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何気ない日常の選択も、みらいの自分に繋がっている。

わたしの洋服はすべて日本国内で縫製されています。その中のほとんどをお願いしているのが女性だけで構成される縫製のスペシャリストたちです。職人の高齢化が問題になっている中、頼もしいことに同世代か下の若い方ばかりです。
ただ、皆さんが想像するミシンがずらっと並んでいるような縫製工場さんではありませんので、量を一気に縫い上げることは難しいです。

最初にお会いした時も、
「あまりたくさんの発注は受けられませんよ」
と笑いながらおっしゃられたのを今も覚えています。
だから、
たくさんではなく、 いつもと同じだけ作り続けるのです。

この“同じだけ作り続ける”ということは何を意味するのかわかりますか?

お商売というものはやっぱりたくさん発注をして、たくさん売れるのがいいのでしょう。でも想像以上に売れた場合はどうしましょうか?
やっぱり、たくさん作れるように人員、設備等を増やしてもらったり、他にも工場さんを開拓して生産力の確保にあたりますよね。

でも、生産を広げた矢先、波は一気に静まっていくことが往々にしてあるのです。この仕事を受けた工場さんの裏側では、これ自体の売上がなくなっただけでなく、前から受けていて断ってしまった他の発注元もあるということ。

これをわたしはしたくない。

百歩譲って、勢いがある業界や時代であればいたしかたありませんが、これからのアパレル業界は決してそうではありません。

わたしの家も小さいながら縫製業を営んでいましたが、小学3年生(80年頃)の時に廃業に追い込まれた経験があります。日本はまだまだ成長期ということもあり、生産は中国へどんどん移行していった時代です。涙を誘う悲しい話しではありません、あの時代には当たり前によくある話しでした。

その後、何十年とそれなりの時代を経て、ここ十年、再び国内生産が見直されることになってきました。
それ自体はたいへん喜ばしいことではありますが、
もう決して国内の産業を荒らしてはいけないと思うのです。

変わらず日本の縫製を守り、細々と工場さんを支えてきた人たちがいます。一方"日本製"という言葉欲しさに海外生産から戻ってくる人たちもいます。

縫製業も衰退している今、バランスは再び不安定になってくるでしょう。

工場さんもどこも必死な時です、
安い工賃でもたくさんの発注が欲しくなるのも当然理解できます。
競争原理もわかりますが、同じ轍を踏まないでほしい。
工場さんに安定した仕事を頑張って出し続けてほしいのです。

つい先日も、わたしの知る工場さんから大きな取引先が手を引きました。
海外に生産を移すようなことらしいのです。

わたしにも不振な時は大なり小なりくるでしょう。
そんな時も、同じスタンスで工場さんに発注を出せるようにしたいのです。無理なく同じ数を作り続けるにはどうしたらいいのかを考えるのです。
たくさん購入いただける商品もありますが、それはまた来シーズンまでお待ちください。
今シーズンしか着られないものは作っていないという自負がありますから。


モノ余りの時代、何を基準に選ぶのか?

地方の商店街が復活してきているような話しもあります。一時は大きなショッピングモールがあちらこちらに出店され、昔ながらの商店街の危機が叫ばれました。
ただ、そんな出店も少し落ち着いてきた今、モールと商店街の共存も少しですが見えてきた気もします。
どの業界でも同じことですが、お互いの長所をしっかり出しながら、お互いの領域を乱さない、そんな努力が必要な気がします。

あとは全て、消費者が決めるのです。
安さなのか、質なのか、デザインなのか・・・、
それとも今までにない新たなファクターで選ぶのか。

それは単に商品を決めるのではなく、未来の日本を選択しているということを肝に銘じておかなくてはなりません。

現役世代はもちろん、これから社会にでる人たちも、
サービスを含め全ての人が生産者であり、消費者なわけです。
消費するということは、大げさに言えば1票を投じているのです。
その1票は間違いなく未来の自らの仕事に繋がっているのです。


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