ウクライナへ特許出願している日本企業は?
「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。
2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻してから3日が経過しました。
一個人としてできることは在日ウクライナ大使館で呼びかけている寄付金へ送金して応援することぐらいしかできないのですが、早くウクライナに平和が訪れることを願ってやみません。
本記事がウクライナの応援になるとは思わないのですが、今回は特許情報の観点からウクライナに関する出願状況(日本企業のウクライナへの特許出願)についてまとめてみました。
私自身、これまでウクライナの特許・実用新案等を調べたことは1回しかないのですが(それでも一応1回あります)、以前調べた際はウクライナ特許庁のウェブサイトからJ-PlatPatのような特許検索データベースで調べました。
本記事を執筆するにあたって、無料でウクライナ特許を調べることができるデータベースがないかと思っていたら、Lens.orgに収録されていたので、Lens.orgを用いて日本企業のウクライナ特許出願状況を取りまとめました。
1 ウクライナの特許制度
まずはウクライナの特許制度について、特許庁の「諸外国・地域・機関の制度概要(一覧表)」から確認しましょう(一部項目を抜粋)。
となっており、公開制度はあります。
しかし、Lens.orgに収録されているのはウクライナの登録特許のみなので、登録特許のみで日本企業の出願状況を確認することにしています。
2 ウクライナの特許出願状況
次に、ウクライナ全体の特許出願状況について見てみます。WIPO IP Statistics Data Centerで2002年から2020年までの内国人(Resident)、外国人(Non-resident)の出願件数推移を見ると、
直近では年4,000件ぐらいで、2020年は外国人の出願比率が高くなっていますが、2000年代前半は内国人出願比率が高く、2019年でも約半数は内国人出願であったことが分かります。
3 ウクライナへの日本企業の出願(登録特許限定)
それでは、Lens.orgで調べた日本企業(優先国にJPを含む)のウクライナへの特許出願状況(ただし登録特許)について出願トレンドを見ていきましょう。
2002年以降の日本企業(優先国にJPを含む)のウクライナへの特許出願状況(ただし登録特許)は累積で913件あり、件数推移は
となっています。登録特許に限定しているので、審査に3~5年ほどかかると想定すると2017年以降の登録件数は未確定値と考えた方が良さそうです。
次に出願人ランキングです。
トップは日本たばこ産業(JT)で、日本製鉄、ユニ・チャームと続きます。大塚製薬以降は製薬メーカーや化学メーカーが目立ちます。
ウクライナは穀物大国としても知られているので、肥料関連メーカーがウクライナへ特許出願・権利化していることも理解できます。今回のロシア進行で食糧貿易への影響が懸念されるところです。
なお、ダウンロードしたリストに出願人・権利者が収録されていないデータが89件ありましたので、N/Aとしています。
次にIPC(国際特許分類)サブクラスから、日本企業はどの技術分野でウクライナへ特許出願・権利化しているのか見ていきます(IPCが収録されていない場合はCPCを用いています)。
上位企業の顔ぶれから技術分野についても何となく想像ができるかと思いますが、化学・医薬品や農薬、また鉄・素材関連、医療機器が上位を占めており、エレクトロニクスや情報通信関係の出願はあまり多くありません。
最後に、企業とIPCサブクラスのマトリックスを確認してみましょう。
会社名から想像はつきますが、日本たばこ産業は容器(おそらくタバコのパッケージ)やタバコそのもの、日本製鉄は管・パイプや鉄・合金関連、ユニ・チャームはおむつとなっています。
農薬関連(A01N)では石原産業や住友化学がウクライナへまとまった特許出願・権利化を行っていることが分かります。
おわりに
冒頭でも述べたように、一個人としてできることは限られていますが、寄付金などできることを着実に行っていこうと思います。
早くロシアがウクライナから撤退して、平和が訪れることを祈っています。
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