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Antaa Slide Award 2021受賞スライド発表!

こんにちは、Antaa運営です。いつも素敵なスライドを投稿くださり、ありがとうございます!医師・医学生のためのスライド共有「Antaa Slide」では2021年末に「Antaa Slide Award 2021」を開催しました。

▼「Antaa Slide Award 2021」の詳細はこちら

「Antaa Slide Award 2021」は、2021年にAntaa Slideに投稿された全スライドの中から、選考委員会(選考委員長:獨協医科大学総合診療医学・総合診療科教授の志水太郎先生)が選ぶ「Antaa Slide Award」、医師5年目以下の投稿者の中から選ぶ「Antaa Slide Young Award」、最もページ閲覧数が多かった「最多閲覧Slide賞」、最も保存済み数が多かった「最多保存Slide賞」をそれぞれ1点選出するものです。今回は、各受賞スライドを発表します!

■Antaa Slide Awardの選考基準について

2021年は、選考対象となる2021年1月1日~12月20日までに、254本のスライドをAntaa Slideに投稿いただきました。この中からAntaa Slide Awardの選考を行うために、選考委員会に下記の通り選考基準を設定いただきました。

全体部門ともいえる「Antaa Slide Award」は、あらゆる層の先生方がご覧になるスライドであることを意識して選考しました。また、別途Award設定(Antaa Slide Young Award)のある5年目以下の先生方のエントリーも同時に選考対象となる、“無差別級”の「今年のAward 1点」となります。

そんなAntaa Slide Awardの選考基準は、
①忙しい臨床医がパッと見て分かる、目的が明確なタイトルであること
②タイトルで期待した内容が読了後明確に得られる内容であること
③タイトルから逸脱せず、ユーザーを置いていかない構成になっていること
④難しいトピックであっても、スライドを一瞥するだけで腑に落ちる説明とデザインであること
⑤ただ既存の知識をまとめただけでなく、作成者のオリジナルの読者を意識したメッセージや工夫が考えられたこと

以上5点を選考委員会のコア・ガイドラインとして設定しました。さらに、本Awardの追加項目として、
⑥これまであまりクローズアップされなかった新規性があり、多くの医師に読んでほしい教育トピックの作品
という項目も加えた合計6項目で評価いたしました。スライドに使われる背景やアイコンの美しさは重要ですが本質ではありませんので、次点としての評価項目としました。

ではさっそく、2021年のAntaa Slide Award受賞スライドを、選考委員長の志水先生のコメントとともに発表します。

■2021年のAntaa Slide Award受賞スライド

「脳波 レジデントが押さえておきたい2つのPOINT」
音成秀一郎先生(広島大学病院)

選考委員長(志水太郎先生)コメント:優れた作品が多く、最終選考まで残ったスライドも優劣つけ難いもので、選考作業は困難を極めました。熟考の結果、選ばれたのが、音成秀一郎先生(広島大学病院)の「脳波 レジデントが押さえておきたい2つのPOINT」でした。

脳波は誰もが読影する必要はないものかもしれませんが、意識障害や痙攣などは医師の誰もが一度は経験し得る症候であり、次の一手として必ず考慮される代替のない検査です。入門書も非専門医には手が出ないものですが、この学習に光を与え得るのが本スライドではないかと考えます。

音成先生のスライドは明確に「spike探し」「背景活動」の2つが脳波解釈の総論を成し、その中で波形を要素分解すること、アナロジーを用いること、ケースの実践を織り交ぜることで、非専門の読者に配慮しつつ波形の読み方を解説されていました。読者の目線にそったメッセージ性も強く、大変好感が持てました。

また選考委員会でも話題になりましたが、脳波の学び方のステップを明確に示したものは、一般医向けられたスライドとしてはこれまでになかったのではないでしょうか。この新規性も評価されました。以上より、音成先生の作品を栄えある第1回のAntaa Slide AwardのWinnerとさせていただきたいと思います。

音成秀一郎先生、おめでとうございます!

