大道芸のアコーディオンあれこれ
「アコーディオンの音色は人を幸せにする」安西はぢめです。「道の芸」とアコーディオンはとても相性が良いです。私がフランス物のアコーディオンを弾いていると伝えると「あぁ、パリに行くとメトロに乗って来ますよね」とか「○○広場にいつもアコーディオン弾いている人がいますよね」と、大道のアコーディオン弾きを思い浮かべる人が大変に多いです。それほどまでにイメージとしても定着し、親しまれているのだろうと思います。私は過去東京都公認大道芸「ヘブンアーティスト」のライセンス保持者で、あちこちのフェスティバルに呼ばれて演奏したり、都営大江戸線の構内や上野公園の各スポット、東京都美術館、代々木公園や池袋芸術劇場前などでヘブンアーティスト活動をして来ました。多い時は月に20日ほど道に出ていたこともあります。今日はその頃の思い出話を織り混ぜつつ、アコーディオンで道に出ることを考えて行きたいと思います。
【2014年冬パリにて。歴代ダントツ1位で説明もマネも難しいレベルでヘタクソだったおじさん。恐らく出稼ぎ外国人。この場所に座っている事自体が彼のノルマなんだと思います】
道で楽器を弾いてお金を稼ぐと言うこと
音楽系大道芸の難しいところの一つは、自分の演奏で道を歩いている人を止めさせて幾らかの投げ銭をもらうという一連の流れの中で、足を止めた人が興味のないジャンルを弾いていたのでは稼ぎにつながらないという事があります。これは考えてみると当たり前のことでもあり、また大変にシビアな現実です。アコーディオンで演歌が聴きたい人とクラシック音楽が聴きたい人の見分けはつきません。「オレはジャズが好きだけど、このオリジナルソングはなかなか良いから投げ銭しよう」などと、立ち止まった人が、自分の好みとは区別して目の前の奏者を客観的に評価してくれる人ばかりとは限りません。難しいものです。なので、あれこれジャンルをウロウロしないで、ブレずに自分が好きな曲を心を込めて演奏するのが私には合っていました。皆さんならどういう風にお考えになるでしょう。
でも、ハマったら強い
当時、大道芸活動の時は基本的にフランス物しか弾いていませんでした。東京都美術館の中庭で弾いていたある日のこと、たまたま特別展「ルーブル美術館展」が開催中でした。私の弾くミュゼット(パリの下町のダンス音楽)やシャンソンの調べは、入場待ちの長蛇の列の皆さんの耳に届き、見終わって出てきた人にも届きます。私は閃いて自分の前のホワイトボードに「秋晴れや 巴里へ行きたし 金はなし」と書いておきました。すると見事にハマってルーブル展の余韻を味わう人々が「中のパリから外の巴里」へ気持ちを繋いでバンバン投げ銭をくれました。中には「これパリに行く足しにしてね!」などと声を掛けてくれるご婦人もありました。コンセプトにマッチしたその日2時間あまりの金額が、今だに歴代の中で時間単価ダントツ一番です。レパートリーが幅広くて、どのジャンルも自分なりに料理できる人なら、場所・季節・流行などを巧みに取り入れて行く強かさはあって当然ですが、逆に自分の芸の幅を把握して合わない現場を避けるという選択肢も取る事ができます。この日の私は全てがピタッと噛み合ったのでした。
【大好きだった、東京都美術館中庭にて】
ミュージシャンの皆さん、思うように稼ぎが伸びない方も、単にハマっていないだけかも知れません。他人のシマを荒らさないように気を付けつつ、新天地を開拓してみるべきかも知れません。そうしたらジャンジャン入るかも知れません。
そして、お聴きの皆さんも、ミュージシャンを見かけたらチップの一つも弾んでみてはいかがでしょうか。きっと気分が良くなると思います。少なくとも我々ミュージシャンはゴキゲンになります!
ハッピーアコーディオン安西はぢめ
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