Olive

たまに本を読みます。少し英語を話します。クレヨンで画を描きます。時々映画を観て音楽を聴…

Olive

たまに本を読みます。少し英語を話します。クレヨンで画を描きます。時々映画を観て音楽を聴きます。しばしばワインの事を考えてゆっくりとピアノを弾きます。たいてい塾の時間講師です。毎日犬の散歩に行きます。雨の日以外は。

マガジン

  • Bottoms(ボトムス)

    Bottoms は底という意味。普段は気持ちの奥底に秘めている思いをここではさらけ出してみた。ズボンという意味もあり、普段着のように気楽に書いた過去の雑感。

最近の記事

なぜ角材のごときスキー板を背負って歩かねばならないのか。そもそも親の送迎頼みのスキー学習なんてどうかしている。なぜ蓮汰の母親は日本語が読めなくて運転免許も取れないのか。そしてなぜ。自分の右目は見えないのか。歩を進めるごとに思いがマグマのように沸いて来て深二の身体は爆発寸前だった。

    • 「ありがと!また明日」と言う蓮汰の少し高い声を背中に受けて深二は軽く手を振り、今来た道を反対方向に歩いて行く。辺りはもう真っ暗だった。降る雪は闇に紛れてよく見えない。数十メートルおきに立つ街灯が雪の輪郭を露にする様が深二には腹立たしかった。全て曖昧にしておかないとやってられない。

      • 「運転免許も取れなくてさ」と、うつむき加減で話す蓮汰の顔にデッサンのような陰影が刻まれている。彫りの深い文句なしのイケメンだった。小一時間ほど歩いて「俺んちあそこ」と、蓮汰が指差した先には屋根も壁も雪で覆われた小さな家が見えた。「じゃここで」と引き返す深二の背中に街灯の明かり。

        • 「今カッコつけたしょ」と蓮汰に笑われて、「うぜーよ」と言いながら全身の力が目覚めて行く。これがじいちゃんの言う、連帯というやつかも知れない。そこから深二は痛くなるほど首を後ろに向けながら、残りの道を蓮汰と喋り続けた。蓮汰の母親がフィリピン人であること。日本語があまり読めないこと。

        なぜ角材のごときスキー板を背負って歩かねばならないのか。そもそも親の送迎頼みのスキー学習なんてどうかしている。なぜ蓮汰の母親は日本語が読めなくて運転免許も取れないのか。そしてなぜ。自分の右目は見えないのか。歩を進めるごとに思いがマグマのように沸いて来て深二の身体は爆発寸前だった。

        • 「ありがと!また明日」と言う蓮汰の少し高い声を背中に受けて深二は軽く手を振り、今来た道を反対方向に歩いて行く。辺りはもう真っ暗だった。降る雪は闇に紛れてよく見えない。数十メートルおきに立つ街灯が雪の輪郭を露にする様が深二には腹立たしかった。全て曖昧にしておかないとやってられない。

        • 「運転免許も取れなくてさ」と、うつむき加減で話す蓮汰の顔にデッサンのような陰影が刻まれている。彫りの深い文句なしのイケメンだった。小一時間ほど歩いて「俺んちあそこ」と、蓮汰が指差した先には屋根も壁も雪で覆われた小さな家が見えた。「じゃここで」と引き返す深二の背中に街灯の明かり。

        • 「今カッコつけたしょ」と蓮汰に笑われて、「うぜーよ」と言いながら全身の力が目覚めて行く。これがじいちゃんの言う、連帯というやつかも知れない。そこから深二は痛くなるほど首を後ろに向けながら、残りの道を蓮汰と喋り続けた。蓮汰の母親がフィリピン人であること。日本語があまり読めないこと。

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        • Bottoms(ボトムス)
          7本

        記事

          その寄る辺なさを深二は経験してしまっていた。雪国の歩道は狭い。すれ違うのがやっとの雪道を二人縦列で黙々と歩き、信号で止まる度少し言葉を交わした。「俺んチの母ちゃん車の免許なくてさ」と蓮汰。「うちは母ちゃんこの時間仕事」と深二。「スキー学習って切ねーなー」「うん格差を見せる暴力」

