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曇ヶ原フジロック出演への躍進 +2024.06.29東高円寺最速ライブレポ

公式HP

曇ヶ原が、あのフジロックに出る。
このニュースは、プログレ業界のファン・アーティスト共に大きな話題となった。

彼らなら、遠く、もっと高くはるか彼方へ飛び立ち、日本一を超えて世界を代表するプログレバンドにすらなれるのではないか・・・そんな期待感が、胸を熱くするのだ。

https://note.com/ao_msc/n/n39d224405448

4/29のワンマンライブを観た後にこのように書いたが、私は関係者でもないただのファンなので、まさかこの頃はフジロックに出演するなんて思いもしなかった。想像していた以上に、飛翔の日はすぐ傍まで迫って来ていたみたいだ。
フジロックには、国内アーティストだと2002年と2021年に四人囃子、2017年に原始神母が出演し、近年では水中スピカ・バスクのスポーツがGo Go a Rookie枠で出演している。その他のプログレアーティストも定期的に出演しているようだが、コピーではなくオリジナルの国内産プログレッシブロックバンドで、フジロック主催者からのオファーでの出演は四人囃子以来の快挙であると考えると、2023年早稲田大学学園祭にて四人囃子の一色触発カバーを披露したことは運命的なものを感じられて感慨深い。

※動画は2024年に収録・公開されたYoutube

フジロックで初めて彼らを観る方や最近気になった方のために、せっかくなので彼らの掲げる「プログレッシブ・ハード・フォーク」とは何か、そして飛ぶ鳥を落とす勢いの日本のプログレッシブ・ロックシーンの先頭に立つ曇ヶ原がどんなバンドなのか、紹介したい。

曇ヶ原とは

正式メンバー:
石垣翔大 - ヴォーカル/ベース/12弦アコースティック・ギター
ヴァイオラ伊藤 - ギター
a_kira - キーボード
ムJAPAN - ドラム

サポートメンバー:
西平匠杜 - ベース(2024年6月~)

曇ヶ原はベース兼ボーカルである石垣翔太さんによって、2010年に結成された。紆余曲折を経て2017年にGtのヴァイオラ伊藤さん・DrumsのムJapanさん、2019年にKeyのa_kiraさんが正式加入すると、2021年に初の国内流通フルアルバムである「曇ヶ原」を発表した。
結成から現在に至るまでの変遷詳細は、こちらのWikiを参照されたい。

いきなり第14期などと書かれていて一般人の音楽ファンはビビるかも知れないが、まあ最初は現メンバーだけ覚えておけば十分だ。とても暇な時にキング・クリムゾンのwiki欄を見てほしい。プログレとはそんなものなのである。

プログレッシブ・ロックとは何かはwikiを見れば大体分かるかと思うが、要は60年代〜70年代に流行した、既存の音楽の枠にとらわれない、前衛的な音楽である。ただ、この説明だけでは具体的にどんな音楽なのか想像がしづらいと思うので、King Crimson・Yes・Pink Floyd・Emerson, Lake&Palmer・Genesisの五大バンドを聴いてほしい。
もしも一通り全部聴いたなら、「で、どんな音楽なのよ?」と思う。初めて聴いたときは、自分もますます分からなくなった。なにせ、五大とも全く音楽性が異なるからである。
ただ、アラカン世代にファン層が偏りがちなプログレは、本当はフジロッカーのみなさんにこそ親和性があるのではないかと以前から思っていたので、曇ヶ原がフジロック出演アーティストとして注目を浴びることはこの上なく幸運な機会と思う。
フジロックの出演ステージは苗場食堂。もう少し大きいステージを…という欲がなくはないが、各ステージが明確にそのアーティストを観るという目的意識があって初めて注目されるのに対して、もしも食事目的でふらりと立ち寄ったお客様が、偶然あの超絶技能を目の当たりにして去年の不思議フェスでの私のように心を奪われてしまうかと思うと、胸が熱い。2012年にフジロックに出演し今でも支持を得ているRadioheadだって、やっていることは、70年代にピンクフロイドがライブでやっていたこととほぼ同じなのだ。彼らがフジロックで注目を浴びると、プログレッシブロックブームが再訪するのでは、と淡く期待している。

そして、彼らの音楽のもう一つの軸がフォーク音楽である。これは、Voのショウタさんが森田童子やたまなど、日本の音楽から多大な音楽的影響を受けていたことが、儚くもノスタルジックなメロディの曇ヶ原としての強烈な個性のエッセンスとなっている。
実際の60年代~70年代のヴィンテージ楽器を使用し、オールドでアナログなサウンドが売りの彼らではあるが、70年代のどこかで聴いたようなバンドのコピーではなく、令和にもしこのアナログ楽器が生まれていて、そこから新しくプログレッシブな音楽を構築したならば・・・と想像できるような、今まさにリアルタイムで次々にアップデートしていく進化こそが、曇ヶ原の最大の魅力である。

彼らの公式HPに2022年のインタビュー記事が掲載されているので、こちらを読まれるとより彼らの標榜するプログレッシブ・ハード・フォークや、その根底にある音楽を理解するのに役立つかも知れない。

