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uni

本物を探している。人生は本物を探す長い長い旅なんじゃないだろうか、むしろ、そう思い込む事で、果てしない人生を乗り越えることが出来る、希望的観測。他人を理解することなんて出来ないのだから、普遍の話じゃなくて、僕の話をしよう。きっと皆んな、本物を聞きに来ている。だけど本物なんてきっと何処にもないと言うのをおそらく、こっそり知ってる。

本物の思想、本物の友情、本物の教訓、本物の実績、本物の家族、本物の居場所、本物の食べ物、本物の愛、本物の自分。ホンモノのゲシュタルト崩壊を繰り返しながら、僕らは本物を探している。
誰かが叫ぶ、本物は探すんじゃなくて作るものだ、と。でもさ、全てを創造する事ほど不可能な事は無いだろう。だって我々の創造は、知識や経験の上に成り立っている。真に我々の内側からの創造は有り得ない事で、常に外部と接触するからこそ新しい何かを創ることが出来る。結局コピーアンドペースト。既視感の破壊と構築こそが創造。無から有は生まれないのかもしれない。まあ、だけど、僕らは生まれた。おぎゃあと、この世に。生み落とされた訳だ。アダムとイブの子。Be bone.受動態。

受け身ですよ、私たちは。生んでくれなんて頼んじゃいない、責任ですよ、命を創造しているのだから。命の創造、即ち意志の創造。思想の創造。物凄い事をしてしまっている。とんでもなく恐ろしく、残酷で、神秘的な行為。確率で言えばそうでもないのかも知れないが、君たちが作ったものは目の前に横たわる小さくてムチムチな塊だけじゃなくて、そのずっと奥に見える膨大な数の世界と、それらを如何様にも変えてしまう可能性を握る魂。
一番重要なことは誰も教えてくれやしないから、きっと君らは気づいていない。生物としてもはや真っ当に役目を終えた雄雌が神秘を感じて上っ面の絶頂を新しい生命に押し付けていく。別に良いけどね、と彼等に放り投げるのは簡単で、残酷だ。どうして良いか分からないよね、だって初めから僕らは受け身だったんだ、なんて知ってしまったらさ。

結局誰かの身勝手なアクションがなければ、僕はここには居ないんだ、と知った日、ぼうっと見上げた薄暗い天井が、永遠に続いていく感覚を覚えた。生まれてきた子に罪はないってあんまり本人に言わないっぽいすよ。普通は。生物としての子孫繁栄は脳にプログラムされているはずなのに、そこに疑問を持ってしまったらもはや生物では無くなるのではないか。哲学という名の、神が人間を滅ぼす為の兵器に食われている。むしゃむしゃ。話し出すと止まらないからあんまり喋りたくないんだようと、君はいつも困ったように笑う。傘を無くして途方に暮れる梅雨入りPM15:00。近くのバス停にて。風でも吹いてくれたら楽なのに。

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