【株式会社イースト共同企画】香川県出身セトラーが母校に贈る、地元愛深まるバイヤー体験プログラム!
皆さんこんにちは!
1期チュウゴクシコク担当の藤田玲音です。
いつもnoteをご覧いただき、誠にありがとうございます。
現在、アナザー・ジャパンでは、2期セトラーによるアナザー・チュウゴクシコク展(4/3~6/2)を開催中です!
本企画展のコンセプトは、「まれびと海道」。
1期生の僕が担当した昨年の「巡る、チュウゴクシコク」展から、更にバージョンアップして帰ってきました!!
チュウゴクシコクエリアを担当するセトラーの特集企画も開催中です。
ぜひとも皆さま、店頭までお越しください!
香川県の高校生が地元の地域産品を発掘!
さて今回は、アナザー・ジャパンのサポーター企業、株式会社イースト様との共同プロジェクトとして、私の母校、高松第一高等学校国際文科コース2年生の生徒43名と共に実施した、「地元の知られざる魅力、『アナザー・カガワ』発掘プログラム」のレポートをお届けさせていただきます!
私が企画させていただいた本プログラムは、アナザー・ジャパンのセトラーが企画展を組み立てる際に経験するように、高校生が、バイヤー役として、「地元の歴史を知り、作り手さんと直接出会い、そこでの学びや気づきを言語化する」という過程を追体験するものです。
プログラム全体を通して、高校生の皆さんには、熱量高く真剣に取り組んでいただき、振り返りアンケートでは、参加した生徒のうち75%以上が、「(本プログラムを通じて、)地元愛がとても深まった」と回答してくださいました!
自由記述欄にも沢山のコメントを頂戴し、生徒の想いを感じることができました。
これらは全て、参加した生徒から回答いただいた、ありのままの感想です。
今回、プログラムを通じて地元に対する生徒の考えにどのような変化が起きたのか、そしてどのような学びを提供できたのか、その一節をお届けできればと思います。
ここから地元への認識が変わる、キャリアの選択肢が広がる。
生徒たちにとっても気付きや学びあるプログラムにできたと感じています。
是非とも最後まで本レポートをお読みいただけますと幸いです。
早く地元を離れたかった高校時代
プログラムの詳細を触れる前に、僕がアナザー・ジャパンに参加したきっかけについて、お話しさせてください。
僕は、香川県高松市生まれで、大学進学で上京するまでの18年間、ずっと香川県で過ごしてきました。両親の実家も香川県で、いわば生粋の香川県民です。
小学生の頃から旅客機のパイロットになることを夢見ていて、高校は、今回お世話になった高松第一高等学校の国際文科コースに進みました。
他校に比べて英語の授業が多く、オーストラリアで2週間ホームステイをする海外研修もあり、英語を学びたい高校生にはとても良い環境でした。
大学受験に向けては、東京外国語大学の英語専攻を第一志望として、必死に勉強し続けた毎日でした。
受験生の当時、僕がずっと考えていたことは、
「早く香川を出て、東京に行きたい!」ということです。
僕が住む高松市内のエリアは、比較的発展している地域で、商店街を中心としたコンパクトなつくりで、住むには特に不便はありませんでした。
住むには良い街だなと感じていたものの、当時の僕にとっては、もう少し世界を開きたかったのです。
東京で感じた香川県
受験では無事に東京外国語大学に合格することができました。
東京の大学だけあって、同級生は、関東の一都三県からの学生が大半でした。
自己紹介で「香川県出身です!」と言うと、物珍しそうに話を聞いてくれました。何人もの友達が、最初は、苗字の「藤田」ではなく、出身の「香川」で、僕のことを覚えてくれたと思います。(笑)
