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忘れられないレッスン「いいから弾け!」

子供の頃からの長い音楽生活の中でお世話になった先生方との思い出の多くは、音楽を介してのものです。ここに、先頃亡くなった恩師坂田進一先生とのエピソードを一つシェアしたいと思います。

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「いいから弾け!」

故坂田進一先生はぶっきらぼうを絵に描いたような話っぷりの方でした。口下手で短気の上、空気を察して先回りする事を求められました。指導も今の時代の感覚からしたら、厳しいと感じる人が殆どだったと思います。問題点はズケズケと指摘されますから「お客さん」的な感覚で「優しく指導して欲しい」生徒さんには全く合わない教室だったと思います。今にして思えば先生よりは「師匠」というタイプ。「先生」と「師匠」の違いが分かっていて「生徒・お客さん」よりは「弟子」でいられる方なら相性が良かったと思います。

けれども十代で入門したばかりの子供の私にはそこまでの思慮がありませんでしたし、何しろ「怒られ慣れていない」人間にとっては葛藤があったのも事実です。あるレッスンでの事、あまり稽古せずに行ってしまいました(そもそもそれは生徒側の怠慢な訳ですが)そして稽古場に着いて「あぁ、怒られる!」と思った私は席に着いて課題を前に「弾いてごらん」と言われた時に「弾きません!」と言って抵抗したのでした(今となっては私も大概ひどいのですが)以下その時のやり取りを再現します。

先生「どうして弾かないんだ?」
安西「全然稽古して来なかったので、弾けない事が分かってるから弾きません!」
先生「バカッ!いいから弾けっ!!今一回弾けば一回分上手くなるんだゾッ!だからつべこべ言わずに弾け!!」

このやり取りは30年経った今でもハッキリと覚えています。

確かにその場で弾けば人生に於いて一回多く弾いた事になります。そもそもレッスンは練習時間ではなくてそれぞれが課題に沿って稽古して来た事を手直しして頂く時間な訳ですが、習い事、特に社会人の方が習い事を続ける自体がものすごく大変な事だと知っている大人になった今現在、私の生徒さんたちも「全然練習時間取れなかったです。宿題上手く弾けません」と申し訳なさそうに言いますが、このエピソードを思い出して「今一回多く弾けば、一回分上手くなりますよ」と励ます事にしています。

対面のレッスンは、技術以外にも先生との対話から色々な事を学ぶ事ができて、それこそが時間が経ってから大切な宝物だと気づく事ができるように思います。オンラインを全否定はしませんが、アコーディオンにしろ、二胡やその他の楽器にせよレッスン動画や画面越しだけでは伝えられない事をしっかりと伝えて行くレッスンをしたいと思いを新たにします。


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