          その寄る辺なさを深二は経験してしまっていた。雪国の歩道は狭い。すれ違うのがやっとの雪道を二人縦列で黙々と歩き、信号で止まる度少し言葉を交わした。「俺んチの母ちゃん車の免許なくてさ」と蓮汰。「うちは母ちゃんこの時間仕事」と深二。「スキー学習って切ねーなー」「うん格差を見せる暴力」

          「チンタラしてたら暗くなるわ。」蓮汰の家は逆方向だった。こういう時に限ってさっきまでの青空から雪が降ってくる。暗い未来。荷物を置いた後の帰り道は寒く心細いに違いない。でも、と深二は思う。深二のクラスは昨日スキー学習を終えていた。スキー道具を一人担いで持ち帰る、その寄る辺なさ。

          「チンタラしてたら暗くなるわ。」蓮汰の家は逆方向だった。こういう時に限ってさっきまでの青空から雪が降ってくる。暗い未来。荷物を置いた後の帰り道は寒く心細いに違いない。でも、と深二は思う。深二のクラスは昨日スキー学習を終えていた。スキー道具を一人担いで持ち帰る、その寄る辺なさ。

          北海道の冬は日暮れが早い。夕方4時を過ぎた歩道をスキー靴とスキー板を背負った中学生二人が夕日に向かって黙々と前に進む。「いやホント助かったわ。俺んち遠くてさ。」え、聞いてないけど。マジか…。ハラの中に異様な熱を感じながら、深二はずんずんと先に立って歩を速めた。「はえーよ!」

          北海道の冬は日暮れが早い。夕方4時を過ぎた歩道をスキー靴とスキー板を背負った中学生二人が夕日に向かって黙々と前に進む。「いやホント助かったわ。俺んち遠くてさ。」え、聞いてないけど。マジか…。ハラの中に異様な熱を感じながら、深二はずんずんと先に立って歩を速めた。「はえーよ!」

          スキー板を角材に例えたのは母である。自分の身長即ち160cmの角材を背負って歩くとか、苦役でしょ。という訳で多くの生徒はスキー学習の日、学校の行き帰りを親の車による送迎に頼ることになる。が、家に車がなかったり親が仕事で来られない生徒は全荷物を自ら運ばねばならない。それが蓮汰だった

          スキー板を角材に例えたのは母である。自分の身長即ち160cmの角材を背負って歩くとか、苦役でしょ。という訳で多くの生徒はスキー学習の日、学校の行き帰りを親の車による送迎に頼ることになる。が、家に車がなかったり親が仕事で来られない生徒は全荷物を自ら運ばねばならない。それが蓮汰だった

          理不尽。という言葉はこの場合自分にこそ当てはまる。出来るならスキー板に手を掛け、運んでやろうとした自分の左手ごと右手でぶちのめしたい位だ。誰でも重荷を負っている者は私の所へ来なさい…頭の中で聞こえた気がする声は空耳に違いない。「サンキュー」と屈託なく笑うC組の陽キャこと蓮汰。

          理不尽。という言葉はこの場合自分にこそ当てはまる。出来るならスキー板に手を掛け、運んでやろうとした自分の左手ごと右手でぶちのめしたい位だ。誰でも重荷を負っている者は私の所へ来なさい…頭の中で聞こえた気がする声は空耳に違いない。「サンキュー」と屈託なく笑うC組の陽キャこと蓮汰。

          深二14才。全く陽キャという奴は始末に負えない。自他公認の陰キャたる自分には、到底肯ぜぬ理由で、ここ何日も下校後の道のりを共に歩いている。最初は玄関で偶然会い、「じゃあね!」と、妙に爽やかな挨拶。因みにクラスは別である。二度目はスキー学習の後。これ持って家までついてきてくれる?

          深二14才。全く陽キャという奴は始末に負えない。自他公認の陰キャたる自分には、到底肯ぜぬ理由で、ここ何日も下校後の道のりを共に歩いている。最初は玄関で偶然会い、「じゃあね!」と、妙に爽やかな挨拶。因みにクラスは別である。二度目はスキー学習の後。これ持って家までついてきてくれる?

