婦,子供とひとり親から成る世帯、夫婦,子供と他の親族(親を含まない)から成る世帯、夫婦,子供,親と他の親族から成る世帯の合算を指します。

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