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限界アニメオタクが選ぶ、最高にアツい2022年秋アニメを彩る、素晴らしきオープニング5選

2022年も残り3ヶ月となり、秋アニメの放送も始まっています。豊作の秋、という言葉が世の中には存在しますが、これは意外になことにTVアニメにおいても当てはまるところがあります。秋アニメ枠というのは不思議と、一年の中でも比較的名作揃いなことが多いのです。もちろん、年末商法や決算の都合などもあるのでしょうが、期待の新作や待望のアニメ化などが集中しやすい時期となっています。

特に2022年の秋アニメ枠は放送開始前から、その強力なラインナップに注目が集まっていました。人気漫画原作のアニメ化作品や、安定して続編がつくられる人気アニメの新シーズン、長寿シリーズの完全新作アニメなど、あらゆる面で話題性の強い作品が揃っているといえます。

ですが今回は敢えて期待のアニメを紹介する、というものではなく、そんな話題の新作アニメの魅力を引き立てる、オープニングについて紹介していきたいと思います。良いアニメには良いオープニングがつきものではありますが、今年の新作アニメは視聴者からの期待値を遥かに越えた、制作陣のとてつもない熱意が込められたオープニングに仕上げられています。

アニメのオープニングがもつ本当の魅力を掘り下げることで、よりアニメへの理解度を上げ、作品の深みへと至れること間違いなし。それでは早速、厳選した5作品のオープニングについて紹介していきたいと思います。

「SPY×FAMILY」第2クールOP「SOUVENIR」

まずはジャンプ+の看板作品、「SPY×FAMILY」のオープニングから紹介。それぞれの事情を抱え、正体を隠して偽装家族として暮らす3人を中心に描くホームコメディな本作。ジャンプ+史上初めて1000万部を突破した作品でもあり、2022年10月時点でシリーズ累計発行部数2500万部を突破。近年話題の人気ジャンプ作品群の中でも、最も勢いのある漫画のひとつであるといえるでしょう。

当然、アニメ化の発表がされた際には、鬼滅の刃や呪術廻戦といった比較的新しいジャンプ作品のヒット後ということもあり、原作読者からの期待値は非常に高いものでした。しかし2022年春に第1クールが放送されると、視聴者の懸念は些細な杞憂であったことがわかります。丁寧に原作を再現したアニメの評価は高く、毎週の放送後には安定してトレンド入り。中でもアーニャのキャラクター性はインターネットミームと相性が良く、ヨルというキャラクターのビジュアルも二次創作が活発になるなど、さまざまな影響を与えています。

そんな本作もいよいよ物語が進み、あらたな展開を迎える第2クールが秋から放送開始されたというわけです。第1クールのオープニング「ミックスナッツ」は、さまざまな事情を抱えながらも本音や正体を隠して暮らす人々をミックスナッツにたとえ、本作がコメディタッチの中で描くテーマ性やシリアスパートを見事に表現していたことが評価されています。近年、評価されがちな“解像度が高い”オープニングのひとつです。

そして第2クールのOPは、BUMP OF CHICKENが担当する「SOUVENIR」。曲名はお土産を意味する単語であり、歌詞もまた目に映る景色を、かけがえのない人生の経験を、旅とそのお土産にたとえ、作中で家族がそれぞれに抱く感情を的確に描いています。穏やかな曲調とボーカルの歌声もあいまって、本作が描く日常の優しさを見事に表現しています。

また、映像では家族として新生活が始まってからの3人の姿が描かれます。主人公であるロイドは表向きの顔として医者の傍ら、スパイとしての任務をこなす一面を。妻のヨルは平凡な会社員と、暗殺者としての冷酷な表情を。そして娘のアーニャは学園生活を送りながらも、周りとは違うという孤独な一面が描かれています。そんな3人が寄り添い、家族としている間だけは演じるわけでもなく、自然な笑顔を浮かべている。そんなささやかな日常の幸福感を、美しい映像を用いて見事に描写しています。

