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アメリカでの出会い


いざ、アメリカに旅行!となり、慌ただしく準備をしていた。

Pからは「自分の家に泊って行ってほしい。友人は男でも女でも、みんな泊っているよ。」と言われたが、さすがにまだ会っていない彼のところに泊まるのは躊躇していた。

彼の家の住所を聞き、その周辺のホテルを探して予約した。

Pにその旨を伝えると、再度連絡が来た。

「自分の両親の家があるので、そちらに泊まれるようにもう話してあるから、安心して。お願い!ホテルはキャンセルして!」

・・・そこまで準備してもらったら、従うしかなかった。


当日、私の乗る東海岸に向かう便は満席で、私の隣は偶然日本人のおじさんだった。

「これからどこに行くの?」と尋ねられたので、「メル友に会いに」という話をすると、すごく心配された。

そのおじさんは「だまされてるんじゃないか?相手がもし悪い人だったら…」と言い出した。

一応もう何年もメールで話して友人なことなどを話したが、そのおじさんは凄く心配して、「何かあったら、連絡しなさい。」と名刺をくれた。

また、飛行機を降りるときに「一緒に立ち会う」と言って、私と一緒に出口に向かってくれた。

出口で、元気よくクマのぬいぐるみを振っている男の子がいた。Pだった。

おじさんはそのPを見て、なぜかすごく安心したらしく「良かった!楽しい旅行にしなさいね。」と言い残して去っていった。

Pは送ってもらった写真の通りの、明るい男の子だった。

「実はさっき、Mだと思って抱き着いてクマのぬいぐるみを渡したら、別人だったから、慌ててぬいぐるみ奪って戻ってきた。(笑)」と言っていた。


Pのご両親の家に行ってご挨拶をし、滞在中お世話になることのお礼を伝えた。

映画などで見る、郊外の住宅地の一角、という感じで、とても広々とした大きな家だった。

話を聞くと、ご両親は会社を経営していて、かなり裕福らしかった。

何よりも、お父さんとお母さんがすごく仲良くて、すごく微笑ましかった。

私は客間のベッドを使わせてもらうことになっていた。

今、Pは別の家に住んでいるが、私がご両親の家にいる間、彼はリビングのソファで寝る予定らしかった。

「近くにいたほうが、朝からいろいろ一緒に行動できるでしょ?」


Pは私より3歳年下で、ITエンジニアとして働いていた。

身長は私より頭一つ高く、はっきりした顔立ちで、当時私の好きな映画俳優そっくりに見えた。

ひいおばあさんの時代にイタリアから移民してきたらしく「イタリア系アメリカ人、ゴッドファーザーの血筋なんだ。だからピザとパスタにはうるさいんだ。」という冗談で笑った。

3年近く話してきたこともあるけれど、Pの印象はメールと変わらず良い人で、メールで話してきたそのままだった。

Pはほぼ私の旅行中のスケジュールを完璧に立ててくれていて、私はそれに従うだけだった。

・・・正直、もしPとあまり合わなかったら、どうしようと思っていたが、細かくアテンドしてくれることに驚いた。

初めて見るものや初めて体験する事ばかりだった。

地元の友人たちにも紹介され、一緒に飲みに行ったり舞台を見に行ったりもした。彼の友人達もとても気さくに受け入れてくれて嬉しかった。

でも、その中の一人の女の子はPのことが好きなのかも、と気付いてしまった。私が彼女と仲良くなりたいと思っても、ちょっと距離がある、というか。

そして1日ぐらい、Pが考え込むような、私にすごくそっけない時があった。私はそれがショックで、電車の旅に切り替えようとひそかに考えてもいたが、翌日には戻っていたので安心した。

でも、その時に「好きになってしまったかも」とちょっと思ってしまった。

Pがあまりに私にプレゼントをくれたりいろんなものを払ってくれるので申し訳なくて、財布ごと渡して「お願いだからこれから出してほしい」と伝えたら、慌てられた。

「後で説明するから、今は財布をしまって!」と怒られた。

ある夜、友人達と夜の観劇の最中にPが急に具合が悪くなったことがあり、みんなで心配して、急遽近くにある彼のご両親の会社の休憩室に連れて行った。

その時に、Pはそばにいた私の膝に頭を乗せ、辛そうにしていたので、私はPをさするぐらいしかできなかった。

少し回復してきたようでほっとして、友人たちを帰して、彼のご両親の家に戻って二人きりになった時に、Pから告白された。

「好きになってしまった。」

そういう私も、実は旅行中にPのことが少しだけ好きになっていた。

「空港で出口から出てきた時から、好きになっちゃうかもって思っていた。好きになっても、遠いからダメだ!って、出来るだけ抑えてたんだけど…」

「一度、すごく冷たい時があったでしょ?あの時、嫌われたと思ってショックで。でもあの時に、好きかもって私も気付いたの。」

「…実はあの時、友人に言われたんだ。君を好きになっても、君は帰ってしまうよ、と。でももう一緒に居る間に手遅れになったみたい。だから、お金を払わせたく無かったんだ。君に意識してほしくて。」

でも、こんなに遠距離でこれから二人でどうすればいいのか、お互いに分からなかった。

「遠距離恋愛になるけど、一緒になろう。」

それからは、二人でいっぱい考え、どんな風にこれから会えない時間を何とかしようと話し合った。

遠距離恋愛になるけれど、お付き合いしていくことを、Pはすぐに彼の両親に報告していた。

両親はPの気持ちに気付いていたようで、お父さんは「やっぱりね!」と私にウィンクしてきた。

こんなに短い時間で恋に落ちてしまった自分に不安になりつつも、不思議とPとはやっていけそうな気持ちがしていた。

それでも私が帰るまでの毎日、Pと二人で不安な気持ちでカウントダウンをしていた。


私が帰る二日前に「買い物に行こう」と彼に誘われた。

もう既にいろんなものを買ってもらっていたので、「私も何かあなたに買いたい」と話したが、彼は「今回は特別だから。」と言われた。

彼が買いたかったのは、私のナイトウェアだった。

「着たのも見せてもらえると嬉しいな。。。」

彼の望んでいることも分かってしまった。

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