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【商標から見る】競合他社の新製品・新サービスを商標情報から予測する

知的財産の中に商標があります。

競合他社が今後市場投入してくるであろう新製品や新サービスを予測する際にこの商標出願情報を利用することできます

できます”と言い切ってしまうのはよろしくないかもしれません。”できることもあります”という表現の方が正確です。

ここではバルミューダの事例を使って、予測可能であることを示すと同時に、直近の商標出願・公開事例を使って、ヤフー株式会社(現在はZホールディングス株式会社)の新サービスについて予測してみたいと思います。

あくまでも商標という公開情報をベースとした予測であり、100%当たるか責任は持てませんので、その点はあらかじめご留意ください。むしろ競合他社の未来予測に使える1つの情報源として商標もあるんだな、と認識していただければ幸いです。


商標の基礎知識

商標ってなに!?という方は、まずはこちらの動画をご覧ください。


あとToreru代表の宮崎さんが商標について分かりやすく解説するYouTubeチャンネルもあります。

制度等の概要について知りたい方は特許庁ウェブサイトを参照してください。


なんで商標から新製品や新サービスの予測ができるの?

商標とは、

事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)(出所:特許庁

です。新製品や新サービスにつけるマークやネーミングなどは、その製品・サービス販売前に商標出願すると予想されますので、

1.新製品・新サービスのネーミング・マーク検討
2.新製品・新サービスのネーミング・マーク商標出願
3.新製品・新サービスのネーミング・マーク商標公開
4.新製品・新サービスを市場投入

のように新製品・新サービスの市場投入(プレスリリース)前に商標が公開されていれば、どういった新製品・新サービスなのか予測することができます。

一方、

1.新製品・新サービスのネーミング・マーク検討
2.新製品・新サービスのネーミング・マーク商標出願
3.新製品・新サービスを市場投入
4.新製品・新サービスのネーミング・マーク商標公開

のような場合ですと、既に新製品・新サービス市場投入(プレスリリース)後の商標公開ですので、予測には使えません。


それでは、バルミューダの商標出願と製品から「商標は新製品・新サービス予測に使えるか?」と検証してみましょう。


まず予測可能な例について。バルミューダの加湿器「Rain

時系列で整理すると、

2013年5月21日 商標出願
2013年6月27日 商標公開
2013年9月27日 商標登録
2013年10月10日 空気を洗う美しい加湿器。Rainを発表。

となり、商標公開からバルミューダのウェブサイト上でのRain発表まで約4か月なので予測は可能だといえます。

ついでにいうと、バルミューダのRain商標 第5617805号 の【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】を見ると、

11 家庭用加湿器,電気ストーブ,家庭用暖冷房装置,家庭用エアコンディショナー,家庭用空気清浄機,家庭用電気扇風機,ファン(空気調和装置の部品),その他の家庭用電熱用品類,業務用加湿器,太陽熱利用温水器,電球類及び照明用器具,業務用食器消毒器,洗浄機能付き便座
09E11 09E28 09G61 11A02 11A06 11A07 19B56

とありますので、Rainという商標の加湿器やストーブ、冷暖房機器を市場投入する予定であると分かります。


今度は予測できない事例を紹介します。バルミューダ飛躍のきっかけになった次世代送風機、GreenFan(グリーンファン)です。

時系列でみると、

2010年3月25日 商標出願
2010年4月1日 「次世代送風機、GreenFan(グリーンファン)を発表しました。
2010年5月13日 商標公開
2010年12月3日 商標登録

4月1日の発表から約1か月後に商標が公開されていますので、新製品・新サービス市場投入予測には利用できません。

ちなみにGreenFan商標 の【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】は

11 便所ユニット,浴室ユニット,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,暖冷房装置,業務用衣類乾燥機,家庭用電気扇風機,家庭用電熱用品類,ファン(空気調和装置の部品),ガスファンヒーター,火鉢類
07A09 09A06 09E11 09E23 11A06 11A07 20A02

でした。


商標出願から考えるヤフーの新サービス予測

過去のバルミューダの事例から、新製品・新サービス市場投入の予測に商標情報が使えるケースもあることが分かりました。

ここではZホールディングス(以下、ヤフーと記載します)の最近の商標から、今後ヤフーが市場投入する新サービスの予測をしてみたいと思います。


ヤフーの4月28日付で公開された商標は以下の5件でした(出願日はいずれも2020年4月14日)。

PayPay保険
PayPay保険サービス
PayPay投信
PayPay投信バランスライト
PayPay投信AIプラス

キャッシュレスサービスのPayPay(ペイペイ)の保険や投資信託(投信)サービスについて検討されているようです。

Google検索する限り、現時点(=2020年4月28日)でヤフーが

PayPay保険
PayPay投信

というネーミングのサービスを提供しているということは確認できませんでした。

ヤフーでは

Yahoo!保険

YJFX!

という保険サービスを提供し、投資信託の子会社を保有していますので、これらのサービスにキャッシュレスのPayPayを組み合わせるのだと考えられます。

また投資信託サービスについては、「PayPay投信AIプラス」という商標出願から、

AIを使ったポートフォリオに基づく投信
AI銘柄を中心とした投信

を検討しているかなと思いました。


上述したように、あくまでも商標という公開情報をベースとした予測であり、100%当たるか責任は持てませんので、その点はあらかじめご留意ください。

バルミューダの例も踏まえて、新製品や新サービス予測に使える1つの情報源として商標もあるんだな、と認識していただければ幸いです。


商標情報の調べ方

最後に商標の調べ方について簡単に触れておきます。

商標検索にはちょっとしたコツが必要になりますが、イーパテントYouTubeチャンネルでJ-PlatPatを使った商標検索の超基礎講座の動画をアップしていますので、ぜひご参照ください。


ちなみにいち早く商標出願をキャッチするには、以下の商標ウォッチが便利です。

自社イーパテントの事業・ソリューションに関連しそうな商標のウォッチングはこのサイトでチェックしています。


まとめ&参考情報

以上、バルミューダとヤフーの例を通じて新製品・新サービス予測への商標情報の活用について説明してきました。

今後ぜひ商標情報を活用していただければと思います。もちろん知的財産情報として商標だけではなく、特許や意匠も活用してくださいね。


なお、ここでは詳細に触れませんでしたが特許情報を活用した未来予測については以前、知財管理誌に「知財部員のための未来予測「魚の目視点」の考え方」を寄稿いたしました。

ご興味ある方は参照していただければ幸いです。

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