特にサビに突入してからの、花びらが舞う街中を家族で車に乗って走るシーンは非常に美しい光景に仕上がっています。このシーンはオープニング映像の絵コンテ・演出を務めた、荒木哲郎氏の手腕が光る映像といえるでしょう。「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」といったアニメを手掛けてきた荒木哲郎氏ですが、今年公開された劇場アニメ「バブル」でも用いられた透明感のある表現が、こちらのオープニングでも存分に発揮されています。

時間の経過に合わせて作中の季節が春から秋へと移り変わっており、ある種の寂しさやノスタルジックな感情を抱かせる季節感も描写されているのも見逃せないポイントです。これは本作に限らず分割アニメなどではよくある手法ではありますが、非常に効果的で視聴者が作品とともに時間を過ごしている感覚を強め、作品への没入度を上げることにも一役買っています。

大切な存在がいるというあたたかさ。優しいだけじゃない世界の中で、確かにそこに存在する安らぎ。そんな感情を映像と楽曲によって、絶妙に表現しきった素晴らしいオープニングです。

「僕のヒーローアカデミア」第6期OP「ひたむき」

こちらもジャンプで連載中の人気作品、そのアニメ化の第6期です。世界の多くの人々が、個性と呼ばれる超常能力をもつ超人社会。個性を悪用するヴィランを取り締まるヒーローに憧れる主人公が、最高のヒーローになるまでの物語を描くヒーロー漫画だ。アメコミをはじめとしたヒーロー作品を意識した演出が随所にみられ、それはアニメでも見事に表現されています。

特にMCUのようなアメコミ作品では顕著だが、昨今のヒーロー作品とは、絶対悪を正義の主人公が気持ちよく倒すという、シンプルな勧善懲悪の物語ではありません。むしろ実際はその真逆で、現実的な描写や答えの出ない主義主張のぶつかり合いばかりで、ドロドロとした人間社会の闇を描いている。本作もそういった流れを組んでおり、理想と現実の違いの壁に主要人物たちが何度もぶつかります。

ときにはヒーローの行為のほうが冷酷に見えたり、ヴィランがヴィランたる理由に感情を揺さぶられてしまうことも多いでしょう。それでもなお、何度も挫折を味わいながらも、理想を追い求め、誰かを助けるために必死に手を伸ばそうとするのが本作です。そんな本作のアニメも第6期まで話が進み、いよいよ最大規模のヒーローとヴィランの全面戦争が描かれます。物語の大きな分岐点となる、非常に重要なエピソードとなっています。

オープニングを担当しているのはSUPER BEAVER。過去には「NARUTO -ナルト-」「ハイキュー!!」といったジャンプ系列作品を担当しており、「ひたむき」もまたジャンプの王道らしさに満ちた楽曲となっています。今日という日はいつでも人生のピークであるという歌詞が非常に印象的で、前へと一歩踏み出す勇気を力強く歌っています。それはまさに、逃げたくなるような状況であっても、絶体絶命な状況を前にしても、立ち向かわなければならないヒーローの姿と、見事にシンクロする内容となっています。

そして映像はアメコミ調のどこか懐かしい演出から始まります。漫画のような擬音が映像でも描かれており、今まで以上にアメコミ要素を盛り込んでいるオープニングに仕上がっています。ボンズの作画パワーが遺憾なく発揮されており、その内容も戦うヒーローと、立ち塞がるヴィランの姿を全面的に描写しています。バトル作品として、奇をてらうことなく原点回帰したオープニングといえるでしょう。

「サイバーパンク エッジランナーズ」OP「This Fffire」

この作品を秋アニメとして紹介するべきか悩んだのですが、少しでも多くの人に視聴してほしいので紹介。原作がゲームのやや珍しい作品ですが、ネトフリ制作アニメだからと侮るなかれ。本作はTRIGGERによって強烈な個性を得て、令和の世に産み落とされたとは思えないほどの懐かしさ、アニメらしさをもった作品です。

