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一人で愛媛から京都までラーメンを食べに行った話
前書き
※内容の一部にフィクションとして脚色しまくった箇所があります。
それがどこなのかは言いませんが、まあテキトーに楽しんでください。
今から13年くらい前、中学校の修学旅行で京都を訪れた際、地元に精通したタクシーの運転手さんに連れられて『らーめん杉千代』というラーメン屋さんに行った。そこで食べた醤油ラーメンが非常に美味しかったことを朧気ながら覚えており、機会があればまた食べたいと子供ながらに思っていた。
大学生の頃(7年くらい前)、ふと『らーめん杉千代』のことを思い出すことがあった。その頃は岡山県に住んでいたので、京都なら日帰りで行けなくもない距離だ。しかし、忘れない内に『らーめん杉千代』のことを調べ直してみたところ、残念ながら2009年に閉店していることが判明した。
当時食べたラーメンについては、既に味も香りも記憶の彼方へと消えていたが、美味しかったことだけは覚えているくらいだから、また食べる価値のあるラーメンだったはずなのに。この世から失われてしまった。当時はかなり落胆した覚えがある。
時は進んで2023年2月初旬。上記の7年くらい前と同じように、ふと『らーめん杉千代』のことを思い出した。もう一度、調べ直してみる。食べログの記事なんかがあって、それを読めたら多少は楽しめるかも知れない。そんな思いがあった。
そして、12年の時を経て2021年に『らーめん杉千代』が営業を再開していることが判明した。今や自分も社会人。その気になれば、日本中どこにでも行ける。これはもう行くしかない。その日の内に京都への旅行を計画し始めた。
どうせなら、帰りに他の県にも寄ってみようかと考えた。ただ京都に行って帰ってくるだけというのも味気ない。この時、岡山に意中の女性が住んでおり、勇気を出して食事に誘ってみると、二つ返事でOKをもらえた。しかも、自分から進んでお店を選んでくれるやる気っぷり。これはワンチャンどころか10チャンくらいはありそうだ。
という訳で、愛媛→京都(ラーメン)→岡山(女の子)→愛媛というルートを辿る1泊2日の旅行が決定した。
旅行1日目(前半)
※ここは読み飛ばしてもらっても大丈夫。昼食以外はどうでもいいことしか書いてない。
予約を取ったホテルのチェックイン予定時刻は18~19時。京都へは車で5時間もあれば到着するという算段を立て、午前10時頃に家を出た。
距離にして400km弱。それなりに長い道のりだが、カーステレオと一緒に歌でも歌っていれば、すぐに着くだろう。
この日の昼食については、特に何も考えていなかった。
程良くお腹も空いてきたので、ノリで淡路南PAに入り、淡路産釜揚げしらす丼と鯛のあら汁セット(値段は忘れたけど安かった気がする)を食べた。値段の割にかなり美味しかった記憶がある。
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さて、腹も膨れたところで運転を再開した。食後に来る睡魔を撃退するため、カフェオレも買っておいた。京都まで残り200km程度。体調は万全で、色々と歌ってきた感じだと喉の調子も悪くなさそうだった。大丈夫、抜かりはない。
カーステレオからはMr.Childrenの名曲の数々が流れ続けていた。
神戸淡路鳴門自動車道を抜けた辺りで、渋滞が酷くなった。15km/hでちょっとずつ進み、たまに停車する。そんな感じだ。じれったいことこの上なかったが、焦りは禁物。こんな時のために、タイムスケジュールには余裕を持たせてある。やはり抜かりはない。
気分を変えたかったのか、カーステレオはB’zの名曲の数々を流していた。現在進行形で渋滞に巻き込まれているというのに、アップテンポな曲ばかり。まったく型破りなヤツだ。
渋滞区間を抜けると、そこからは割とあっという間だった気がする。慣れない道に四苦八苦しつつ、何とか目的地のホテルに辿り着いた。スマホで時刻を確認すると、17時を少し過ぎていた。途中のSAでお土産を買い漁ったり、用を足したりしていたため、予定より少しだけ遅れてはいたが、チェックイン予定時刻には余裕で間に合っている。問題なし。
