第2話 feat. 坂本龍馬-01

夜の三軒茶屋。SARIRAH Candy Store、オールドアメリカンな店看板が夜の蒸し暑い風とネオンに照らされていた。
「ご注文、いかがしましょう。」個性的な縞柄メガネをかけた若い男の店員が、1組の男女に問う。
フェミニンな襟なしシャツを着た侍を思わせる顔立ちの男と、白メッシュのロングヘアーにいくつもの派手なアクセサリーを身に着けた昔ながらのギャル。互いがミスマッチで奇妙な二人組であった。そんな中、店内に掛かるYUMEGIWA LAST BOYだけが二人のミスマッチさに妙に馴染んでいた。


「軍鶏はあるか?」男は、店員の目を見つめ、問いかけた。
「しゃも?」
「ああ。軍鶏はあるか?」
「いやぁ、すみません。ちょっとメニューには無いですね。」
「そうか。じゃあええ塩梅のもの見繕うてくれ。」
「はぁ…。ドリンクはいかがされますか。」
男は正面に座る女に顔を向けた。
「どんぐり?」
「ドリンク。飲み物です。」女は笑いがら背もたれに身を委ねた。
「ああー。そうか。酒で。」
「お酒はいくつかご用意ございますが…。」
「ほお、そうか。」
「とりあえず、ハイボール2つ。」女が食い気味で仲裁し、とりあえず注文が通った。
店員が怪訝そうにその場を去ると、男は不思議そうにあたりを見回した。
「洒落たお店ぜよ。異国を感じるの。」男はボサボサに伸びた天然パーマの髪をいじりながら、店内のひとつひとつを興味深く観察している。
女はしばらくそれを静観していたがやがて口を開いた。
「あんたが、坂本龍馬??」男はその名に反応し、視線を女に戻した。
「いかにも。ワシが坂本龍馬じゃ。」女は興奮を隠しきれない様子でスマートフォンを手に取った。
「マジ、ちょースゴい!噂には聞いていたけど、本当にいるんだ!」
カシャカシャ、と写真を撮る女を龍馬は不思議そうに眺めた。

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