本作は名前の通りサイバーパンクをモチーフとし、退廃的な近未来を舞台としたSF作品。そのSF感は近代のものではなく、1990年代後半から2000年代前半にかけてのものとなっています。具体的に言ってしまえば、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」のようなSF感です。本作はその頃の雰囲気を見事に再現しており、アニメとしての演出も平成初期のテイストが随所に見られます。年齢制限は16歳以上とされており、遠慮のない暴力表現や性描写が特徴的です。そういった意味合いでは「A KITE」のようなアニメに近しいともいえるでしょう。

オープニングの「This Fffire」は世界的に有名なロックバンド、フランツ・フェルディナンドの名曲です。この曲は2004年にリリースされた「This Fire」を、シングル用に再Mixされたバージョンとなっています。敢えて当時の楽曲を採用することで、当時のSF感やアウトローな描写の表現に一役買っています。

映像面もまた楽曲に合わせて、静かな映像が用いられています。キャラクターが爽快に動き回る、といった映像ではなく、ビビットな配色がされた人物や背景の中に本編の映像が、まるでフラッシュバックのように流れていきます。しかしこの映像は、楽曲と非常にマッチしていると言わざるを得ないでしょう。

「This Fffire」は自らの内で燃え盛る炎を表現した楽曲で、タガが外れた炎で街ごと焼き尽くすという強い意思を歌い上げています。巨悪の企業に支配され、腐敗した近未来の都市。そんなディストピアで暮らしながら、違法行為に手を染めてでも成り上がるという、強い決意に満ちた瞳。その姿と楽曲が見事に重なり、作品に渦巻く混沌っぷりと、静かに燃えるカッコよさを引き立てています。

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」OP「祝福」

話題性という面では、こちらも勢いのある作品といえるでしょう。ガンダムシリーズでは5年ぶりの完全新作となる「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。本作は学園モノであり、ガンダム史上ではTVシリーズ初の女性主人公ということも話題になりました。新しい世代が抵抗なく作品に触れられるようにと配慮して制作された本作は、オープニングという観点においても真新しさがあります。

楽曲を担当しているYOASOBIは“小説を音楽にするユニット”という、個性的なアーティストです。リリースされている楽曲すべてには原作となる小説があり、その世界観を透明感ある曲調で、時に優しく、時に力強く表現しています。今回はシリーズ構成・脚本を担当する大河内一楼氏が描き下ろした小説「ゆりかごの星」を原作として制作されたのが、本作オープニングとなる「祝福」です。

オープニングでは透明感のある歌声と、独特のコード進行によってつくられた楽曲が、本作を優しく表現しています。映像面は従来のガンダム作品特有の演出が随所にみられます。しかし長年シリーズを追ってきた身としては、YOASOBIの楽曲とガンダムの映像は新たな化学反応を起こしたと思っています。

話題性や流行っているアーティストであるということ以上に、可憐な雰囲気で包み込むことで、ガンダムシリーズ特有のミリタリーさや、そこに起因する敷居が高さが見事に取り払われたように感じています。歴代作品を知らないから、戦争モノのシリーズだから、という理由でこれまで敬遠してきた人たちの、新たな入り口を予感させる。そんな魅力がこのオープニングにはあると思っています。

アニメのオープニングが担う役割は、純粋な作品の内容表現だけではありません。未視聴の人を引き込む窓口であり、作品に散りばめられたフレーバーを感じさせる体験版のような存在であり、作品をモチーフとしたある種の芸術の側面もあるのです。そういった意味では、本作のオープニングは新規への窓口だけでなく、シリーズそのものに新たな風を吹き込んでいます。

「チェンソーマン」OP「KICK BACK」

予想されていた方も多いかとは思いますが、最後もまたジャンプの話題作から紹介。今インターネットでもっとも通ぶれるオタクコンテンツであり、あらゆるコンテンツを内包しつつも、その独特な世界観と表現力をもって前衛的な作品を生み出してきた藤本タツキ氏が連載している作品が原作です。「ルックバック」「さよなら絵梨」といった話題作も記憶に新しく、まさに時代を席巻している作者の、もっとも注目されているアニメ作品といっても過言ではないでしょう。

