見出し画像

ドリーム・テレパシー実験(夢の学び41)

■夢の論文に関する参考文献


 
ここ一カ月間、ウェブ上での投稿ができずにいた。
実は、3月後半ぐらいから今月にかけ、集中的に夢学に関する学術論文を、二本立て続けに書いていた。ある特定の目的のために、必要に迫られてまとめたものだが、その内容はいずれ何らかのかたちで公開することになるかもしれない。日本よりむしろ海外で発表した方が反響を呼ぶか? そう思う理由について、以下に若干触れたい。
詳細については、今はまだ公開できないが、要点だけは少しずつ話題にしたいとも思っている。
 
とりあえず、どんなテーマに関する論文かを紹介する意味で、論文執筆にあたって参考にした文献を先にご紹介しよう。(写真左から)
 
○モンタギュー・ウルマン他著『ドリーム・テレパシー』井村宏次他訳(工作舎1987)
○スタンリー・クリップナー著『超意識の旅』浅沼健一ほか訳(工作舎1982)
○アリス・ロブ著『夢の正体』川添節子訳(早川書房2020)
○リン・マクタガード著『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』野中浩一訳(インターシフト2010)
○アントニオ・ザドラほか著『夢を見るとき脳は』藤井留美訳(紀伊國屋書店2021)
○ヘンリー・リード著『ドリーム・ヘルパー』桜井久美子訳(たま出版1994)
○マーク・サーストン著『夢の世界へ』住友進訳(中央アート出版社1994)
○ジャック・マグワイアー著『ドリーム・ワークブック』矢納摂子訳(VOICE1992)
○ロザリンド・カートライト他著『夢の心理学』土田光義他訳(白揚社1997)
○ジェレミー・テイラー著『ドリームワーク』板谷いさ子他訳(バベルプレス2012)

■アメリカでの「ドリーム・テレパシー実験」

「夢とは何か?」という疑問を追究するため、人は古くから(公式のものから非公式のものまで)様々な実験を繰り返してきた。
そんな中で、科学的な実験として広く認定されているものとして、有名なところでは、1960年代にニューヨークのブルックリンにあるマイモニデス・メディカル・センター内に設置された「夢研究所」(以降、「マイモニデス」と表記)で行われた一連の「ドリーム・テレパシー実験」というのがある。これは、夢に関する「科学的管理実験」としては初と言われている。
この一連の実験について詳しく紹介しているのが『ドリーム・テレパシー』と『超意識の旅』である。また、『夢の正体』『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』『夢を見るとき脳は』でも簡単に触れられている。
まず、この実験の関係者として名を連ねている面々を挙げてみると、以下の4人が中心人物のようだ。
〇モンタギュー・ウルマン(ニューヨーク州立大学教授)
〇スタンリー・クリップナー(カリフォルニア州立大学客員教授)
〇ロバート・ヴァン・デ・キャッスル(バージニア大学教授)
〇ヘンリー・リード(プリンストン大学教授)
 
どうやらこの4人は夢の分野の共同研究者同士ということらしい。ただし、幸か不幸か、いずれも「超心理学」分野の研究者とみなされているようだ。
やはり「テレパシー」という言葉がつくと、「超能力」とか「超感覚」とかと言われる類の研究分野とみなされる、という事情があるのだろう。
しかし、「ドリーム・テレパシー実験」は超能力の実験か?となると、そこは大いに議論の余地があると私は考えている。

「ドリーム・テレパシー実験」の流れを簡単にご紹介すると、まず被験者が情報の発信者と受信者に分かれる。発信者はひとつの情報源を任意に選び、それについて受信者に向けてテレパシーで発信する(そういうイメージを持つ)。それを受信者が別室で寝ている間に夢でどれだけ正確に受信できるか(合致率)を検証する、というものだ。もちろん、受信者には情報源について事前にいっさい知らされていない。
これを、どれだけ科学的に厳正なパラダイムとプロトコルを設定して実行するか、ということを、マイモニデスでは延々とやっていたらしい。
原則として、情報の発信者は一人で、受信者は一人の場合も複数人の場合もあったようだが、発信者が6日間連続で延べ1万2千人(あるロックのコンサート会場に集まった聴衆)、受信者が二人という大規模な実験まで行われたようだ(『ドリーム・テレパシー』および『夢を見るとき脳は』より)。

