第17話 いつだってドラマチックスタンダード-01

「それは…本当にすまない…俺が弱かったばっかりに…こうなってしまってはもう言い訳でしかないけど…このドラマは俺にとって、あの事故以来、初めて関わる作品だ。もう一度こうしてプロデューサーという立場で仕事ができている。だからもし、このドラマが無事成功すれば、もう一度君を…」
「そんなの、勝手な話じゃん…」
「…ああ、わかってる。」
「わかってないよ!リョウマは何も!」舞台上で展開される白熱のメロドラマに、人々は手に汗を握った。まるで往年の大映ドラマのようなベタな会話の連続は、人々をノスタルジックな気持ちに浸らせ、その目と興味を釘付けにしていた。これが80年代なら最終話でリョウマは誰かに刺されてしまうことだろう。陽気な酔っ払いたちはすっかり演劇の結末が
気になっていた。


「私は、リョウマの地位や名声。お金が好きだったわけじゃない。リョウマが成功しても、失敗しても、私は支え続けるつもりだったのに…!ずっとずっと。」
「…きっとリカなら、そう言ってくれると思っていたさ。でも、何もできない、何もかも失った俺を、見てほしくなかったんだ。」
「そうやってやたらとかっこつけるところ、ずっと嫌いだよ。」
「ああ、そうだな…。」
「でも私は、今でもあなたが好きなんだよ。あの時からずっと…」
おぉぉぉぉぉ!!という歓声と膨れ上がった熱気がステージを包んだ。これが演劇だとしたらマナー違反だろうというほどの声。
いいぞー!、男はハッキリしなさーい!、バカヤロー!、歓声に交じって様々なヤジが飛ぶ中、リョウマはゆっくりと龍馬の横を通り過ぎ、リカの傍へ。そして優しく抱きしめた。


ここで再び、うぉぉぉぉぉ!という歓声と拍手が巻き起こった。誰が気を利かせたのか、I Don’t Want to Miss a Thingがスピーカーから流れ出す。驚くべきことに、これが今日一番の盛り上がりをみせた。
酒を天に掲げて乾杯を叫ぶものや、涙を浮かべるもの、大声で鈴木雅之の恋人を熱唱する者もいた。

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