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スライドは自分フィルターを通して伝えるメディア 【Antaa Slideインタビュー】山本 大介先生(湘南鎌倉総合病院)

こんにちは、Antaa運営です。いつも素敵なスライドを投稿くださり、ありがとうございます! Antaa Slideに投稿いただいている先生方に、投稿のきっかけや投稿後の変化、今後の展望をインタビューするこちらの企画。

今回は、先日開催されたAntaa Slide Award 2021で、最多閲覧Slide賞・最多保存Slide賞に選出された「頭部MRIを自信を持ってプレゼンする7 Rules」を作成された山本大介先生(湘南鎌倉総合病院)に、Antaa Slideを使い始めたきっかけや、スライド作りで心掛けられていることをうかがいました。

――先生がAntaa Slideを使い始めたきっかけを教えてください。

医師にとって、学会や勉強会で使用したスライドって、「宝」そのものだと思います。この「宝」が、そのまま個人のPC内にデータとして存在し続けるだけなのは、本当にもったいないことだと思っていました。これは、多くの先生が同意されることだと思います。その宝を他の人と共有できるAntaa Slideというサービスがあると知った当時は、結構興奮しました。

Antaa Slideに最初のスライドを投稿したのが2017年です。この時は、私が転職したタイミングで、とにかく「何か新しい仕事のきっかけになれば」とスライドを投稿してみました。「転職後には教育を仕事にしたい」という願いがありましたが、私には目に見える仕事の形が特にありませんでしたので、Antaa Slideで形あるものを積み上げていこうという作戦にしました。病院外へのプレゼンテーションを行うことで、病院のブランドや病院の教育力をPRしながら、自分の脳神経内科医としての教育の仕事を病院の中で見つけていきたいと考えていました。転職後は、Antaa Slideを十分に活用させていただきながら、現職で「教育」を含めた脳神経内科の仕事を形にしていきました。

――新しいお仕事のきっかけ作り、形あるものの積み上げになれば、と始められたスライド投稿ですが、実際に投稿後は何らかの反響があったのでしょうか?

まず、たくさんの方にスライドを見ていただいて、大変嬉しく思っています。ページビュー(PV)の多さを知ると、やはりネットの力とAntaaの力は強いと、後方視的には痛感しています。たまにお会いする他院の先生が、「ERで研修医がスライド見てたよ」と教えてくれるときは、一番ぐっときますね。届いている感が得られるのが最も嬉しい瞬間です。

それから、Antaa Slideではスライド保存機能を使うと、投稿者に通知される仕組みになっています。保存していただいた方の多くは全く面識がありませんが、つながっている感じがあって楽しいです。インターネットという大海に放り込んだスライドが、ちゃんと誰かに届いて、活用してもらえたという感覚が得られる機能です。

ただ、実際のフィードバックはPVほどには多くありません。ポジティブフィードバックも、ネガティブフィードバックも少ないです。そうでもないと、スライドの内容に全て自信があるわけでもないので、心理的に耐えられないのも事実ではあります。何が言いたいかというと、「世間からは意外と怒られも褒められもしないので、気軽にスライドを投稿してみてもいいのでは」ということです。

医師が自分の意見を自由に発信することは、良い面と悪い面、両方があると思います。何かを発信しようとしたとき、エビデンスだけを詰め込んだ内容にすると、面白みがありません。一方で、経験的なことばかりを書くのはもちろん適切ではありません。エビデンスと臨床経験のバランスをどこまで取れるかが、発信する上で難しい点であり、発信することに消極的になる側面があろうかと思います。こと私としては、自分の「傷ついてもいいから前に進める捨て身の姿勢」が他の人と差別化できる取り柄だと思っています。これからも、自由さと正しさと面白さのバランス感覚を持ちながら、前向きにアクションしていきたいです。

立場によっては、自由な発信を許容されない方がいることも理解しています。そんなリスクを取りながら発信することの意味や価値を、自分がどれだけ見いだせるか。そこがスライド投稿や情報発信をするかどうかの分岐点となるでしょう。情報発信することが自分のためにも、所属する組織のためにもなる、というのが一番望ましいあり方だと思います。

私の場合は、目標の一つに「教育の仕事を認めてもらえるような書籍を出版したい」というものがありました。誰かに見つけてもらい、執筆のチャンスを得たいと思っていました。Antaa Slideで情報発信を続けた結果、願いが叶って『みんなの脳神経内科』(中外医学社)を出版でき、自分にも組織にもメリットが出せたと嬉しく思っています。その点においても、Antaa Slideには感謝しています。

――ご自身のブランディング策としてもスライド投稿をされていたとのことですが、スライドを作成する上ではどのようなことに気をつけているのでしょうか。

スライドのテンプレートは統一するようにしています。そのスライドが自分のブランドであることを表現するためです。テンプレートが統一されていると、「誰が作ったスライドか」が明確化しやすいです。

もう一点は、スライドを読むだけで十分理解できる情報量にする、ということです。実際のプレゼンテーションスライドでは、文字数はより少ないはずです。私のスライドでは、スライドのみで完結することを意識して作成しています。意図的に、読むだけで分かるスライドにしています。

また動画とスライドを比べると、動画というのは全体を見なければいけませんから、かなり時間が取られます。しかも、動画は文脈をしっかり見ないと内容が頭に入らなかったりします。スライドは、瞬間的にテキストをぱっと見れば内容が分かります。スライドはクラシックなメディアですが、リアルな医療現場で活用するには適していると思います。時間に追われる救急外来で、情報収集として動画を見ていたらおかしいですもんね。

――ありがとうございます。最後に、Antaa Slideにあったらいい機能など、ご要望はありますか?

世界は日々、情報過多になっています。医療業界の情報だけでも、多すぎてフォローしきれません。Antaa Slideでも、投稿されるスライドがかなり多くなってきています。コンテンツの多さは、サービスの魅力につながるので重要だと思います。一方で、秀逸なスライドが発見しにくくもなっています。利用者は、比較的PVが多いものに着目しがちだと思われますが、PVが少なくても意義のあるスライドはあります。私自身、「このスライドはお勧めなのにあまり見てもらえないな」というスライドもあります。多様なテーマのスライドの魅力が、うまく伝わりやすいサイト設計になるといいなと思っています。

また、動画サービスと連動してみてもいいかもしれません。スライドの文脈が正確に伝わっているか分からないときがあるので、スライド解説動画をアップしたい先生もいると思います。僕はやりたいです! 

色々と言いましたが、Antaa Slideは「医療情報の共有の場」というだけでなく、「医師の自己表現の場」にもなっているのではないかと思います。

既存のフィールドでは表現できなかったことが、新しい表現のメディアで達成されている。Antaa Slideはみんなが好きなように発信して楽しんでいるメディアで、いいなと思っています。

▼Antaa Slide Award 2021の結果発表記事はこちら!

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