「ねえ、ヘイセくん。豊かさってなんだろう?」
「ねえ、ヘイセくん。豊かさってなんだろう?」
「なに言ってんだ突然。note公式じゃあるまいし」
「いや、改めて考えてみるとわからないよねって」
「はあ?Google先生に聞いてみろよ」
そうか。とりあえず分からないことはまずGoogle先生か
豊かさとは?
1 満ち足りて不足のないさま。十分にあるさま
2 経済的に恵まれていてゆとりのあるさま
3 心や態度に余裕があって、落ち着いているさま
4 量感のあるさま
5 他の語に付いて、基準・限度を超えているさまを表す
いろいろな意味があるけど豊かさってのはやっぱり、
何かが十分にあって不足していないこと
時間があって豊か。
食べ物があって豊か。
お金があって豊か。
でもそれってどれくらいあったら豊かになるんだろう。
100万円あったら豊か?
500万円あったら豊か?
1億あったら豊か?
いいや、欲深い人間なんだ。どこまでいっても満たされたなんて思うことはないんじゃないか。
「ねえ、ヘイせくん。豊かさってなんだろう」
「お前、まだ考えてたのかよ」
「僕らって別にお金があるわけじゃないけど豊かだよね」
「それはどこと比べてんだよ」
「──え?」
「自分が豊かどうかなんて、誰かと比べないとわからないだろ?」
うん。僕は無意識に比べていたんだ。教科書で見た貧しいと言われる国の人たちと。水を飲むために6時間歩く子供と勉強に6時間使う僕らじゃ豊かなのは明らかに──
「でもさ、テレビで見る限りアフリカの人とかってすげえ幸せそうに笑うよな」
「そ、そうなの?」
「そうだぜ?イッテQとかで見るもん俺」
た、たしかに言われてみればスタバなんて知らないであろう子供たちの目は眩しい。僕らがフラペチーノを飲んでいる裏でひょっとしたら泥の水を飲んでいるかもしれないのに、それでも彼らは幸せそうに笑うんだ。じゃあ、綺麗な水をフレペチーノにして飲んでいる僕らはどうだろう。彼らより自信を持って幸せと言えるだろうか。彼らのように笑えるだろうか。
僕は水に困ったことなんてない。今日食べる物で悩むときだって〝今日は何が食べられるだろう〟じゃなくて〝今日は何を食べよう〟で悩んでいる。それなのにどうして自分が豊かであることに疑問を抱くんだろう。どうして自分が幸せだと心から言えないんだろう。
「それで、なんの話だっけ? 豊かさだっけ?」
「豊かなかことと、幸せって、イコールにならないのかな?」
「豊かだから幸せ。幸せだから豊かって話か?」
「うん。僕らはきっと豊かな国の人間なのに、ここが幸福の国なのか自信が持てないや」
「豊かかどうか、幸せかどうかなんて言ったもん勝ちだろ」
「え? 言ったもん勝ち?」
「腹一杯ラーメンが食えた。それって幸せだし豊かだろ」
「確かにそれは食べ物が足りていて満たされて豊か──」
「アホ。そんな辞書の意味と見比べてんじゃねえよ」
「あ、アホ!?」
「辞書の意味通りに豊かな奴なんてどれだけいると思ってんだ──」
心に余裕がある人
物に恵まれている人
経済的にゆとりのある人
足りない物がない人
そんな人はいないとヘイセくんは続けた。だから彼は言ったもん勝ちと言うんだ。
「じゃあヘイせくんは豊かなの?」
「そりゃ豊かだろ。飯が食えて雨も気にせず寝れて何もしなくても学校に行けるんだぜ?」
「あはは、じゃあ僕も豊かだ」
「豊かが何か。幸せが何か。そんなの考えて正解を決めるのが貧しいぜ──」
人の数だけ豊かがあって幸せがある。偉い人や有名な人。それこそ辞書に決められるんじゃなくて、自分で自分の豊かさや幸せを決められる人間になること。それが一番のゆたかさだとヘイセくんは語った。
でもそのヘイセくんの考えこそ今の僕にとって正解かもしれないや。きっとそう言ったら彼は「わかってねえな」と説教を続けるだろうけど。
ねえヘイセくん、僕に足りなかったものは自信だったらしいよ。根拠のない自信ってやつ。君のように言ったもん勝ちと言えるその自信さ。
「ありがとうヘイセくん。なんか分かったかもしれない」
「にしてもお前とこうやって無駄な話をして時間を潰してる。俺ら最高に豊かだな」
「ちょ、無駄話って失礼だなヘイセくん!」
「じゃあまた明日な」
「うん。また明日」
──また明日。そうやって何も心配せず君に会える日がやってくる。ああ、僕はなんてゆたかで平和な日々を生きているんだろう。
hitono kane de 焼肉 ga kuitai