月刊アルバムレビュー 2022年1月
①Reptaliens / Multiverse
シンセポップ・デュオの3rd。ドリーミーなリバーブのかかった軽快なインディポップナンバー、”I Feel Fine”から始まり、少しビターなAメロからとろけるような甘めのサビがクセになる”Like A Dog”などシンセポップでありながらもサイケなアルバム。
②Jana Horn / Optimism
USシンガーソングライターのデビュー作。個人的に最近はフォーク寄りの音楽が妙に沁みるようになってきた中でJana Hornの登場は欲しかったテトリスのブロックのようにストンと心の隙間に入ってきた。ウィスパーな歌声で紡がれるメロディは情緒に溢れ心地よい。
③Yard Act / The Overload
UKポストパンクの勢いは2022年も止まるところを知らないようだ。Dry CleaningやFountains D.C.から連なるスポークンワード風のポストパンクだが、ダークにはなり過ぎず、解放感のあるメロディやFranz Ferdinandばりのひねくれフレーズが爽快。
④AURORA / The Gods We Can Touch
ノルウェーの新世代ディーヴァ、オーロラの新作。ギリシャ神話がテーマとのことで少し構えて聴いたが、音楽性はむしろこれまでよりもポップ。ソングライティングも冴え渡っており”Everything Matters”は彼女にしか歌えないようなメロディライン。
⑤宇多田ヒカル / BADモード
シングル曲は「不滅のあなたへ」主題歌の”Pink Blood”以外はちゃんと聴いてないままだったので、かなりほぼ新鮮な気持ちで味わえた。"Prisoner Of Love"やそれ以前の曲を彷彿とさせるような”Time”など王道の宇多田ヒカルを見せつつ後半で実験してくるあたりが、まだまだ何かに収まる気はないのだなという感じ。こんなに嫌味なくネトフリやウーバーイーツといった単語を歌詞に入れ込めるのはこの人ぐらいなのでは。
⑥Awesome &roid / FRIENDRY NEIGHBORHOOD
90年代オルタナやエモ、ポップパンクを現代に鳴らす日本のバンド、Awesome &roidのファーストフルアルバム。端々に見られる上記ジャンルへの敬愛を込めたサウンドやキャッチーなメロディやリフが愛おしいアルバム。”The Beach Boys”という曲でボウイの”The Man Who Sold The World”のオマージュがあるのだが、2周目を聴いてる途中で「あ、ニルヴァーナか」と一人で納得していた。
⑦La Colonie de Vacances / ECHT
フランスの12人編成エクスペリメンタル・ロックバンド。black midiとも共通するポストパンクとプログレとファンクを融合させた音楽性だが、大所帯でしかもドラムが4人という編成で繰り出す重厚なサウンドは聴こえ方も一味違う。観客を中心に4方向から演奏するライヴは是非とも生で体験してみたい。
⑧Gwendoline / Après c'est gobelet!
こちらもフランスのバンド。エレクトロ・ダークウェイヴど真ん中で80’sダークウェイヴ/コールドウェイヴ、ポストパンク好きには堪らないサウンド。ここのレビューでも何度か言ってるけど、ポストパンクにおいて低音ボーカルのリバーブがけは大正義。
⑨Yank! / Stupa
サイケデリック・ソウルな日本のバンドYank!の初フルアルバム。ミニマルかつメロウなバンドサウンドにぼそぼそと歌うボーカルはドリームポップともリンクしている。Wool & The Pantsを聴いたときも思ったが、ソウル・ミュージックを上手く濾過してジャパナイズ(現代の)するバンドが増えてきているなと思う。
⑩Ado / 狂言
”踊”が良かったので聴いてみたが、J-POPとボカロ曲のレールを踏み外すことはなく、突然変異みたいな曲はなかった。心を中二に戻して聴いたら”マザーランド”はかっこいいなと思った。声はとても恵まれていると思うので個人的にはソウルやシティポップ路線に期待してしまうが、イメージや本人の趣向もあるだろうしどうなんだろう。
2022年1発目なので景気良く10タイトルあげてみた。
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