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読書記録:面白くて眠れなくなる植物学

著者・稲垣栄洋
ISBN978−4−569−90104−6

植物を見たことがない人は,いない。
私たちは植物を食べるし,植物を育てるし,植物を愛でる。

植物に生かされていると言っても,過言ではない。

しかし,植物については,驚くほどに知らない。

なぜ紅葉するのか?
なぜ緑色なのか?
チョウチョはなぜ菜のにとまるのか?
お花畑といえば,なぜ春のイメージなのか?

本を読み終えたときには,
目の前にいる植物が,ちょびっと愛おしくなる。

ーーー

お花畑は甘い罠

お花畑は春のイメージが強い。
そして,その花畑には何色の花が咲いているだろう?

春の花には,黄色が多いらしい。
菜の花もタンポポも,確かに黄色い。

黄色はアブが好む色だそうだ。
つまり,早春にアブが活動する頃,植物は黄色い花を咲かせる。
そして,花粉を運んでもらうのである。

ただし,ちょっと悲しいことに,アブはあまり頭が良くないらしい。
というのも,黄色が好きなんだけれども,花の違いを認識できないという。

花にとっては,致命的である。
別の種類の花に花粉を運んでもらっても,子孫を残すことはできない。

だから,春の黄色い花は花畑をつくる。
花畑のように群生していれば,近くの花に移っていく可能性が高い。
近くに欲しいものがあるのに,わざわざ遠くには行かないもんね。

利用しているのは,花か虫か。
利用しているのは,植物か人か。

イネ,トウモロコシ,イモなどは,私たち人が主食として利用している植物である。私たちに人にとって,よりよくなるように,品種改良なども行われている。

結果として,イネなどはこの地球上に多く生息する植物となった。
利用しているのは,植物か人か。


絶滅の原因は隕石か植物か

恐竜が栄えた時代をイメージしてみよう。
恐竜が栄えた時代,それは,裸子植物が栄えた時代でもある。

恐竜が栄えたジュラ紀には,裸子植物が栄えていた。
恐竜が生きた最後の時代である白亜紀になると,現在に多く栄えている被子植物が登場した。

地殻変動など環境の変化に応じて,素早く世代交代をする必要が出てきた。
被子植物は花を持ち,昆虫に花粉を運んでもらうなど,受粉のための戦略を持っている。風任せだった裸子植物にはない,効率を持っていたのである。

そんな被子植物が栄えると,それを食べる恐竜も現れた。
トリケラトプスである。

被子植物だって,食べられているばかりではない。
アルカロイドという毒を身に付けたのである。

トリケラトプスは,アルカロイドを消化できなかった。
つまり,トリケラトプスは植物によって中毒死したと推察できるのである。

実際に白亜紀末期の恐竜の化石を見ると,器官が異常に肥大していたり,卵の殻が薄くなっているなど,中毒を思わせる深刻な生理障害が見られるそうだ。

恐竜の絶滅の原因は,隕石か植物か。
KT境界然り,大きな原因は隕石の衝突だろう。
しかし,たとえ隕石が衝突しなくても,絶滅していたのかもしれない。

静かに,静かに,植物によって。

ーーー

さまざまな知識と繋げながら,植物の視点で世界の面白さを再発見できた。
文明,古事記,葵の紋様。

この地球を支配しているのは,ヒトではなく,植物ではないだろうか。

目の前の植物に愛おしさと,畏敬の念を。

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