そんな自己紹介をすると、総じてみんなの返事は、「うどん県だね!」と明るく話してくれました。
最初は、「香川」といえば、「うどん」というイメージがここまで浸透しているのかと嬉しく感じていました。
しかし、何ヶ月とそういったやりとりを繰り返していくうちに、「うどん」としか言われないことへの違和感を感じるようになりました。
「香川県」と答えたら、皆さんから「うどん」としか言われないのです。
関東の多くの人にとって、香川県は行ったことがない地域だからこそ、解像度が低い。
高校生の頃は、あんなにも早く離れたいと思っていた地域のはずなのに、うどん以外、何もないかのように思われているのかと、なんともやるせ無い、悔しい気持ちになりました。
この気持ちこそが、僕がアナザー・ジャパンに参加した原動力になっているのです。
アナザー・ジャパンを通じて深まる地元愛
とは言うものの、アナザー・ジャパンに参加する前の自分が、どれだけ香川県のことを知っていたかと聞かれれば、あまり多くは知りませんでした。
むしろ、アナザー・ジャパンを通じて、多くの物事を知ることができました。
自身が担当するチュウゴクシコク展のコンセプトを考え、商品の仕入れを行う際に、頭を使い、身体を使い、学生の誰よりもチュウゴクシコクのことを知っていると、胸を張って言えるほどに学びを深めていきました。
そうすることで、新しい地元の魅力やポテンシャルに気付き、地元愛がさらに深まっていったのです。
そして、大学に通っているだけでは、知り得ないような活動や出会えないような方々の価値観に触れることで、良い意味で人生を豊かにすることができました。
これら全ての経験が、今の僕の価値観、仕事観、人生観に大きな影響を与えています。
地元の「やしまーる」と高校生を繋ぐ
今回の共同プロジェクトにあたっては、香川県高松市で、株式会社イースト様が指定管理者として運営されている屋島山頂交流拠点施設「やしまーる」とコラボさせていただけることになりました。
アナザー・ジャパンのサポーター企業でもある、株式会社イースト様は、全国800を超える商業施設へシステムの導入や、業務サポートなど、商業施設に関わる多岐にわたる事業を行っております。
東京では、丸ビル、六本木ヒルズ、などといった大型商業施設をはじめ、僕の地元、高松市では、丸亀町グリーンや瓦町FLAGといった地元では誰もが知るローカルな有名商業施設まで幅広く手掛けられています。
今回コラボさせていただいた「やしまーる」は、屋島の自然・歴史・文化と訪れる人をつなぐ新しい拠点として、2022年8月にOPENしたばかりの施設です。
屋島は、源平合戦の戦いの地としても古くから知られる地域ですが、1934年には、日本で最初の国立公園に指定されました。今年で記念すべき90周年です!
岡山と香川を繋ぐ瀬戸大橋が開通した1988年には、年間200万人が訪れる有名な観光地として人気を博しましたが、それ以降は観光客が低迷していました。
高松市も「屋島活性化基本構想」を掲げ、屋島の「自然」や「文化財」を生かした活性化が図られる取り組みの中で作られた「やしまーる」。
約3万枚の屋根瓦には、地元の名産である庵治石が使われ、展望スペースからは、高松市街や瀬戸内海の多島美を一望することができます!
開館以降は、県内外から様々なお客様が訪れ、地元の作り手さんやアーティスト、県内の大学生ともコラボしたイベントが定期的に実施されています。
まさに人気上昇中の新しい高松のシンボルです!
