第17話 いつだってドラマチックスタンダード-02

亜由美と海保もステージから少し離れたところからそれをじっと眺めていた。亜由美は感涙したのか「よかった、ホントよかった。」と呟きながら
必死でデジカメのシャッターを押し続けた。来賓のウルティモセカンドライフも酒をごくりと飲み、華やかに拍手を送っている。舞台挨拶にきた監督と俳優たちもよくわからないが拍手をした。
特に監督は作品のインスピレーションを得たのか満足気に微笑んでいる。龍馬としても思ってもみない展開だったが、まぁ2人とも良いならば良いか、と納得した。よくわからないままマイクはいつまでも握りしめていた。


「あ、いかん!今何時じゃ!?」ハッと龍馬は自分のことを思い出した。そう、20時までに液体を受け取らなければならない話になっていた。リカはリョウマから身を離し、龍馬に駆け寄って謝罪した。
「ごめん…龍馬ちゃん。実は…タイムスリップ、できないんだよ…」
「な、それはどういうことじゃ??」リカは事の顛末を正直に喋った。言葉足らずな彼女の説明はお世辞にもわかりやすいとは言えなかったが、龍馬は口を挟まず聞き入った。
「ごめん…私のせいだよ。こんなことに巻き込んじゃって…」
リカは罪悪感で龍馬の顔も見る事ができないほどだった。龍馬は激昂するかとさえ思われたが、いつにもなく冷静な表情で優しく返事をした。

「ええんじゃ。方法はきっとあるき。」
「うん…、私ずっと協力するよ。」「俺も、協力します。」リカに続くようにリョウマも声を上げた。
「サンキューベリーマッチじゃ。二人は、くれぐれも幸せにな!」
いつもの龍馬のようであって、まるで別れの挨拶のようにも感じられた。鳴り止まぬ歓声や音楽の中で、リカは言い知れぬ消失感に襲われた。

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