研究開発型スタートアップに投資する国内VCリスト
こんにちは、ANRIでインターンしている博士(@_nashi_budo_)です。
東京大学大学院の博士課程に在籍しながら、ANRIディープテックチームで昨年9月よりインターンをしております。今回は、主にシードステージの研究開発型スタートアップに投資するVCをリストアップして、その特徴について書きたいと思います。研究開発型スタートアップで起業して、資金調達を受けたい際などにぜひ参考にしてみてください。
できるだけ網羅的にリストアップしたかったのですが、今回のnoteで公開するリストでは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の認定VC(Appendix 1. NEDOが定める認定VCとは?を参照してください)37社を取り上げました。研究開発型スタートアップに補助金を拠出するNEDOについては、以前の元島さんのnote「研究開発型スタートアップが補助金を獲得するための心構え」で触れたので、こちらのnoteも併せて読んでみてください。
1. 研究開発型スタートアップのエグジットはインターネット領域と比較して少ない
研究開発型スタートアップに投資するVCリストの章に入る前に、研究開発型スタートアップの現状を見ていきたいと思います。
経産相の令和2年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書を見ると、大学発ベンチャー企業のうち、研究成果ベンチャーのIPOは1件/年程度が2004年以降続いていることが分かります。インターネット領域のエグジット実績と比較すると研究開発型スタートアップのエグジット数の少なさが顕著です。
(出典:令和2年度産業技術調査事業「研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速及び大学発ベンチャーの実態等に関する調査」 大学発ベンチャー調査報告書)
国内の研究開発型スタートアップ数・エグジット数・VC数はまだまだ少ないことが分かります。XTech Venturesの古川さんが以前まとめてくださっていた国内VC200社以上のリストを比較として参考までに貼っておきます。
2. 研究開発型スタートアップに投資するVCリスト
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の認定VC(Appendix 1. NEDOが定める認定VCとは?を参照してください)37社のリストです。
ファンド名、HP、形態、現行ファンドサイズ、設立年、NEDO認定VCか否か、START事業プロモーターか否か等掲載しています(2021年10月時点)。
調べても見つけることができなかった情報については、セルにN/Aと入力しました。
以下に研究開発型スタートアップに投資するVCリストのスプレッドシートを貼っておきます。リスト修正希望の方はDMいただけたら、対応させていただきます!
また、このリストに載っていない研究開発型スタートアップに投資しているVCもありますが、今回はあくまでもNEDOの認定VCに限ってピックアップさせていただいたことをご了承ください。
3. ANRIのディープテック領域の特徴
【ネット領域の成功から得たシード投資のノウハウをインプリメント】
ANRIは、シード期のスタートアップに特化して投資を行う独立系VCです。
創業当時からの強みであるインターネット領域に加え、ディープテック領域などの大学発研究開発型スタートアップへの投資支援も同一ファンドにて行っています。
2つの領域の融合、特に「インターネット系スタートアップの経営知見を、ディープテック領域のスタートアップへ展開していくこと」に取り組んでいます。スタートアップの経営という観点では、IT系は研究開発型に比べて2、3周は進んでおり、知見が蓄積されています。どのタイミングでどのようなチーム構成にするべきか、上場までの資本政策のグランドデザインをどう描くか、といったベンチャー経営のノウハウをディープテックスタートアップにも応用できると考えています。
【不確実性の高いシード期の中でも、より早期に投資】
ディープテックスタートアップのシード期に投資するのは、時間がかかり、リスクも大きいです。しかし、ANRIは困難な課題の多いシード期を支え、ディープテックスタートアップの数を増やし、技術を社会実装することで、日本の科学技術立国としての底上げを担いたいという強い想いがあります。一方、ファンドを運営するうえでは、エントリーのバリエーションが抑えられ、成功すれば大きなリターンが期待できるという経済的インセンティブもあります。アメリカでもファンドの大型化にともないシードをやめてシリーズA・Bへと移行していくVCが出てくる中で、Andreessen Horowitz・前回の宮崎さんの記事でご紹介したARCHなどはシードから継続してフォローオンしながら実績を上げてきました。私たちANRIもシードVCとしてのDNAを持ち続け、不確実性の高い創業期を起業家の想いと共に一貫して支援していきたいと考えています。
