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2023年に読んだ本

年の瀬になったので今年読んだ本をまとめてみようと思います。


▶︎2023年に完読した本(時系列順)

・ユヴァル=ノア=ハラリ『ホモ・デウス(上)』河出文庫(2022)

話題すぎて読んでおかなきゃなと思って読み始めた本。整形技術は、元々負傷兵の
傷を元に戻そうとする技術であったが、今はより良くなるような技術として使われいているように、何かを克服するための技術は、一度発展するとより良い状態になるために利用される(うろ覚え)。など、現実に対する示唆深い指摘が数多あり、おすすめ。

・ドミニク=チェン『未来をつくる言葉 わかりかえなさをつなぐために』新潮文庫(2020)

私の好きな渡邉康太郎氏がカバーデザインをしている本。Podcast『超相対性理論』や『Takram Radio』を聞いている方は必読。哲学やヨーロッパ以外の文化圏を参照することによって、コミュニケーションとは何か、と言う問いに迫る。私が好きなのは、「共話」とモンゴルの馬のプレゼントの話。「コミュニケーションとは〇〇である」とは言わない。曖昧を許容し、なぜか泣ける。

・斎藤哲也『試験に出る現代思想』NHK出版新書(2022)

現代思想を勉強しなきゃな〜と思い、入門の入門として手に取った本。レヴィ=ストロース、ミシェル=フーコー、ジル=ドゥルーズ、ハンナ=アーレント‥‥などそれぞれの思想の要点を簡単に学べる入門書。それぞれの思想家について数ページなので、哲学が苦手な人でも読みやすいのでおすすめ。

・千葉雅也『現代思想入門』現代講談社新書(2022)

現代思想をもう少し深掘りしたいと思い次に手に取った本。ポスト構造主義につながる、思想の流れをこちらもわかりやすく説明してくれる本。否定神学的Xをめぐる有限性の中で、我々は対象aを求め続けるのですが、その中で「今を生きること」はどういうことなのかを哲学的に説明してくれます。勇気づけれらる一冊。
詳しくは、私のこちらの記事を読んでみてください。

・仲正昌樹『今こそアーレントを読み直す』現代講談社新書(2009)

上記の2冊を読んで、ハンナ=アーレントに興味を持ったので読んだ本。全体主義に陥らないために必要な「公的領域」における「複数性」。アーレントが考える「人格」から現代思想における多様性のあり方なども考えることができ、普段の仕事にも活かせそうな内容です。こちらの記事も併せて読んでみてください。

・巌谷国士『シュルレアリスムとは何か』ちくま学芸新書(2002)

1月に『ピカソとその時代-ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』を国立西洋美術館に見に行ってから、シュールレアリスムが気になったので手に取った本です。講義形式で、アンドレ=ブルトンの自動記述を皮切りにシュールレアリスムについて学べます。さらにおとぎばなしについても言及があり、映画『君たちはどう生きるか』と結びつけた記事を書きました。

・パウル=クレー、谷川俊太郎『クレーの天使』講談社(2000)

谷川俊太郎の詩と、画家のパウル=クレーの描く天使のコンビネーション。絵本のようで、読みやすく自分のお気に入りの詩や天使を見つけることができます。簡単に美術館に行っているような気分になれるのでおすすめ。泣いている天使かわいい。

・坂本龍一、福岡伸一『音楽と生命』集英社(2023)

音楽家である坂本龍一と分子生物学者の福岡伸一の対談形式の本です。「ロゴス」と「ピュシス」の対立を議論の中心に、それぞれの作曲や研究について言及されています。個人的には一度しかない音楽、一度しかない生命とは何かを「一回性」をテーマに話している部分が面白かったです。これついて書いた私の記事が、今年一番人気でした。

・福嶋亮太『思考の庭のつくりかたーはじめての人文学ガイド』星海社新書(2022)

高校生用の模試で取り上げられていたのをきっかけに読んだ本です。人文学の学び方や考え方の道筋を示してくれる内容になっています。思考を庭に例えて説明しているところが面白かったです。それが第二章で、第四章の「近代」は知識として必要なものが詰まっており、何かを学ぶきっかけにおすすめです。

・三浦哲郎『木馬の騎手』新潮文庫(1984)