          今朝。昨日全然勉強できなかったのは母のせいであると言う息子。何でもいったん寝ようとしたのに邪魔されて集中力が途切れたらしい。それならそれでいいと呟く母の心は悔しさで張り裂けそう。親身なるアドバイスはクレ-ムとなって我が身に反って来た。ならばこの悔しさを力に物語を書こう。

          今朝。昨日全然勉強できなかったのは母のせいであると言う息子。何でもいったん寝ようとしたのに邪魔されて集中力が途切れたらしい。それならそれでいいと呟く母の心は悔しさで張り裂けそう。親身なるアドバイスはクレ-ムとなって我が身に反って来た。ならばこの悔しさを力に物語を書こう。

          時間の流れをたどるとこうである。昨夜。期末テスト前日。全く勉強せず寝ている息子を無理矢理起こし、テスト範囲ぐらいは見直して明日に備えるよう伝える。ワークブックを床に叩きつける息子。夜中2時。居間のソファーで好きなアニメの情報収集に夢中な息子。頼むから寝てくれと伝える私。息子就寝。

          時間の流れをたどるとこうである。昨夜。期末テスト前日。全く勉強せず寝ている息子を無理矢理起こし、テスト範囲ぐらいは見直して明日に備えるよう伝える。ワークブックを床に叩きつける息子。夜中2時。居間のソファーで好きなアニメの情報収集に夢中な息子。頼むから寝てくれと伝える私。息子就寝。

          これはきっと氷山の一角。そして小さな取るに足らない出来事かもしれない。でも声を上げるべきだと私は思った。なぜなら事務的に改姓がいかに不便であるかは、不便さを味わった者こそがリアルに描写できる事実だからである。別姓に関する見解は様々あるのが当然。でも実際不便なんです。。

          これはきっと氷山の一角。そして小さな取るに足らない出来事かもしれない。でも声を上げるべきだと私は思った。なぜなら事務的に改姓がいかに不便であるかは、不便さを味わった者こそがリアルに描写できる事実だからである。別姓に関する見解は様々あるのが当然。でも実際不便なんです。。

          交通費や手数料含めて時間もお金も掛かるんですけど。そして、卒業及び教職課程の成績については改姓後の姓で証明されてるんです…という抗弁は聞き入れてもらえなかった。同一書類上で旧姓と改姓の経緯が示されてないとダメらしい。素朴に思う。何故女性だけがこんな不便を強いられるのかと。

          交通費や手数料含めて時間もお金も掛かるんですけど。そして、卒業及び教職課程の成績については改姓後の姓で証明されてるんです…という抗弁は聞き入れてもらえなかった。同一書類上で旧姓と改姓の経緯が示されてないとダメらしい。素朴に思う。何故女性だけがこんな不便を強いられるのかと。

          そう卒業した大学側に言われて戸籍抄本を提出。卒業証明書を、改姓後の姓にて受け取る。まあ、ここまでは想定内。それを今から入学する大学に提出しようとすると、今度は既にある教員免許状(旧姓)との接続がわからないから、また戸籍抄本を提出せよと言う。いや簡単に言いますけど本籍地まで一時間…

          そう卒業した大学側に言われて戸籍抄本を提出。卒業証明書を、改姓後の姓にて受け取る。まあ、ここまでは想定内。それを今から入学する大学に提出しようとすると、今度は既にある教員免許状(旧姓)との接続がわからないから、また戸籍抄本を提出せよと言う。いや簡単に言いますけど本籍地まで一時間…

          元々持っていた教員免許を生かして高校の英語教諭の免許が取れると知り、通信制の大学入学手続きをしている最中。元の免許取得後に婚姻によって現在の姓となったが故の不便さを嫌というほど思い知らされている。まず大学に卒業証明を申請する際。戸籍抄本が提出されれば新しい姓にて証明書作成が可。↓

          元々持っていた教員免許を生かして高校の英語教諭の免許が取れると知り、通信制の大学入学手続きをしている最中。元の免許取得後に婚姻によって現在の姓となったが故の不便さを嫌というほど思い知らされている。まず大学に卒業証明を申請する際。戸籍抄本が提出されれば新しい姓にて証明書作成が可。↓