ホテルの地下駐車場に車を停め、部屋に荷物を運び終えた後、京都の街中を散策してみることにした。寒そうだったので、マフラーと手袋を忘れずに装備しておく。いざ、都会へ。
旅行1日目(後半)
まずはお土産を買い漁っておくことにした。寒空の下を歩き、京都河原町駅の高島屋へ向かう。都会の人々は歩くのが速かったが、陰キャの僕はもっと速い。ノリノリで米津玄師の『KICK BACK』を口ずさんていると、あっという間に目的地へと到着した。一目散にエスカレーターで地下へと降りる。ここで買うべきは、家族から頼まれていた生八ッ橋と茶葉だ。
首尾よくお土産の購入を済ませた。当然ながら抜かりはない。大量のお土産を抱えたままラーメンを食べに行くのも微妙な気がしたので、一旦ホテルに戻ることにした。そして件の『らーめん杉千代』へとやって来た。店の場所は変わっていたらしいが、そんなことは覚えていないのでどうでもいい。中へ入り、チャーシューラーメンを注文した。
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結論から言うと、期待していたほど美味しくはなかった。13年近く経った今では、子供の頃と比べると流石に舌が肥えてしまったようだ。美味しいことは美味しいのだが、記憶に残らなさそうな美味しさだった。食べている内に思い出したのだが、当時はこのホロホロと口の中で崩れる美味しいチャーシューに感動したはずだ。麺とスープは無難な美味しさだったのだ。
思い出とは美化されるものだ、という教訓を得て、程良い満足感と共に店を出た。
主たる目的は果たしたものの、このままホテルに戻って寝るのも何だかもったいない。わざわざ何時間も車を運転してここまで来たんだし。そう思って、近くにあるらしい友人がオーナーを務めるコンカフェに行ってみることにした。
駅から徒歩5分程度で着いた。道中で渡った橋の上からの景色が綺麗だった。
お店に着いてからは、戸愚呂弟よろしくオレンジジュースを飲みながらオーナー(女性、歳は一つ下)と話していた。彼女とは知り合って7年程度が経つはずだが、顔を合わせるのはこれが初めてだった。僕は生来のコミュ障であり、またかなり緊張していたので、何を話したのかよく覚えていない部分もある。でも楽しかった。来てみて正解だったと思う。
詳細については省くが、いいお店だった。今度は友達と一緒に行きたい。
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写真の掲載許可はもらっていないので、何か問題があるようなら削除します。
疲れたので、その後はホテルに戻って翌日の準備だけして寝た。
旅行2日目(前半)
という訳で2日目スタート。9時前に起床。さっさとチェックアウトを済ませ、車を手近なパーキングへと移動させた。この日もなかなか寒かった。具体的に言うと、一瞬だけ雪が降っていたような気がしなくもない寒さだった。たぶん気のせいだ。
まずはポケモンセンターキョウトへ向かうことにした。昨日行ったコンカフェのオーナーから聞いたところによると、泊まっていたホテルから程近い場所にあるらしい。最近はポケモンSVにハマっているにも関わらず、その話を聞くまで京都にポケモンセンターがあることを忘れていたのはここだけの話だ。
で、ポケモンセンターキョウトだが、めっちゃ良かった。まずはピカチュウが出迎えてくれたのだが、可愛い。
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さらにはホウオウやルギアもいた。カッコイイ。
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年甲斐もなくポケモンフィット?とかいう小さめのぬいぐるみを3つも買ってしまった。お会計のレジまで続く行列がやたら長くて、待っている間に色々なことができそうだった。カップ麺作ったりね。
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それと、オシャボの缶バッジも。これは仕事に持って行っているトートバッグに付けておいた。後でこの話を聞いた妹からは、いい歳こいて何やってんだ、と呆れられた。こんな兄貴でごめんな。フヒヒw
