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昼の国と夜の国(夢の学び18)

私は「インテグラル夢学」をまとめるにあたり、まず「夢の王国憲法全十二条」というのを制定しました。その説明の便宜上「昼の国」と「夜の国」を設定しました。このように分けると、「昼の国」は現実の世界、「夜の国」は実在しない想像力(空想)の世界というふうに勘違いする人もいるかもしれません。しかし私は、夢の王国憲法第四条において、「昼の国は夜の国の植民地である」と規定しています。これには驚かれる人も多いでしょう。
まず、大前提として、私たちは誰しも「昼の国」と「夜の国」の両方に住民登録しています。昼の国と夜の国の違いを簡単に言うなら、意識と無意識の違いと言えるでしょう。もちろん、どちらの国も、その領土を統治しているのはあなた自身です。夢とはいわば、夜の国から昼の国への「特使」のようなものです。特使が派遣される目的とは、その特使の言い分を聞くことで、あなた自身の昼の国に対する統治を、夜の国の法でもって見直すためです。
よく言われる「メンタルヘルス」だとか「セルフコントロール」だとかというテーマに問題を抱えている人は、夜の国の法による昼の国の統治がうまくいっていない人ということです。
では、なぜ昼の国は夜の国の植民地であり、夜の国の法でもって昼の国の統治を見直すことができると言えるのでしょう。
ごく簡単に言うなら、昼の国の歴史は分裂(二元論・二項対立)の歴史であるのに対し、夜の国の歴史は統合の歴史だからです。
たとえばあなたが、「昼の国であろうと夜の国であろうと、私の王国の統治の基本は『愛』である。私の昼の国にも夜の国にも『憎しみ』や『恨み』といったものは存在しない」と思っているとします。しかしそれは、ただ単に「憎しみ」や「恨み」を夜の国の領土に追いやった(無意識の中に抑圧した)だけの話なのです。
たとえばあなたが、「私は極めて常識的な人間だ。昼の国であろうと夜の国であろうと、私の王国には『非常識』の文字はない」と思っているとします。しかしそれは、ただ単にあなた自身の「非常識」な側面を、夜の国の領土に追いやった(無意識の中に抑圧した)だけの話なのです。
そのように分裂させられた「憎しみ」や「恨み」といったネガティブな感情や、「非常識な自分」といった昼の国では都合の悪い側面は、夜の国の法によって、再びあなたに統合されようとして、あなたに対して密かに働きかけてきます。この「働きかけ」が少しやっかいなのは、昼の国ではそれがときに「病理」として現れる場合もある、という点でしょう。
このように、昼の国の統治が難しいのは、分裂した二つの対立物のうちの片方が、夜の国の領土に追いやられることによって、見えにくくなってしまっている、という事情です。たとえどれだけ見えにくかろうが、分裂したものは、再び統合されたがって追いすがってきます。そこで夢という特使の出番というわけです。
人間が生きるということは、その最後の瞬間まで「成長」することを意味します。成長するとは、無意識が段階を踏んで少しずつ意識へと変換されることを意味します。すなわち、夜の国の領土は、いずれすべて自分の植民地である昼の国に吸収合併される運命なのです。
たとえば、人間の成長を「ジグソーパズル」にたとえてみましょう。人生の完成とは、ジグソーパズルのピースをひとつひとつ定位置にはめ込んでいった結果、一服の絵が完成することを意味します。では、その絵の材料であるひとつひとつのピースは、どこからくるのかというと、それは夜の国からなのです。お断りしておきますが、このピースとは、昼の国によって夜の国に追いやられた分裂の片割れだけとは限りません。
成長の極限まで達した状態、すなわち夜の国の領土がすべて昼の国へと変換された状態、言い換えるなら、ジグソーパズルのすべてのピースがはまり、巨大な「宇宙」という絵が完成した状態を、「悟り」と呼んで差し支えないでしょう。
「悟り」とは、夜空に輝く星座のようなものです。そこに辿り着くことが目的というより、それを目印にすれば、私たちは海の上で迷わずに済む、ということです。

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