本作は「SPY×FAMILY」と同じように、アニメ化が発表された際には多くの注目が集まりました。しかし本作はその内容が非常に過激で、衝撃的な展開が多いのが特徴です。そのため、表現規制や悪い意味で原作改変がされてしまうのではないかという不安の声が、「SPY×FAMILY」以上にありました。しかし本作はさまざまな懸念を、制作側の並ならぬ熱意で組み伏せてきました。

本作はアニメ制作では一般的な製作委員会方式を用いず、制作のMAPPAが100%出資しています。これによって出資者や外部から内容について口出しされることなく、表現規制もすべて無しで放送するという異例の体制を実現しています。視聴者からの期待を遥かに越える本気度で、本作はアニメ制作されているのです。

そしてその本気度はアニメ本編はもちろん、オープニングにおいても、もはや過剰といえるほど随所に反映されています。作画が良い、映像美、といった基本的な面は当然のことながら、このオープニングでまず驚嘆すべきところは演出でしょう。原作者である藤本タツキ氏の作品には、至るところに映画のオマージュ要素が散りばめられています。そんな原作をリスペクトするかのように、オープニング映像では終始、さまざまな時代・ジャンルの映画のワンシーンの数々によって構成されているのです。

それだけならばオマージュを意識するあまり、作品そのものの個性は薄くなってしまうかもしれません。しかし本作のオープニングは、ファンが見たならば"チェンソーマンらしさにあふれている"と断言できるでしょう。ネタバレ防止のため、なぜという部分については深く踏み込みはしません。ですが、決して原作のキャラクターがしない動作をする、といったことはありません。むしろ、このキャラクターならば絶対にそうする、といった肯定すべきポイントで埋め尽くされているのです。

確認されているオマージュ要素は、「レザボア・ドッグス」「悪魔のいけにえ」「パルプ・フィクション」「貞子vs伽椰子」「ノーカントリー」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」「女優霊」「ジェイコブス・ラダー」「コンスタンティン」「ビッグ・リボウスキ」「ソー:ラブ&サンダー」「新世紀エヴァンゲリオン」「ファイト・クラブ」。さらに映画以外にも、本を読む人とそうでない人の見える世界の違いを表現した風刺画や、絵画の失楽園、そして原作者の「さよなら絵梨」までをもオマージュしています。

登場するキャラクターたちがあまりにも自然なオマージュをしながら、作品の内容を示唆する描写が随時おこなわれている。この事実に気づいた瞬間、あまりのオープニングとしての完成度の高さに唸らされました。繰り返し見るほどに発見があるこのオープニングは、あまりにも"解像度が高すぎる"のです。

さらに"解像度の高さ"に拍車を掛けているのが、米津玄師が提供している楽曲「KICK BACK」です。米津玄師といえば、「シン・ウルトラマン」の主題歌である「M八七」が、"解像度が高すぎる"として話題になりました。米津玄師の作品に対する解像度の高さは、当然ながら本作においても遺憾なく発揮されています。

一見、作品の内容を見事に表現しきったというような歌詞ではなく、曲を聞いただけで本作と結びつけることは難しいかもしれません。しかし作品を深く読み込んでいる人ほど、この曲がチェンソーマンのオープニング楽曲であることに納得せざるを得ないでしょう。抱える悩みを解決したいと願いながらも、その短絡的で衝動的な感情によって滅茶苦茶にミックスされている。そんな本作の魅力そのものが、荒々しい歌声とともに見事に歌い上げられています。

本作のオープニングはまさに、映像と楽曲による原作再現の暴力という言葉が相応しいでしょう。今回紹介した5選の中でも特に、力技で組み伏せられたと感じています。それほどまでに制作側の熱意によって、素晴らしい出来の作品をさらに彩る、素晴らしきオープニングに仕上がっています。

毎週見ることになるオープニングへの理解度が上がることで、さらに作品へと没入することが出来るでしょう。この大豊作というべき2022年秋アニメを後追いではなく、ぜひリアルタイムで追いかけて欲しいです。そしてその波を、トレンドをともに共有することで、さらに作品をエンタメとして楽しむことができると思います。

皆さんもぜひ、気になるアニメを毎期チェックしましょう。視聴しましょう。そしてぜひ感想を共有しましょう。
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