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ポケモンセンターで買った物を車に積み、その足で友人(オーナーとは別人)から勧められたラーメン屋へ向かった。その名も『猪一』。ミシュランにも載ったことがあるお店らしい。そこそこ期待していたので、朝食は抜いた。まあ普段から抜いているのだが。
『猪一』は11時開店だったので、10時55分に現着するように動いた。が、店の前には既に20人近い行列ができていた。その行列のおかげで、お店の位置にあっさりと気付けたくらいだ。友人からオススメのメニューを聞いていたので、行列に並んでいる間にそれを注文しておいた。ついでに味玉とネギ盛りをトッピング。イイ感じだ。食べログの評価もエグい。期待は高まり続けていた。
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さて、当のラーメンを口にして驚いた。美味すぎたのだ。僕が頼んだのは出汁そば黒というメニューだったのだが、そのスープがまさに『美しい』と形容するに相応しい味わいだった。比較するのも良くない気がしたが、ここは敢えて言わせてもらう。昨日食べたラーメンよりも……いや、これまでに食べたどのラーメンよりも美味かった。お前がナンバーワンだ。僕はメンマは嫌いなんだけど、このメンマは美味しかったなー。ガチでまた食べたい。いぐしょん、オススメしてくれて本当にありがとう。
それと、店員さんの中に一人、これまたビックリするくらい可愛らしい女性がいたことも記しておく。ラーメンよりもその子の写真を撮りたかったくらいだが、流石に控えておいた。そういう迷いが生まれる程度には可愛かった。みんなも行ってみてくれ。ぜひ。
旅行2日目(後半)
ラーメンに舌鼓を打った後は、最後の目的地である岡山へと向かうことにした。いよいよ旅行も大詰め。京都から岡山まで車で3時間程度だが、今の僕にとってはすぐそこだ。
前述した女性(仮称を『シーちゃん』とする)とは、19時にお店の前で落ち合う予定だったが、16時過ぎにはJR岡山駅に着いていた。相変わらずの大都会っぷりだ。7年前と大して変わっていないように見えた。ま、そんなものだろう。
イオンモール岡山で白いペンキときびだんごを買い、余った時間でその辺をウロウロしていた。4年くらい住んでいた所なので、様々な思い出に浸っていた。
で、19時が近付いてきたので、テキトーなパーキングに車を移動させて、待ち合わせのお店へと向かうことにした。シーちゃんとは頻繁にやり取りしていたものの、直接会うのは久しぶりだったので、それなりに緊張していた。結構な美人さんだし……。
お店には15分前くらいに着いた。かなり寒かったが、店内には入らずに待っておくことにした。しばらくして、シーちゃんが現れた。互いに「よお」とだけ声を掛け合って、そのままお店へと入った。予約はシーちゃんが取っていてくれたので、席まではスムーズに案内してもらえた。
選んでもらったお店は焼き鳥屋さんだった。それなりに美味しくて、値段もリーズナブルなので僕も気に入った。このお店に来るのは3回目なのに、さも常連であるかのように色々と語り始めたシーちゃんを見て、面白くて笑ってしまった。肝心の焼き鳥だが、話すのに夢中で写真を撮り忘れた。
焼き鳥屋さんで色々と話し合って、〆にラーメンを食べに行くことになった。どんだけラーメン食うんだ。こちらもシーちゃんオススメのお店だった。
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オススメだとは言っていたが、来るのは2回目だそう。また笑わせてもらった。今は色々なお店を巡っている最中だから、同じ店に何度も行っている訳ではないらしい。唇を尖らせて抗弁する姿が可愛くて仕方なかった。ああ、なんて気色の悪い文章なんだ。許せ。ラーメンはそれなりに美味しかったが、それどころではなかった感もある。
ラーメンを食べ終わって、僕の車があるパーキングまで移動して、道中で買い漁ってきたお土産を渡した。家はこの近所らしい。最後に何とも言えないビミョーな空気が流れたが、僕は何かを告げる訳でもなく、そのままバイバイした。
離れていくシーちゃんの背中を見送り、駐車料金を払おうとして精算機に手を伸ばしたが、指が動かなくなった。このままシーちゃんを帰らせていいのか?次に会えるのがいつになるかも分からない。言うだけならタダだ。よし、レッツゴー!!