受賞された音成秀一郎先生から、コメントをいただきました。

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この度は大変名誉な賞をいただきありがとうございます。受賞の連絡をいただいたときは本当に驚きました。もっとコモンな疾患や、栄えある分野のスライドが選ばれるだろうと思っていましたので、まさか自分のスライドが、それも脳波のようなニッチな分野でとは思いもしませんでした。きっと多くの先生方も同様に「脳波が!?」と思われたのではないでしょうか。しかし選考委員長の志水先生のご講評を拝読し、なるほど! と脳波のニーズを改めて教わりました。

志水先生にはスライド作成者の私以上に内容をロジカルに読み取っていただき、また臨床的な意義と訴求性を高くご講評いただき感動しました。また意識障害やけいれんといったコモンな病態に対する『代替のない検査』と高く評価いただいたことも、その領域に携わるものとして大変嬉しく思います。

私は大学病院で勤務しています。研修医やレジデントの先生に神経診察を指導する一方で、脳波などの神経生理検査も指導しています。これらは地味で難解なこともあり「脳神経内科アレルギーをむしろ私が悪化させているのではないか」と不安に思うことがありますが、Antaaの「つなぐ」というミッションに心をひかれ、またAntaa Slideの素晴らしい数々のスライドに刺激を受け、脳神経内科の苦手意識の克服につながるようなものが私にも出来ればと思いました。

脳の活動を簡易に可視化できる脳波検査は、そのステップさえつかめば臨床的な面白さがきっと分かってもらえるはずです。症状(診察)―脳形態(画像)―脳機能(脳波)がつながって見えてくると診療が深まります。感染症診療でのグラム染色のような「分かれば面白い!」という体験が脳波にもあると信じています。

てんかんは100人に1人のコモンな疾患です。特に成人診療科においては、超高齢社会を背景にてんかんは増加の一途にあります。国内のてんかん専門医は700名ほどですが、その半数弱は小児科医です。脳神経内科医としての専門医は全国でわずか90名たらずで、私の所属する中国・四国地域にいたっては県内に一人もいないという地域もあるのです。

この専門医不足と地域間格差という問題に加えて、multimorbidityとしての介入も求められるようになり、てんかんやけいれんはgeneralにかつspecificに診る必要性を痛感しています。意識障害やけいれんなどの神経救急を日々診療されている臨床医の先生方と、そしてこれから前線に向かうであろう若手の先生方にとって本スライドが少しでもお役に立てれば幸いです。

選考委員の皆様、Antaa運営のスタッフの皆様に、改めてお礼申し上げます。この度は本当にありがとうございました。

■Antaa Slide Young Awardの選考基準について

Antaa Slideでは、若手の先生方からの投稿も歓迎しています。今回、Antaa Slide Young Awardは、5年目以下の若手の先生方に投稿いただいたスライドから選出するものとしました。本Awardの選考を行うために、選考委員会に下記の通り選考基準を設定いただきました。

5年目以下の先生方のスライド(以下U-5)が対象となるAntaa Slide Young Awardの選考基準は、Antaa Slide Awardと同様、
①忙しい臨床医がパッと見て分かる、目的が明確なタイトルであること
②タイトルで期待した内容が読了後明確に得られる内容であること
③タイトルから逸脱せず、ユーザーを置いていかない構成になっていること
④難しいトピックであっても、スライドを一瞥するだけで腑に落ちる説明とデザインであること
⑤ただ既存の知識をまとめただけでなく、作成者のオリジナルの読者を意識したメッセージや工夫が考えられたこと

という選考基準5点を選考委員会のコア・ガイドラインとして設定しました。また、本Awardの評価対象がU-5の投稿者の作品であり、U-5に目線の近い研修医の先生方が読者としてご覧になることも考慮し、上記5点に加え、
⑥研修医が遭遇し得る、かつ研修医が一人で向き合わなければならないトピックのもの
⑦そのスライドを読めば、類似のスライドや類書を上回る入門情報となり、勉強時間が節約できること

の合計7項目で評価しました。スライドに使われる背景やアイコンの美しさは重要ですが本質ではありませんので、次点としての評価項目としました。

2021年のAntaa Slide Young Award受賞スライドは、こちらのスライドです!

■2021年のAntaa Slide Young Award受賞スライド

「【症例解説つき】高ナトリウム血症~病態/鑑別/対応の流れ/注意点」
西澤俊紀先生(聖路加国際病院)

選考委員長(志水太郎先生)コメント:どのスライドもよく作りこまれ、良いメッセージに満ちていましたが、選考委員会での討議の結果、最も評価の高かったものが西澤俊紀先生の「【症例解説つき】高ナトリウム血症~病態/鑑別/対応の流れ/注意点」でした。

高ナトリウム血症は低ナトリウム血症のかげに隠れてあまり勉強がされず、鑑別もそれほど多くはありませんが、現場ではよく遭遇する病態です。スライドのタイトル通り、高ナトリウム血症の診断とマネージメントの概要が知識ゼロの状態から俯瞰できる内容と考えられます。症例ベースでの読者の関心を惹くところから、一般論→症例に戻り、かつ典型例だけでないイレギュラーな事案でどう考えるかという、現場的なヒントにも言及されていた点も高評価がなされました。

