ディープテック×D&I オフィスアワーを開催して〜理想と現実と希望と

こんにちは、ANRIの@nashi_budoです。
先日、女性研究者・起業家や女性特有の問題を解決する研究・事業に取り組む起業家の方々を対象としたオフィスアワーを開催しました。今回のオフィスアワーは、ANRIとして精力的に取り組んでいるD&I推進活動の一貫として企画しました。このnoteでは、ANRIがD&Iオフィスアワーを行う理由実際に開催して得た気付きをお話しできればと思います。

私自身、工学系の博士課程に在籍しており、アカデミアのダイバーシティの欠如、それゆえのマイノリティーコミュニティ不足や情報格差に問題意識を持っています。ANRIで働き始め、「研究開発型スタートアップ(ディープテック領域のスタートアップ)」業界に入ると、さらに同質性の高さが目に付くようになりました。そこで、研究の実用化や事業化についてANRIのベンチャーキャピタリストと気軽に壁打ち・事業相談できる場を設けることは課題解決の一つの糸口になると考え、ANRIとして精力的に取り組んでいるD&I推進活動の一貫として実施に踏み切りました。

同質性が高いこと、は問題なのか?

ダイバーシティが欠如し、同質性が高い状態はそもそも問題があるのか?という疑問を持つ方もいると思います。同質性が高いこと自体は問題であるとは思いません。しかし、例えばスタートアップのパフォーマンス・企業価値を上げたいという目標があった場合に同質性の高さによってどのようなことが起きるのでしょうか?

ダイバーシティーを欠如したチームはエグジットが困難になる世界将来が近々到来

スタートアップにおける重要なマイルストンの一つが、エグジット(IPOやM&A)です。近年、IPO時ダイバーシティを求める動きが増加しています。
例えば、2020年に米ゴールドマン・サックス(GS)はIPOの引受業務で、上場を希望する企業に最低1人の女性取締役の選任を求めると発表しました。米GSのソロモンCEOは「欧米企業で取締役候補に多様性が欠ける場合、特に女性が一人もいない場合は業務を引き受けない」とインタビューで答えています。

また、また2022年には 、EU域内の取引所に上場する企業に対し、社外取締役で40%以上またはすべての取締役で33%は少数派の性別にすることを実質義務化する法案が大筋合意に至っています。フォンデアライエン欧州委員長は「多様性は公平性の問題だけでなく、成長と技術革新を促進するものだ」と歓迎する声明を発表しました。

このように市場や社会の要請により、組織のダイバーシティはnice to haveから、must haveになる未来がすぐに到来すると予想されます。ダイバーシティが欠如したチームはエグジットが難しくなるかもしれません。
実際、「将来のエグジットを見据え、チームのダイバーシティを推進したい」という相談を最近起業家から受けることが増え、この不可逆な流れを肌で感じています。

ダイバーシティ欠如による経済的観点からの機会損失が明らかに

2018年のBCGのレポート"Why Women-Owned Startups Are a Better Bet"によると、女性が創業したスタートアップの方が長期的には業績が良く、5年間の累積売上高は平均63万2000ドルに 対して73万ドルと10%多い、ことがわかりました。
また、米ベンチャーキャピタルのFirst Roundによると、女性創業者のいる企業は、男性創業者のみの企業への 投資よりも63%も高いパフォーマンスを示すことがわかりました。
このように、女性が関係する事業が男性のみによるものと比較してより高い業績を示すなど、ダイバーシティを向上することが、経済的観点からもメリットがあることが示されています。
詳細は、2022年7月に発表された金融庁による「スタートアップエコシステムの ジェンダーダイバーシティ課題解決に向けた提案」をご覧ください。

D&I推進するのためにANRIとして取り組んできたこと

当社では、2020年11月にスタートアップ業界におけるダイバーシティやインクルージョンを推進する取り組みの一つとして、ANRI4号ファンドにおいて、全投資先のうち女性が代表を務める企業の比率を最低でも20%に引き上げる投資方針としました。2019年の4号ファンドを立ち上げ時には5.8%にとどまっていたところを、2022年7月に20.4%にて目標の達成を発表しました。今後も女性の起業を促す機会を作り、属性にとらわれず誰もが挑戦できる、より良いスタートアップ業界のエコシステム作りに寄与すべく邁進するつもりです。
D&Iオフィスアワーは、この取り組みの一貫として行っており、今回は4回目になります。また、特にディープテックに特化したものとしては、初めての試みとなりました。

D&Iオフィスアワーを実施してみて

まず初めに、今回のオフィスアワーを開催するにあたり、参加してくださった研究者・起業家の皆様、参加者募集にご協力いただいた皆様に感謝の念を述べたいと思います。この度は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。

今回は、特に研究に従事する研究者や起業家に限定し、対象を限定いたために参加者募集には想定以上に苦戦しました。私たちが思い描く理想的な世界とはかなりの乖離があることを肌で感じました。
しかしながら、募集時にたくさんの賛同や応援のお言葉をかけていただき、大変嬉しく励みになりました。ご協力いただいた皆様のおかげで、20分という短い時間でしたが、起業前の方々も含めて何かに取り組もうとされる幅広い方々と話すことができました。女性研究者、起業家の悩みについて生の声を聞くことができ、D&I促進のモチベーションがさらに上がりました。

オフィスアワーの参加者の声

今回のオフィスアワーにご参加いただいた方々の声を少しだけ紹介したいと思います。

"実際に自分の疑問を口にすることで、どこまで見えていてどこから見えていないのか少し明確になったように感じます。また、なかなかVCの方々と普段お話しする機会がないため貴重な経験となりました。"

"ざっくばらんに女性起業家などマイノリティが直面しがちな問題点マイノリティが存在することによるメリットを伺うことができ、大変勉強になりました。"

"事業内容に自信が持てた資金調達に関して今まで不安に思っていた点を解消できた。"

"20分という短い間でしたが、その中でも大学生の目線に立ったアドバイスをいくつも頂けて刺激になりました。"

今後もD&Iオフィスアワーを継続して開催したいと考えております。また、女性研究者・起業家や女性が抱える問題を解決する起業家・研究者の方々のコミュニティの構築を予定しております。今後の活動をするにあたり、たくさんの方々と関わることができたら嬉しいです。
今回の企画について、ご質問等ございましたら、@nashi_budoまでご連絡ください!


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