その結果、夢でテレパシーを発揮することは可能であると証明されたのか、それともされなかったのか?
心霊(サイキック)研究を専門とするカリフォルニア大学のある統計学者が実験の結果を分析したところ、情報源と受信情報の合致率は84%だったという。これだけの一致が偶然に起こる可能性は25万回に1回だという。(『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』より)
その一方で、たとえばマイモニデス以後の追試では、夢によるテレパシー現象が検出された例とされなかった例が半々だったという。(『ドリーム・テレパシー』より)
真偽は真っ二つに分かれた。
概ね、「ドリーム・テレパシーは完全に証明された」とする肯定派と、「こんなものはエセ科学だ」とする否定派に二分したようだ。
私に言わせるなら、こうした科学的「お祭り騒ぎ」を尻目に、夢は私たちに絶え間なく重要なメッセージを送り続けている。もちろんこうした実験の最中にも・・・。実験者が「科学的真偽の判定」に夢中になっていて、夢からの真に重要なメッセージを受け取っていないだけの話だ。場合によっては、こうした実験そのものについての重要な示唆も、夢が送って寄こしているのかもしれない。そう、こうした実験の最中にも・・・。私たちには、それを受け取る度量があるだろうか?

■日本での「ドリーム・テレパシー実験」

一方、我が師匠の大高ゆうこ氏を中心とする夢研究グループ(そこに私も含まれる)は、2000年代に入ってから、この「ドリーム・テレパシー実験」を積み重ねてきた。ただし、マイモニデスでの一連の実験とは、パラダイムやプロトコルをまったく変えてある。
その結果、「夢を媒介とする無意識間情報伝達は当たり前のように可能である」という結論に達している。ただし、夢は私たちが予想する情報伝達のあり方を(いい意味で)はるかに裏切る。
考えてみれば、これは当たり前のことなのだ。
夢を媒介として無意識間で情報をやり取りするということは、いわば無意識が伝わるわけだ。無意識とは、私たちが意識できていない何か、ということだから、この実験では私たちが意識できていない何かが伝わることになる。それを前もって想定することなど、原理的にできない。つまり、私たちはこの実験で毎回予想を裏切られているはずなのだ。夢で伝わったものを、科学的に評価したり否定したりする前に、まず無批判に受け取る必要がある、ということだ。受け取ったうえで、「何が伝わったのか」考えるのである。つまり「夢の真意を読む」という作業である。そういう前提に立つなら、夢で何かが伝わることは疑いようがない。
では、夢で何が伝わるのか?
私たちが知らない何を、夢は伝えようとするのだろうか?
しかも、いっぺんに複数の人の夢で・・・?
一言で言うなら、夢で伝わるものは、私たちの予想よりはるかに「深い」のだ。夢は、物事の「表層部分」ではなく、表層の裏に隠れている「深層部分」をこそあぶり出し、私たちに伝えてくるのである。
なぜ複数の人の夢にいっぺんに物事の「深層部分」が表れるのか、このことは、実は夢だけを研究していたのでは、なかなか結論に行きつかない。夢という現象も含めて、あるいは物理現象や生命現象も含めて、何と何がどう影響し合っているのかを、広く(深く)研究する必要がある。
そもそも、私たちのグループが証明したいことは、「夢でテレパシーを発揮することは可能か?」ということではなく、「夢は公共の利益に資する可能性があるか?」(もっとはっきり言えば、「夢は人類を救えるか?」)ということである。そのための基礎研究としての「ドリーム・テレパシー実験」なのだ。
はっきりとこういうパラダイムを設定して実験を行なっている研究者は、私たちのグループ以外、世界的にも聞いたことがない。そういう意味で、この研究は日本よりむしろ海外で発表した方が反響を呼ぶかもしれないと言ったのである。
 
「ドリーム・テレパシー実験」についてはこのぐらいにして、次回はその他の参考文献について触れたい。

無料公開中の記事も、有料化するに足るだけの質と独自性を有していると自負しています。あなたのサポートをお待ちしています。