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舞台「鴨川ホルモー・ワンスモア」(配信)の感想

配信ありがとうございます

この作品、見に行きたかったのですが、所々の事情で劇場に行くのがほぼ叶わない状態で諦めていました。ただ以前の「たぶんこれ銀河鉄道の夜」のときも配信をしてくれたので、少し期待をしていました。そうしたら大千穐楽の配信をしてくれるということで、即チケット購入。無事に見る事ができました。ありがとうございます。
ということで、二回ほど楽しませていただきました。このエントリーはざっくりではありますが、この舞台の配信での感想です。劇場で見ていないので、臨場感的なものは印象が違うかもしれませんが、ご了承ください。

ヨーロッパ企画よりシンプルかつストレートな作風

作・演出が上田誠さんなので、もちろんヨーロッパ企画なのですが、ヨーロッパ企画の本公演と違って、素材が万城目学さんの小説をスタートにしているのでストーリーの流れに非常にシンプルさを感じます。途中、小説の「ホルモー六景」のエピソードを織り交ぜつつですが、違和感なく話が続いていきます。このあたりは上田さんのまとめ方の上手さでした。
話も非常にわかりやすい流れなので、基本小説や映画を知らなくても、十分に楽しめる設定だと思います。オニ語が出てきますが、まあそれがわからなくても、ストーリーの楽しみ方に大きな影響もなくだと思いますが、知っているとこういう指示をしているのかというのが分かる感じです。この舞台は、ホルモー自体というよりは、ホルモーを通じた青春ラブストーリーなので、そちらを楽しむ作品だと思います。実際、学生らしい甘酸っぱさ一杯で、そこに京都という土地らしい歴史のどことなく思わせるエピソードが織り交ぜられていきます。

バランスの良い配役

演技のうまい下手というよりは、俳優さんのキャラクターを上手く活かした配役になっていて良かったと思います。
安倍役の中川大輔さんは、立ち姿が映えますね。自分は存じ上げていなかったのですが、仮面ライダーの方なんですね。顔も小さいし、背も高くてほんとモデルさん体型。ちょっと残念だったのは、配信の大千穐楽の日だけかわかりませんが、発声がきつそうだったこと。喉に引っかかりがある発声だったので、セリフの滑舌があまりよろしくなかったのが残念。他の俳優さんがこの辺りが良い方が多かったので、舞台経験が少ない方には大変だったのでしょう。
ヒロインの早良役の八木莉可子さんは、頑張っていたと思います。声はよく出ていましたね。途中の喧嘩腰になるときの台詞回しの変化とかにもしっかり対応できていたし。初めてでこの役柄ってキャラの使い分けが難しいので、どうかな?と感じていましたが、十分にこなしていたと思います。
芦屋役の佐藤寛太さんが上手かったと思います。ああいう嫌なキャラをさらっと演じていた。アフタートークでの様子とか見ると、楽しそうに演じられていたのが伝わってきました。劇中の動きのキレの良さもそうですが、嫌味な役って難しい。この作品の登場人物は嫌な部分はあっても、本質的に嫌な人ではないので。安倍がしょぼい人物として始まっていくので、その対比という点でも非常にうまいなあと配信で感じました。
楠木役の清宮レイさん、乃木坂で現在では舞台経験が増えてきた一人。彼女が最初に出た皆川猿時さんの舞台を映像で見たときには正直「んー、こんな感じかな」という印象でしたが、そのあといくつか経験をされて、本人に余裕も生まれたのでしょうか。舞台という場所に対して、向き合う感じが強くなっていると感じました。キャラクターに対する思い入れとか理解とか、そういう部分を彼女なりに消化して、色をうまく乗せようとしている。そこが過剰にならないことが大事ですが、うまく考えて来てるのかなと。もちろんまだ粗さも多いのですが、まだまだ経験値積めば変わる人だと思います。
高村役の鳥越裕貴さんは、ほんとにいいアクセントでした。力が入っていない感じが良い。映画版だと濱田岳さんでああいう飄々とした部分が絶対的に必要になってくる役柄ですが、鳥越さんはこのあたり舞台の中で軽さがうまく出ていたと思います。
個人的に今回も美味しいところを持っていっていると感じる岩崎う大さん。演出とアドリブっぽい部分と両方あったと思いますが、ああいう全く重さのない先輩って感じが良いですね。
あと自分の中で良いと思ったのが日下七海さん、彼女の出番だけ実質周りの面々と絡むことが少ないので、結構キャラの維持とか伝わり方が難しいと思うのですが、よく見せていたと思います。アフタートークでも絡みが少なくて、、、とかいう話も出ていて、レナウンの唄のシーンでも舞台袖で踊っていたという話をされていましたが、感情表現を一人で見せるって、映像以上に舞台だと寒い感じが出るので、頑張っていたなあと思いました。
毎回のプロデュース公演ではヨーロッパ企画の面々がサポートしていますが、今回もこのあたりの方々がきちんとハマることで、上田さんの味が出ていたと思います。

全体的な感想

演技がどうとか細かい部分での話は、そりゃあ小説を舞台化するんだからしんどいですよね。
オニをどう見せるか?はもちろんああいう映像を使うしかないし、更にいうとホルモーを全面に打ち出して作ることも難しい。そこは演出上バトルの小説ではなく青春ストーリーなので。だから良くも悪くもああいう割り切りは良かった。土手のセット組みも割り切っていて良かったと思います。シンプルにしたことで場面での動きがスッキリした。土手でダラっと過ごすみたいな大学生らしい緊張感のなさがうまく見えます。
正直な話、ここ最近のヨーロッパ企画の本公演よりも綺麗にまとまった印象は持っています。以前、同じく配信で見た「九十九龍城」とかと比べるとかなりうまくまとまっていたし。前回本多劇場でみた「切り裂かないけど攫いはするジャック」もそうですが、ドタバタ感がうまくハマっていないときがあるけど、このあたりがなかったのが大きい。個人的な好みだということを前提の上で、自分としては最近の上田さんは「夜は短し歩けよ乙女」もそうですが、そういう作品での上手さを強く感じます。
2年に一度くらいのペースでこういう作品を作ってほしいですね。素材はまだまだいっぱいありそう。ちょっと不可思議な設定の作品で作るの、上田さんの真骨頂という気がします。「ドロステ」なんて何度見ても面白いですし。
次はヨーロッパ企画は岸田國士戯曲賞をとった「来てけつかるべき新世界」なので、楽しみにしております。


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