そう考えて、僕はシーちゃんの後を追った。結構な距離を走ったと思う。一度だけ曲がる所があり、馬鹿みたいに首を左右に振ってシーちゃんの背中を探した。
馬鹿になった甲斐もあって、離れていくシーちゃんを見つけることができた。すぐ近くまで駆け寄って声を掛けると、シーちゃんは振り返って目を丸くした。
「わ、どしたん?」とシーちゃん。
僕は「ごめん、ちょっと伝えたいことがあって……」とだけ言い、膝に手を当てた。日頃の運動不足が祟って、息も絶え絶えだ。こんなに情けない姿の男はなかなか見れない。
そして、「良かったら僕と付き合わないか」といった旨の発言をしたと思う。シーちゃんはまた目を丸くしたが、すぐに少しだけ両目を細めて俯いた。この時点で何となく返事の内容は直感できた。
「ごめん、私いま彼氏いる……」
「へ?」
予想外の返答だった。ビックリしすぎて二の句が継げなかった。
断られるのはまだいい(本当は良くないけど)。でも普通に断られるんじゃなくて、彼氏がいるからという理由で断られた。オマエ何で来た今日?
「い、いつから?」震える声で辛うじて訊ねた。
彼氏いるのかよ……。今日は乗り気で来てくれたくらいだから、いないのかと思っていた。いや彼氏いるのかよ。それなら無理じゃん。こっちもそっちもダメじゃないか?その彼氏にバレて怒られるなんてことがないようにしとけよ。そこまでは責任取れねーぞこっちも。
「えーと、1年半くらい前から」
ほげえ~~~~~。しかも割と前からいるんじゃねえか……。これまでのやり取りだといなさそうな感じだったから、敢えて確認してなかったんだよなあ……。確認したらバレバレだし……久しぶりに連絡くれたのもシーちゃんからだったし……いや、でもなあ……そんな感じで数秒だけ思考がグルグルと巡ったが、それらが言葉として発せられることはなかった。
その後シーちゃんは「ごめん、聞かれなかったから……」と言った。うんうんその通り。それは僕が悪い。と思ったけど言えなかった。
僕の口からは「……え~~~っと……へははは……」という心身共に弱り切ったワンピースのバルトロメオみたいな笑い声しか出なかった。その様子を見かねたシーちゃんから「大丈夫。もっといい恋できるよ、きっと」という慰めまでいただく始末である。本当に情けなくて申し訳ない。それにしてもどの口がそんなこと言うんだ、どの口が。
「……分かった。ごめんね、ありがとう」そんな感じのことを言って別れた気がする。ぶっちゃけよく覚えていない。でもフラれたという事実は忘れられそうにない。思い出したら頭痛がしてくる。
その後は駐車料金を支払い、さっさと帰宅の途に就いた。帰りの運転中はずっと何かを叫んでいた。ランドリー今日はガラ空きでラッキーデイ。馬鹿みたいにデカい声で歌い続けたので、家に着いた頃には喉が枯れていた。本当は途中のパーキングエリアかどこかで仮眠を取りつつ帰るつもり(で、早朝には自宅に着く予定)だったのだが、アドレナリンが出っ放しで眠れる訳がなかった。
旅に出る前に未来の悪魔と契約しておけば良かった。
帰りはずっと130km/hくらいで高速道路をブッ飛ばしていたと思う。あの精神状態であんな運転してて事故らずに済んだのは奇跡だ。夜中だったからというのもあるけど。あの時はカーステレオだけが僕の味方だった。
僕がシーちゃんと出会ったのは、今から7年くらい前のことだ。会ってすぐに仲良くなったと記憶している。でも7年前の僕は告白なんて出来ず仕舞いだった。家に呼ばれたことすらあったのに。なんてヘタレなんだ。これまでにそのことを後悔することが何度かあった。だから今回は後悔しないように言っうわあああああああああああああああああああああああ~~~……。いきなり足元が崩れて転落死するかと思った。
お土産のお返しにチーズケーキか何かをもらったけど食べずに捨てた。
どうやら僕の告白は7年くらい遅かったようだ。そりゃ周回遅れもいいトコだわ。もう二度と岡山には行かないと思う。
あーあ、笑ってくれ。
いい旅だった。
ここまで読んでくれてありがとう。
生きてたら、また何か書きます。
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