2012年センター追試の現代文に取り上げられた昭和59年の短編集。センター試験
で取り上げられたのが「メリー・ゴー・ラウンド」。小説全体を通じて、貧困や死に直面する大人の物語が、無垢な子供目線で語られています。「最初の一回は私も乗るけど、あとの分はこの子に乗せてやってください。(p.207)」という父親の一言が表す父親の心情。ずっと気になっていた小説なので読めて本当に良かったです。

・ティモシー=モートン『ヒューマンカインドー人間ならざるものとの連帯』岩波書店(2022)

哲学つながりで今年最後に読んだ本。私が読んできた本の中で難易度最高の本でした。この本を読むために2万字弱のメモが爆誕しました。「沈越」「ハイパーオブジェクト」「亡霊性」「連帯」「エコロジカル」など、新進気鋭の哲学者が提唱する新たな概念を噛み砕くのに苦労しました。現代思想についての基礎知識がなければ完読できなかっったと思います。そういう意味では、2023年を代表する本になりました。一応記事も書いたのですがなかなか不人気です。

▶︎読み途中の本

・東浩紀『観光客の哲学』ゲンロン叢書(2023)
 News Picksで落合陽一さんと対談しており、この人か!となり本を買った。
・安丸良夫『出口なお」朝日選書(1987)
 大学時代に教授から借りたものをようやく読み始めた。
・若江漢字、酒井忠康『ヨーゼフボイスの足型』みすず書房(2013)
 社会彫刻という概念を学びたくて買った。芸術におけるポストモダンの牽引者。
・ジャン=フランソワ=リオタール『ポスト・モダンの条件―知・社会・言語ゲーム』水声社(1989)
 ポスト・モダンについて知りたいなと思って買ったら内容がむずくて進まない。
・ミヒャエル=エンデ『誰でもない庭―エンデが遺した物語集』岩波現代文庫(2015)
 エンデがつけるタイトルが好き。
・國分功一郎『暇と退屈の倫理学』新潮文庫(2021)
 話題になっていたので買ったが、なかなか進まずにいる。
・冨井大裕、藤井匡、山本一弥(編集)『わからない彫刻』武蔵野美術大学出版局(2023)
 レディ・メイドについて調べていたらこの本に行き着いたので買った。
・鴻巣友希子『文学は予言する』新潮選書(2022)
 Takram Radio経由で知った。純文学からSFまですごい。
・永井均『倫理とは何かー猫のアインジヒトの挑戦』ちくま学芸文庫(2011)
 友人の紹介。倫理について学ぼうと思って買った。早く読みたい。
・ウルワシ=ブタリア(編集)『そして私たちの物語は世界の物語の一部となる』国書刊行会(2023)
 インド北東部女性作家のアンソロジー。タイトルが良すぎ、取組も面白い。
・村上康彦『傷の哲学、レヴィナス』河出書房新社(2023)
 レヴィナス好きとして買っておかなければと思い買った。

▶︎まとめ

今年は哲学と芸術の本を読む年になりました。哲学は今まで、なんか親和性がなく読みたいと思っていても途中で諦めたり、「哲学はちょっと自分には合わないな」と言い訳をしていたりしましたが、ついに読むことができました。
きっかけはおそらく2022年に読んだ、森田真生の『数学する身体』と『計算する生命』です。この著書に関しては、『ヒューマンカインドー人間ならざるものとの連帯』の翻訳を行った篠原氏の記事の中で、「森田氏の著作は日記のような本であり、学術的なものではないと判断することもできる」と評価されているが、少なくとも私のような人間にとっては、ティモシー・モートンを筆頭とする哲学者を知る機会になりました。学術的なことは学者に任せるとして、日記が人の心を打つこともあるだろうと思います。

この流れで、『未来をつくる言葉』を読んだことで現代思想に近いていったことで、今年哲学の本を読む準備ができたのだと思います。そして最終的には「ヒューマンカインド」を読み切るための体力がついたのかなと振り返りました。

そいった流れもあり、2023年を代表する本として、ティモシー=モートン『ヒューマンカインドー人間ならざるものとの連帯』を選びたいと思います。

こうして振り返ってみると、自分が読みたい本というよりも、外的な要因で読み始めることが多いのだなと感じました。来年も流れるままに読書ができればいいなと思います。皆さんも2024年が良い読書年になりますように!

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