第16話 今夜のメイクドラマ-02

「ん??あのドラマ…、あの時の…!」
亜由美の脳裏に、かつての光景がフラッシュバックする。
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「あれって、あの時に亜由美ちゃんが言ってた、例の?」
「うん、間違いない…。」
あの日、三軒茶屋の駅前で見たドラマのポスター。
その内容は、今世間を賑わしている『現代に出没する坂本龍馬』とあまりにも酷似していた。そのドラマの舞台挨拶が、今日この場で…?
あまりにも出来過ぎた偶然に、亜由美は寒気すら覚えた。同時に、あの時の疑念が確信に変わった。一連のこの龍馬騒動は、このドラマのために仕組まれたものだ。しかし、誰が、なんのために…?


「しまった!もうこんな時間じゃないか。」と衣川。
「返しなさい、上手くいけばギャラは支払う!」
「ギャラがどうこうじゃない!龍馬ちゃんが過去に戻れないなんて…ひどすぎるよ!」
リカは涙目でそう訴えた頃、舞台から先ほどと違うどよめきが聞こえた。文字通り、ざわざわといった声と動揺。皆が舞台へ目をやると、そこにはいかにも出演者とは思えないむさ苦しい見た目の男が、
女性物であろう襟無しシャツを着て舞台に立っていた。
「あ、あれ??龍馬ちゃん!?」
「え!?」「龍馬!?」「なんだと…!?」亜由美、海保、衣川は身を乗り出すようにステージをにらみつけた。龍馬は何かを言っているらしかったが、マイクを通していないのでここまでは聞こえない。すると龍馬は舞台上の1人の男を指さした。男が無意識に差し出したマイクを龍馬は奪い取り、仕組みさえよくわからないそれに、口を当てて叫んだ。

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