見出し画像

【新品も買おう!アコーディオン業界のため?にしているささやかなこと】

「アコーディオンの音色は人を幸せにする」安西はぢめです。時々「アコーディオン何台持ってますか?」と聞かれます。その時に持っている楽器の数を7台とか、9台とか答えると「へぇ、たくさん持っているんですね!」と驚かれます。でも、ギタリストさんが目的用途に従ってエレキギターやアコースティックギター、ガットギターなどを数本ずつ持っていてもすぐに10本くらいになってしまいますから、プロアマ問わず楽器弾きとしては理解されるでしょうし、実際それほど珍しいことでもないとは思うのですが、一般的にはちょっと想像を超えているようです。そんな訳で、ちょっと私個人の楽器購入についての考えをお話ししたいと思います。

画像1

写真・アコーディオンの老舗、御茶ノ水「谷口楽器」さんの店内は、いつも新旧様々なアコーディオンがたくさん並んでいてワクワクする空間です(撮影 安西はぢめ)

【新品アコーディオンが昔ほど売れない現実】

「とにかく一番高いヤツをくれ!」そんな人も80年代頃にはたくさんいたと昔話を聞いた事があります。若い頃に流行っていた憧れのアコーディオンを自分の退職金で買い、老後の趣味にする…確かにそんな形のスタートを切る人たちがおりました。けれども最近では新しい楽器を目指して来る人ばかりではないと聞いています。確かに当時はなかった消費税もあるし、賃金は上がってないし、これだけ景気悪いとネットオークションの値段と比べて割高に感じる人もあるでしょう(実際にネットで中古品を買ったら状態が悪くて、弾けるようにするための修理に十万円単位のお金がかかる事が分かって、高くついたという話はどこにでも転がっているので全くお勧めできません。しかも店頭に試奏しに来て、あれこれ弾いた後に「ありがとうございました!これの中古をネットで探します!!」と言い放って帰る人までいると複数のお店さんから聞きました。これはモラルの問題ですけど、同じアコーディオンを嗜む人間としては、なんとも言えない気持ちになりますね…)

さてさて、アコーディオンは丈夫な楽器で、メーカー各社さんは、手入れをして長く使えるアコーディオンを作ってくれています。なので、しばらく使った楽器でもまだまだ寿命とは程遠く、しかもメンテナンスをすればヴィンテージの楽器でも実用に耐えるため中古市場も充実していて、そもそも高価なものですから特に初心者の方は「初めてだから、まずはお手頃な中古品を手に入れよう」と考える方が多くて「なかなか新品が売れない」のだそうです。そのためもあり、アコーディオンメーカー各社の統廃合はまだ良い方で、ここ数十年を見ているだけでも廃業するメーカーが相次ぎました(もちろん経営的に違う事情を抱えているメーカーもありますが、全体の傾向としてマーケットの縮小の上に、新品が売れにくいというお話しです)

この話を聞いた時「自分は、この先なるべくたくさんの新品を買い続けよう」と決心しました。そこで思いついたのが自分なりのサイクルで、手持ちの楽器を新品の楽器とローテーションすることです。

【長生きする楽器ならではのローテーション】

私はほぼ3年サイクルで楽器を手放して、新しい楽器を注文することにしています。「なんでそんなに楽器を買い替えているの?」と思われる方があるかも知れませんが、先に述べたように新品の楽器が売れない限り業界全体が活気付く事とは程遠くなるばかりなので、特別に思い出深い楽器や貴重なモデルの楽器は手元に置いておきますが、それ以外は3年ほど使った楽器がまだコンディションが良い内に下取りへ出したり、欲しい方へ譲って新しく楽器を注文するように心掛けているという訳です。特に私が弾き続けて3年ほど経った楽器は、程よく弾き込まれて良く鳴っており、それが新品より割安に手に入るなら買う人にとっても条件として悪くない訳です。まず大抵は生徒さんに声を掛けて、欲しい方があればお譲りする事が多いです。

繰り返しになりますが、アコーディオンはメンテナンスをしていけば、大変に長く弾き続けてもらえる楽器です。それに引き換え、例えば邦楽器の三味線は極端な言い方をすれば「消耗品」。ちょっとした楽器を買ってもすぐに値段は100万円近くしてしまうのに、その上のどんなに高価な楽器でも弾く時に左手の爪を棹に立てて弾くために長い間には特定の場所の面が抉れて来ます(勘減り・かんべりと言います)。それを何度か研ぎに出したら楽器としての寿命が来ます。なので、そうなる前に新しい楽器を誂えます。ですから「稽古用」と「本番用」を使い分ける人も多いくらいです。楽器によって随分事情が違いますね。

その点、アコーディオンは先にお伝えしたように比較的長生きする楽器ですから、楽しみで弾かれる方が一日1時間くらい弾いたり、レッスンへ行く前にチョコチョコっと弾くだけなら問題なく数十年使ってもらえると思います。そして愛器と仲良くして行くのは格別な事だと思います。ところが、私は(私に限らずプロの方は)一日に6時間でも7時間でも弾いてます。その上で、更にそれから夜は演奏の仕事へ行ったりもしますから、単純に考えてアマチュアの方の何倍もの負荷が楽器にかかります。耐用年数が段違いに短いのも納得してもらえると思います。もちろんそれを丁寧にメンテして使うこともしますし、とても良いことですが、メンテナンスは専門の職人さんにお願いして非常に時間とお金がかかる作業です。なので、ハードユーザーの私は完全に弾き潰してしまう前に新しい楽器を手にするのが良いサイクルなのかなと辿り着いた訳です(さらに言えば、全調律やオーバーホールなどをお願いする時に、楽器を職人さんに預けている時間の事を考えても新品を手に入れて乗り換えた方が、経済効率も仕事上も安心と私は考えています)

私は本当に今までたくさんの楽器を使って来ました。アコーディオンはメーカーによって規格がまちまちで、ボタンのサイズや押した時のアクションの深さ、鍵盤の幅や長さ、ボディの重量バランスに至るまで様々です。なので「自分の好み」が何となく決まってくるまでたくさんの楽器を弾いてみたいと思っていましたし、そうして来たし、またそれは必要なことでもありました。だからこそ、生徒さんたちにも自分の経験から様々に楽器を買う時のアドバイスをできますし、相談にも乗っています。

確かに私のしていることは自己満足ですが、楽器メーカーさんのプラスになる事は、プレイヤーのプラスになる事ですし、小売店さんや大きな視野としてはアコーディオン界が盛り上がれば良いなと思って、これからもできる事をしていきます。もし貴方がアコーディオンを始める時に、手頃な中古品から第一歩を踏み出したとしても、先々アコーディオンを長く楽しめそうだったら、この話を思い出してぜひいつかは、お好きなメーカーの新品も一台検討してみてください。好みの色を指定し、ボタンの色もこだわり、蛇腹のパターンを吟味して、音色のチューニングも細かく指示した世界に一台だけの自分の楽器をオーダーして手にする事ができる喜びは、アコーディオンのメーカーが存在し続ける世界でなければ叶わない夢なのですから。

ボタンアコーディオン安西はぢめ

安西アコーディオン教室主宰 生徒随時募集中

いつも温かいサポートをどうもありがとうございます。お陰様で音楽活動を続けられます!