【研究開発型スタートアップオリジネーション機能】
ANRIの投資先であるQunaSysやCraifのように、投資テーマとなる技術を発掘し、他業界での勤務経験がある起業家や、ネット系の事業で独立を考えていた起業家と結びつけるような事例がいくつもあります。これはオリジネーションと言って、VCが自ら技術シーズを探しに行き、起業家と一緒に立ち上げを行う投資スタイルのことです。鮫島さんの記事でもご紹介しましたが、ModernaがUSのライフサイエンスVCであるFlaghip Pioneeringとの共同創業ベンチャーで、一時期20兆円に迫る時価総額をつけ、世界のメガファーマと匹敵するレベルまで急成長してきました。ANRIではこのような研究開発型スタートアップオリジネーション機能を保持し、これからもANRI発スタートアップを起業家と一緒に作っていきます。
4. 最後に
今回は研究開発型スタートアップに投資するVCのリストをご紹介させて頂きました。資金調達の際などにご活用いただけたら嬉しいです。リストを作る過程でnoteには載せきれてない面白いインサイトがあったので、お話したい方がいらっしゃったらぜひこちらへご連絡ください!
Appendix 1. NEDOが定める認定VCとは?
まず、研究開発型スタートアップには馴染み深いNEDOの説明です。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションを創出する、国立研究開発法人です。リスクが高い革新的な技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を促進する「イノベーション・アクセラレーター」として、社会課題の解決を目指します。
研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援(STS)を行い、研究開発型スタートアップを支援する国内外のベンチャーキャピタルやシード・アクセラレーター等を認定し、そのVC等が出資するシード期の研究開発型スタートアップへ実用化開発助成を実施します。
(出典:NEDOについて)
STS事業(シード期の研究開発型スタートアップ事業)
具体的な技術シーズを活用した事業構想を持ち、認定VCから、NEDOに申請する助成対象費用の1/3以上の出資を受ける研究開発型スタートアップに対して、助成金を交付する制度(助成率:2/3以内、1件当たりの上限金額:STSの場合は7,000万円、STS2の場合は2億円)。ただし、実際に助成を受けるためにはNEDOの審査を通過する必要があります。
NEDOは、「研究開発型スタートアップ支援事業 /ベンチャーキャピタル等の認定」に係る公募を実施し、採択審査委員会が採択されたものが認定VCと呼ばれます。毎年認定VCを応募していて、2021年度までで採択されたVCは以下のリンクの37社です。
Appendix 2. START事業プロモーターとは?
STARTについても同様に紹介したいと思います。
START(大学発新産業創出プログラム)
JST(科学技術振興機構:科学技術振興を目的として設立された文部科学省所管の国立研究開発法人)が実施している研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラムのことで、事業化ノウハウを持った人材(「事業プロモーター」)ユニットを活用し、大学等発ベンチャーの起業前段階から、研究開発・事業育成のための公的資金と民間の事業化ノウハウ等を組み合わせることにより、ポテンシャルの高い技術シーズに関して、事業戦略・知財戦略を構築しつつ、市場や出口を見据えて事業化を目指します。
STARTは、事業プロモーターと大学等の研究者をつなぎ、研究開発と事業育成を支援します。
事業プロモーターの活動を支援する「事業プロモーター支援型」と大学等でのプロジェクトを支援する「プロジェクト支援型」から構成されます。大学・研究機関およびベンチャーキャピタルは設立ベンチャーを大きく成長させ、大きなリターンを得ることで、独自の事業化支援をさらに充実させていくという、イノベーションモデル構築にむけて、設立ベンチャーへの各種支援のさらなる充実・強化を進めています。
(出典:JST STARTとは)
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