しかし、やしまーる館長の中條亜希子さんとお話しする中で、「地元の高校生に届けられていない」との課題をお聞きしました。
実際、今回のプログラムに参加した高校生を対象にしたアンケートでは、「やしまーる」を聞いたことはあっても、実際に訪れたことがあるのは、クラスのごく僅かでした。
「やしまーる」は、屋島の頂に位置する施設で、車を持たない高校生には限られたアクセスになっていたようです。
こうした現状課題をお聞きしながら、僕自身も高校生の頃は、高松に住んでいても、地元のことを知らないままだったと思い返しました。
地元を何も知らないまま、地元を出てしまった。
だからこそ、高校生の内に、
主体的に学び、地元を解像度を高めてほしい。
地元を離れても、地元を誇りに思えるようなものを見つけてほしい。
そう考えました。
こうした背景で生まれたのが、今回のアナザー・ジャパン追体験プログラムです。
頭と身体を使い、地元を学び考える
前述のように、アナザー・ジャパンで、チュウゴクシコク展を作っていく過程を通じて、地元の更なる魅力に気づき、地元愛が深まっていきました。
各セトラーには、企画展のキュレーター、そして地域産品のバイヤーとして、誰よりも地域を深く学び、知る必要があります。
過去のnote記事でも、そのセトラーの取り組みについて記させていただきました。
今回は、3段階に分けて体験していただけるようなプログラムを設計しました。
①歴史を知る
②地域の方々の話を直接聞く
③言語(コンセプト)化する
これらに取り組むに当たって、生徒の皆さんには、地域を表現するコンセプトを作ってもらう宿題を出すことにしました。
その宿題は、「アナザー・カガワ」を見つけること。
僕が上京時に経験したような香川県は「うどん」しかないという認識を「ナウ・カガワ」として、「うどん」だけではなく、たくさんの魅力が伝わった状態「アナザー・カガワ」を皆さんが見つけて表現して欲しいという宿題です。
「アナザー・カガワ」のコンセプト
コンセプトに沿った香川県の〇〇
の2点を、それぞれ8つのグループで発表してもらうことにしました。
①歴史を知る
では、中條さんから香川県の工芸史に関する講義を行なっていただきました。
主に、「デザイン知事」と呼ばれた金子正則元知事が、アート県としての香川県の礎を築いてきた歴史を学びました。
生徒たちもこれまで知ることのなかった香川県にゆかりのある工芸家や偉人の話に触れ、地域の文化を深く調べていくためのヒントをたくさんメモできたようです。
なぜ最初に、その地域の歴史を学ぶのか。
地域の産業がどういう背景で、なぜその地域で栄えることになったのかを頭でしっかりと理解することで、その地域らしさが見えてくるからです。
②地域の方々の話を直接聞く
では、香川県高松市の東部地域のみで産出される「庵治石」を用いたプロダクト「AJI PROJECT」を展開する株式会社蒼島の二宮力代表にご協力いただき、高松市牟礼町に位置するショールームにお邪魔させていただきました。
庵治石の産地で、「AJI PROJECT」が立ち上がったきっかけから、現在に至るまでの取り組み、そして、これからの世界での挑戦についても、丁寧に教えていただきました。
二宮さんが、産地の抱える課題に対して、正面から向き合っておられる姿。
人とのご縁を大切にされながら、国内だけでなく、海外への方々にも広く発信し続ける重要性を説かれ、歴史ある産業を守りつつも、新しい道を開拓し続ける姿に、生徒たちも真剣に話を聞き惚れていました。
続いては、屋島山頂に移動して、スタッフさんのガイドのもと、「やしまーる」周辺を散策しました。
至る所に、歴史を感じる建造物や観光地、屋島として栄えたかつての面影が見え、新旧入り混じる独特な空間です。
生徒の皆さんは、中條さんの講義や事前学習を経て調べてきた物事を確かめるように歩きながら、コンセプトを導き出すための情報収集に努めていました。
ガイドさんや案内板の一言一句に気を配りながら、「その言葉使えるんじゃないかな」「それ前にも書いてあったよね」と、ヒントを見つけ出そうとする様子からは、アナザー・ジャパンで求められる主体的な学びの姿を強く感じることができました。
③言語(コンセプト)化する
最後の取り組みとして、複数回のグループワークを通じて、それぞれのグループで考えたこと・感じたことを言語化していただきました。
各班の皆さんが、1から考え、宿題の答えとして発表してくれた「アナザー・カガワ」のコンセプトと、それに合わせてセレクトした香川県の〇〇を紹介させていただきます!