イントロ後最初の25枚は数だけ見ると多いようですが、スマホでもサッサッと進められる情報量の30枚で、フォントや1枚当たりの視認性もユーザーフレンドリーと感じました。45ページから後は本論から少しそれますが(重要なトピックですが)、補足事項と明記があり、忙しい読者は飛ばして読むこともスムーズに可能と思われます。上記の理由より、こちらの作品を選出させていただきました。

西澤俊紀先生、おめでとうございます!

受賞された西澤俊紀先生から、コメントをいただきました。

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志水太郎先生は、僕が最も尊敬する先生のお一人です。総合診療専攻医として、総合診療科のリーダー的存在である志水先生の後を追いかけている立場であり、このようなご講評をいただき大変光栄です。

私が過去に投稿した低Na血症のスライドは以前「2020年最も読まれたAntaa Slide 6選」に選んでいただき、今年度も高Na血症のスライドを選んでいただいたことは、大変な驚きでした。このスライドは、岐阜大学の医学生だった木内瑛大くん(当時。現・武蔵野赤十字病院初期研修医)がAntaaでインターンをされている時に、私の低Na血症のスライドを見て、「高Na血症についてレクチャーをしたものを記事にしたい」と言っていただいたことがきっかけで作成されました。その後、Antaaの方にスライドの形にデザインしていただいたものです。

私が所属する聖路加国際病院では「カリウムは計算できないが、ナトリウムは計算できる」というのが教えがあり、「病棟の患者さんのナトリウムが3日後にいくつになっているか計算してみて」など、日頃から上級医の先生に厳しく指導されています。スライドの内容は、こうした聖路加国際病院の腎臓内科の先生方のご指導に加え、「腎電解質セミナー」という勉強会で大同病院の先生方や門川俊明先生から教えていただいたことを軸としています。また、当院の腎臓内科出身の先生である津川友介先生、小松康宏先生は、それぞれ医療政策や医療安全の分野において国内外でご活躍されており、大変尊敬している先生です。このお2人を執筆陣に有する『シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン』(メジカルビュー社)や、柴垣有吾先生の『より理解を深める!体液電解質異常と輸液』(中外医学社)も参考にさせていただきました。

つまり、このスライドは自分1人でゼロから作ったとはいえず、受賞させていただいたことは大変恐縮でもあります。また、高Na血症に対する輸液の方法などの考え方が異なる先生もいらっしゃることから、スライドの一部に関して、多くのご意見をいただいたことも事実です。それでも、低Na血症に続いて高Na血症のスライドも多くの先生方に注目していただき、大変嬉しいです。ありがとうございました。

■2021年の最多閲覧Slide賞・最多保存Slide賞受賞スライド

なお、最もページ閲覧数が多かった「最多閲覧Slide賞」と最も保存済み数が多かった「最多保存Slide賞」は、2021年12月20日時点での結果で決定させていただきました。なんと、閲覧数、保存数ともに圧倒的に多かったスライドが1点あり、ダブル受賞となりました!

「頭部MRIを自信を持ってプレゼンする7 Rules」
山本大介先生(湘南鎌倉総合病院)

山本大介先生、おめでとうございます!受賞された山本大介先生から、コメントをいただきました。

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受賞のお知らせをいただき、大変嬉しく思います!ありがとうございます。

このスライドは、正直、そこまで強く思い入れを持って作成したスライドではありません。それにもかかわらず、多くの方に見ていただき、参考にしていただけることを大変嬉しく思いっています。ちょうど作成当時、「セブンルール」というTV番組が好きだったので、「MRIの7rules」というタイトルで作成しました。本当に大切なルールは7つもありませんでしたので、やや適当なルールも入っています。
Antaa Slideに投稿したいずれのスライドも、毎月脳神経内科をローテーションしてくれるレジデントの先生に説明する際に、日々使用しているものです。自分のなかで、プラクティカルで、実臨床で価値のある内容だと思っていることを、スライドにしています。レジデントの先生に伝えたい、「役に立つ脳神経内科」がいずれのスライドもテーマになっています。そういう意味においては、自分のなかではどのスライドもお勧めです!

受賞された先生方、おめでとうございます!
2022年も、医師・医学生のためのスライド共有サービス「Antaa Slide」をよろしくお願いいたします!