そして、曇ヶ原としてのもう一つの大きなニュースは、専任ベースとして西平匠杜さん(@TakutoNishihira)を迎えたことだ。

リッケンバッカーのベースを弾きながら歌うショウタさんの姿はプログレらしくカッコ良かったが、専任ベーシストが加わってどのようにサウンドに厚みが出るのかも楽しみだ。
失礼ながら西平さんを存じなかったのだが、X(旧Twitter)やNoteでの投稿記事を見る限り、グルーヴ理論に詳しい方のようである。

6/16には都内某所のスタジオで西平さんを迎えてリハを行ったようで、この日はメンバーがX(旧:Twitter)で夜にスペース配信を開いたり、とても前向きなモチベーションに満ちているのを感じられた。

フジロックという大舞台への出演はメンバーそれぞれ相当なプレッシャーと予測するが、西平さんの存在はメンタル面でもメンバーにとっての大きな支えとなったに違いない。ここから、ポジティブなケミストリーが新たに生まれそうだ。

2024.06.29 at 東高円寺U.F.O Club 最速ライブレポ

さて、フジロックへの出演が発表されてから初となる曇ヶ原のライブはどうだったのか。拙文ではあるが、早速レポートさせていただく。

開演前BGMはお馴染みのインスト曲・中野区通りで始まり、トップバッターである曇ヶ原は「1番、豊島区代表曇ヶ原。始めます!」というショウタさんのMCと共に会場の幕が開けられた。この日のセットリストは次の通りである。

Setlist:
鉛色
トリプタン
うさぎの涙

今年からライブのセトリに必ず入っている「鉛色」はより緊張感が増し、ライブのオープニングトラックとして会場のものを圧倒する定番曲となった。

続いて演奏されたトリプタンは、a_kiraさんのヴィンテージキーボードが哀愁漂うちょっと大人な楽曲だ。個人的にはこれがライブで初聴きだったので、とても嬉しい。

a_kiraさんと交流のあるMJさんによると、アルバムで使われているのは1979年に発売されたハモンドのトランジスタ・スピネットオルガンらしい。ややコンパクトな舞台の会場だったので今回はa_kiraさんはハモンド持ち込みではなく2台のデジタルキーボードだったが(2台でもコンパクト、と表現してしまうほど本来はアナログキーボード要塞なので)、見事に表現しきっていた。何やらKorgの新しい機材を導入したり、エフェクターを自作していたりとフジロックに向けて新しい仕掛けを企画していてそうだ。

そして、2曲目の演奏が終わると、ショウタさんによりライブが告知される。ショウタさんが話している間、残りのメンバーによって静かにPink FloydのEchoesが演奏されていたのが、なんとも嬉しいファンサービスだ。曇ヶ原公式Youtubeチャンネルでは次々にプログレッシブロックの名曲をカバーされているが、いつかFloydのEchoesも公開される日が来ると嬉しい。

締めくくりに演奏された「うさぎの涙」は、11分の長尺曲であり、そして曇ヶ原を表すかのような楽曲だ。
この歌詞は、畳みかけるようなスリリングで技巧的な演奏と、うさぎという儚く壊れてしまいそうな題材の歌詞との対比が魅力的で、ショウタさんの戦う姿にも重なる。
銅鑼は持ち込まれなかったのでなかったが、ショウタさんの咆哮とともにスリリングなインストソロバトルパートが繰り広げられる。a_kiraさんとヴァイオラさんのソロバトルはいつ見てもワクワクするが、より磨きがかかっていたように思う。

長尺の曲が多いゆえ3曲のみの演奏とコンパクトではあったが、全曲ともに実に密度と熱量の高い演奏で、会場内の観客の心を掴むには十分であった。毎回曇ヶ原のライブは、なんだかすごい見世物小屋を見てしまったかのような放心した気分になるのが、曇ヶ原のライブだ。
6/29のライブは曇ヶ原の主催ではなかったが、この日観て新たに虜になったファンも多数いらっしゃるようだ。みんなどんどん、プログレッシブ・ロックの魔力に惹き込まれていったらいい。

今後のライブ情報としては、早速本日6月30日に新宿Wilde Sydeで行われる。おそらくフジロック前の最後のライブである。
9月の不思議ロックフェスでも若干の追加販売が発表されたが、フジロック後では入手困難になるかも知れない。本日のライブは2023年の不思議ロックフェス依頼、配信で曇ヶ原を観れるチャンスなので、所用でライブに行けない方や遠方で参加できない方も、どうかこの熱い躍進を配信でも感じ取ってほしい。

今後のライブ予定

  • 2024.06.30(日)新宿WILDSIDE TOKYO

e+にてチケット発売中:
https://eplus.p/sf/detail/4101690001-P0030001

  • 2024.09.14 不思議ロックフェスティバル Vol.3
    秋葉原Club Goodman
    https://club.goodman2020.com/events/19999


リンク集

  • 曇ヶ原公式X(旧Twitter)

https://twitter.com/kumorigahara

  • 曇ヶ原公式Youtubeチャンネル

※公式Youtubeチャンネル内で往年のプログレ名曲カバーを公開中!


  • 公式HP


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