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月刊アルバムレビュー 2021年7、8月号

だらだら過ごしてたら2ヶ月分溜まってました。しかも内容が濃い。いろいろと驚かされるタイトルが多かったです。個人年間ベストはここから結構来そう。

①Clairo / Sling

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先行リリースを聴かずに本リリース当日聴いたのでかなり驚きました。全曲良すぎてずっと口の中で「マジかよ」って呟いてました。デビュー作である前作から大幅に飛躍した70’sポップ/ロックなアレンジ。バカラック、ポール、トッド・ラングレンあたりに影響されたと思しきソングライティングがより一層光っています。

②Rodrigo Amarante / Drama

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ブラジル・インディ大御所の新作。僕はこの人の声にどうも郷愁を感じてしまって堪らなくなります。ジャズボッサのリズムとインディロックな味付け。晩夏に聴きたいアルバムです。

③ Molly Burch / Romantic Images

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60~70年代レトロポップに80’sの色彩を追加した最新作。これまでを好きだったリスナーは少し離れてしまうかもしれないが、マドンナやブロンディを意識したポップさはやはり聴いていて心地よいものなのです。

④The Goon Sax / Mirror Ⅱ

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楽曲によってそれぞれがボーカルをとっていくスタイルの男女3人組バンド。ベッドルームポップ然とした1曲目を筆頭にジザメリ系のシューゲイザーから80年代マイナーネオアコバンドのようなインディサウンドが並ぶ。ヘタウマというより下手な男女ボーカルはヴァセリンズを彷彿させます。

⑤Snapped Ankles / Forest of Your Problems

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ゲーム音楽風ポストパンクな謎グループ。アフロなリズムに8bitな雰囲気のシンセを合わせているのが独特です。なんとなく「悪役だけどアホで憎めない敵組織」って感じのイメージです(?)。

⑥Durand Jones & The Indications / Private Space

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ドラマー兼ボーカルのAaron Frazerのソロ作も良かったけれど、グループでの新作も良いです。70年代ディスコソウル強めながらも懐古趣味的でないネオソウルも感じられます。

⑦Water From Your Eyes / Structure

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本当は前情報なしでアルバムを聴いてほしいです。サンシャインポップ風なオープニング曲に「お〜、ジャケのわりに爽やか♪」などと思っていたら2曲目で突然のエレクトロノイズ。イヤホンぶっ壊れたかと思いました。”Track Five”なんかはEBMだけど女性ボーカルだからマッチョ感はなくギリギリでポップスとして聴けるし、2バージョンある”Quotations”はどちらもアンビエント要素もある美しいトラック。

⑧Men I Trust / Untourable Album

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意訳するとおそらく「ツアーができないアルバム」と題され、時勢を踏まえたアルバムということが窺える新作。前作が三人体制のベスト盤的意味が強かったので実質これが現体制の初アルバムと捉えられるか。揺らぐシンセとネオソウルなビートがもう確立された心地よさです。

⑨The Joy Formidable / Into the Blue

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ゴシック・ポストパンク的なバンドなのかなと思ってたら、これを書くのに調べたらシューゲイザーのバンドだそうで、「ジャンルむず...」となっています。ヘヴィなリフにハードロックっぽさとドリーミーさを併せ持つボーカルがかっこいいです。

⑩Evan Wright / Sound from out the Window

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全作業を自宅で一人で行うというNYの宅録ミュージシャンによるデビュー作。ダウナーで美しいサイケ・メロウ・フォーク。宅録の魅力である不安定さがこの美しいサイケ感の完成度を引き上げている極上のアルバム。70年代オブスキュア・フォークみたいなジャケの雰囲気も相まってかなりな良盤ですよ。

⑪Mae Powell / Both Ways Brighter

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これまた70年代フィメール・フォークを彷彿させる声と近年インディフォークのR&Bとの垣根が取り払われた後のサウンドとタイム感が最高。もしブラジルのAna Frango Eletricoからブラジル要素取り除いてもこんな感じでめっちゃ良いんじゃね、みたいなやつ。

⑫Morly / 'Til I Start Speaking

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すごくシンプルな音なのにものすごい重厚というか、映画音楽のような没入感があります。何より声がめちゃくちゃ良いのでピアノをメインに据えた抑え目のアレンジはかなり効果的ですね。

⑬月ノ美兎 / 月の兎はヴァーチュアルの夢をみる

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vtuber月ノ美兎のアルバムがいい、という噂を聞きつけ全然動画は見たことないけど聴いてみましたら、渋谷系の流れを汲むアニソンやらシティポップやらニューウェーブやらで結構良かったです。で、作家勢を調べてみると堀込素行にいとうせいこう、長谷川白紙、デレステでヘンテコカワイイ名曲を提供するササキトモコ、同じくデレステのおしゃれ曲「オレンジタイム」の広川恵一、大槻ケンヂとNARASAKIの特撮コンビ(同コンビによる上坂すみれのアルバム曲「SPY」の雰囲気に近い曲を提供していてこれが1番好き)といったツボを押さえた布陣で納得しました。

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