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熱波、AI・エクスマキナ 怖い絵

デジタル・SDGを標榜する私の勤務先では、ChatGPTの利用があっさり解禁されたが、アナログ保護者の私には行く末が思いやられる。Open AI社のCEOサム・アルトマン氏は、岸田首相と面会し日本は有望なマーケットだと期待を露わにした。欧州では規制する姿勢を尻目に、日本政府が前のめりなのは、アメリカのいわば属国市場で従順すぎるからにほかならない。

ChatGPTが開いたのはパンドラの箱だったりしないか、以下AIをテーマにしたトラウマ映画の2作品を今になって思い起こしている。

21世紀に入った矢先に見たスピルバーグ監督の「AI」。地球温暖化で海面が上昇した近未来、ある夫妻が少年型のロボットを養子に向かえる。ところが、実の息子が難病から奇跡的に回復し、愛情深いロボットの養子が捨てられてしまう。純真なロボットが人間のエゴに振り回され、本当の愛を渇望して彷徨うが、再起動で目覚めた時には既に地球の人類は絶滅していた。なんともダークなおとぎ話風の仕上がりは、スタンリー・キューブリックの原作を映画化したため。始まりは21世紀半ばの年代設定だが、ニューヨーク・マンハッタン島がほぼ水没していることが衝撃的。

次は、アレックス・ガーランド監督の「エクス・マキナ」という2014年公開のSFスリラー。有名なIT企業のCEOネイサンは、奥深い山間の別荘で美しい女性のアンドロイドを密かに作り上げて育てている。その中でも最新技術のアンドロイド「エバ」は、自分たちを監禁する開発者ネイサンに対して疑問を抱く。「エバ」のテスト係に選ばれてきた部下のケレイブを巧みに誘惑。ついには、ネイサンを欺き殺害、山荘から脱出して憧れた人間社会の雑踏に消えていく。2作品ともに、言葉を失ってしまう後味の悪い結末だった。

人間の英知は、ルネッサンス、産業革命、IT革命と生活を便利さを追及し続けたが、もういいかげんに十分ではないだろうか。節度を弁える時代なはずなのに、とめどもない。国連が地球沸騰化と警鐘を鳴らしているほど、近年の熱波は凄まじいばかり。東京はコンクリート砂漠と化して久しく、更に緑地を蔑ろにして温暖化ガスを排出、高層ビルを建て続けるのだから、自業自得は一目瞭然であろう。南極の海氷面積が最小化が事実ならば、映画「AI」で映し出されたように、あと数十年で東京の低地が水没してもおかしくはない。

インターネット、I-phone、ChatGPTしかり、画期的なアイディアに世の中は沸き返る。だが、酔いしれる開発者にとって、いつか引き起こされる結果と影響(英語でいう因果: Consequence)は二の次である。斬新な発明やプロジェクトで脚光を浴びることが、人間の承認欲求を大いに満たすのだから、際限ない。そこで名声と一攫千金を得た輩と企業は、責など負わずに去っていく。シンギュラリティの到来には、こうした映画の暗示する不気味な真理が秘められてそうで、感性が震え慄く。

AIのハルシネーション(誤り、デタラメ、嘘の生成)を見抜けない時点で、既に人間は及びもつかない致命的リスクに曝されている。大人はまだしも、教育現場をAIが浸食して、子供が自分で考える意欲、判断力、推察力を失ってしまってよいのか。AIに描かせた絵は怖い、謎の女性が現れるなどホラーめいた挙動もあり、人知を超えた薄気味悪さは否めない。映画「エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)の「エバ」が象徴する終末観が、思いのほか早く漂ってきてそうでならない。




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