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読書記録:自然のしくみがわかる地理学入門

著者・水野一晴
発行・2015.04.25
ISBN978−4−86064−430−7

先に地層の本を読んだけれど,どうも地学の内容は私には難しい
とてもスケールが大きくて,時間的にも空間的にもあまりにも大きすぎて,手に負えない。断片的には理解できるけど,それらの点が線にならない。線になったとしても,面にならない。


だから,自然地理学から地学にアプローチしてみる

ちゃんとした学問の分類はわからないけれど,学校で学ぶ地理は好きだったし,大学の教養教育で学んだ文化人類学も楽しかった。その土地のようすと,人々の暮らしは密接な関係にある。人からアプローチを試みるべく,比較的科学に近い地理学の本を読むことにした。


さて,本書は,次の三部からなる。

1 地形
2 気候
3 植生と土壌

目次より

科学の側から学ぼうとしたときと,内容の構成が違って,それはそれでおもしろい。世界を切り取って解釈しているのは,私たち人間であって,別にその線引きだけではないのだと改めて思う。


なぜ新宿に高層ビルが集まっているのか?
なぜ大阪駅は階段やスロープが多いのか?

1 地形より

サングラスをかけたあの人が街を巡る番組を思い出す。電車に乗りながら,車窓を見るのが楽しくなる通勤時間。知識は何でもない世界を豊かにしてくれる


いくつかおもしろいと思ったエピソードを。


エベレストの標高
エベレストで海洋生物の化石が見つかるなんて話は聞いたことがある人も多いのではないだろうか。インドが大陸に衝突していて,エベレストは少しずつ高くなっているという話。では,これから先,永遠とどんどん高くなっていくのだろうか。本書では,「エベレストはなぜ8848mか」という樋口敬二氏のエッセーに言及されている。さて,真相は。

ペストの流行
最近,歴史の中でも再注目されているペストの流行。なぜペストが流行したのか。小氷期との関係で考察する。果たして。

シーボルトの入国
シーボルトは,日本の植物を詳細に記した人として有名であるが,彼はオランダ人ではない。ドイツ人ながら,オランダ領東インド陸軍軍医外科少尉として,鎖国中の日本に入国したという。出島に入るときに尋問をした江戸幕府の役人は,シーボルトのオランダ語の発音に違和感を覚えたそう。そのとき,オランダでも山奥の出だから訛りがひどいとして切り抜けた,と。さて,江戸幕府の役人のオランダ語能力に驚くとともに,オランダの山奥とは,これいかに。


科学の側から,地学を見ていても出会えないようなエピソードたち。かといって,地学が関係ないわけではない。やはり,人の営みの中にある科学は愛おしい


同じ出来事でも,違った側から見ると,新たな発見がある
今度は,科学の面から,改めて地球を見直そう。


アプローチ方法を変える作戦,大成功!

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