どの班も同じフィールドワークを経験したにも関わらず、発表してくださったコンセプトはどれもユニークで、非常に面白いものばかりでした。
また、チームで発表スライドを作る過程では、班の中でも多様な意見が出て、友達の発想に刺激を受けたり、新たに浮かんだアイデアをまとめる作業も楽しんで取り組んでくれていたようです。
プログラム全体を振り返って
発表の様子を全てお伝えしきれないのが、大変心苦しいのほどに、各班の発表で
は、それぞれがどのような学びを要素として抽出して、自分達らしい「アナザー・
カガワ」を見つけたのか、熱心に表現しようとする様子が見受けられました。
最終発表会には、株式会社イーストや株式会社蒼島の皆さまをはじめ、高松市役所の職員さん方にもご参加いただきましたが、「若い方の発想力は地域の発展に必ず力になると思いました。行政がうまく調整しながら高校生の意見などを取り入れていける仕組みが必要だと思います。」との前向きなコメントも頂戴しました。
結果として、このプログラムを通じて、各方面にとって良い意味ある貢献ができたのではないかと感じています。
学校に対しては、従来の受験勉強とは異なる学びの形で、
答えのない問いに対する思考、
身体を動かすことで初めて得られる情報や学び、
そして、コンセプトを考える際には、具体と抽象の思考を行き来しながら、チームの多様な意見をまとめる議論の機会。
企業と連携した課外活動では、どうしても単発のイベント実施に留まってしまうことが多いとのことでしたが、今回は株式会社イースト様のご協力のもとで、このような数ヶ月にわたる継続的な取り組みを実施できたことに感謝申し上げます。
身内ノリで終わることなく、大人の方々を前にしたプレゼン発表に向けて、生徒が真剣に成果に対してコミットする場を提供できたことは、非常に有意義だったと感じています。
「やしまーる」にとっては、屋島の自然・歴史・文化と訪れる人をつなぐ拠点としての役割を果たし、高校生年代との交流を新たに作ることができました。
来年度以降の継続はもちろん、今回のような地域探求型の教育プログラムを用いて、参加した生徒の友人や家族、さらには新たな対象校への広がりを期待したいと思います。
そして、何よりの一番の成果は、参加してくださった高校生たちの地元に対する認識を大きく変えられたことだと思います。
「香川県にはうどん以外にも誇れるところがたくさんある」
「世界に誇れる香川の良いところを知れた」
「かっこいい大人がたくさんいる」
「こんなにも素晴らしいかっこいい人たちが継承していること」
生徒たちがアンケートに書いてくれたこのような「新しい発見」こそが、「アナザー・カガワ」で感じて欲しかった地元の姿です。
高松第一高校の生徒は、県外に進学する方、将来は海外を志す方が非常に多いです。だからこそ、地元を離れる前に新鮮な目線で地元を学び、将来の進路先・仕事先を選び際の判断軸に、良い影響を与えることが出来ていれば、これは非常に価値あるプログラムだったと思います。
また、今回の学びをきっかけに、その先の土地でも地元を忘れず、魅力を発信する伝え手の一人になってもらえればと思います。
アナザー・ジャパンで出会ったカッコいい皆さんが僕の人生を変えてくれたように、そのご縁を次に繋いでいくことが出来ていれば、この上なく光栄なことです。
アナザー・ジャパンでは、今回のような高松第一高等高校との取り組みの他にも、福島県郡山市と連携して教育事業を実施しました。
郡山市とのプログラムでは、実際に店舗で高校生に商品の接客販売を行なっていただきました。今後もこのような実践型の取り組みを通じて、地元や地域社会との関わりについて考えるきっかけを提供できればと思います。
地方自治体や教育関係者の方々をはじめ、アナザー・ジャパンの取り組みにご興味ございましたら、是非ともご連絡をお待ちしております。
最後に
アナザー・ジャパンプロジェクトのビジョンは、「日本の未来に灯りをともす」です。
アナザー・ジャパンで働いたり、関わりを持った人たちが、将来地元に何らかの関わりを持ちながら活躍する姿こそ、本プロジェクトが目指すゴールです。
ご参加していただいた高校生の中から、将来のセトラーが誕生することを強く願うとともに、また違う形であっても、地元・地域を誇りに思い、もう一つの日本をつくる同志として、またどこかで再会できることを心から楽しみにしています!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回のライター:Reon Fujita