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函館を「種の街(シードシティ)」に

アノニギワイ公式noteとは?
ブログとオープン社内報その中間のような位置づけで、
着飾らず僕たちの素直な思いをお伝えするnoteです。
ライター:「いさり灯」編集部

函館圏の事業承継などを推進している函館地域承継マッチングプラットフォーム「いさり灯」。今回は、その「いさり灯」を立案した取締役の豊島にその経緯や想いを聞きました。

函館を新しい価値が生まれる街に

ーなぜ「いさり灯」を始めたんですか?

2020年のことになりますが、私を可愛がってくれた祖父が亡くなりました。96歳なので大往生ですし、ある程度覚悟はしてたんですが、コロナで最後、会いに行けなかったんですよね。

思ったのがなんか「函館遠くなったな」って。これまで飛行機や新幹線でいつでも帰れる函館がすごく遠くに感じたんですよ。

それで函館のために何かできないかなと思って始めたのがいさり灯です。

ー事業承継のマッチングにしようと思ったのはなぜですか?

僕のキャリアってほとんどが広報・PRなんですよ。函館のために何かっていっても手に職があるわけじゃない。ライターさんとかカメラマンさんとかだったら何か生み出せるのかもしれませんが、僕が何かを創造するのは難しいなと思いました。

広報は何ができるかって思ったときにそれは情報発信だし、人と人を出会わせることだなって。広報はステークホルダー(利害関係者)同士の良好な関係を生み出すのが仕事ですから。

そこで思い立ったのが、人同士をつなげて函館にイノベーションを起こそうってことだったんですよ。

ーイノベーションですか

そうイノベーション。なんだって話ですよね笑。実は僕が大学で所属してたのが成城大学社会イノベーション学部。勉強してた分野なんですよね。

イノベーションっていうのは、これはあくまで僕の理解なんですけど、「既存の価値とアイデアを組み合わせて新しい価値を生み出すこと」だと思ってます。よく産業革命期の馬車屋が事例として出てくるんですけど、馬車屋が馬車を作り続けても馬車しか作れないですよね?

産業革命期ですからいろんなものが登場して、馬車自体が無用の産物になっていくわけです。「あぁそろそろ馬車も終わりだな。廃業か」って思ってしまったらそれまでなんですけど、そこに都会で導入され始めた蒸気機関車を見た人が入社してくるわけです。

すると馬車の技術で蒸気機関車の部品を作れるんじゃないかってなる。車輪だったり車軸だったり作ろうって。馬車屋には馬車作りで培ったノウハウがあるじゃないですか。長期耐久安全みたいな部品が作れるんですよね。するとその馬車屋は、蒸気機関車の部品屋としてまた新たな価値を提供していくことになる。

ーなるほど、既存の価値に新しいアイデアが加わって、事業が変革していくのがイノベーションなんですね。なんとなく事業承継との絡みが見えてきました。

そう函館の事業者さんもここまでいろいろなノウハウや経験を積んできていて「既存の価値」はお持ちだと思うんですよね。それを後継者不足で終わらせるのもったいないなって。

そこで始めようと思ったのが事業承継のマッチングです。札幌や東京、海外なんかで活躍する函館出身者や函館LOVEな人に函館に関わってもらってイノベーションを起こしてほしい。函館を新しい価値が生まれる「種の街(シードシティ)」にしてたいって思ったんですよね。

ー事業承継は、そういったイノベーションを生みやすい形態なのかもしれないですね。

そう思います。ただ僕がやりたいのって函館が「種の街(シードシティ)」になることであって事業承継そのものではないんですよ。いさり灯でも謡ってますけど、事業を含めた地域リソースを次世代に託す取り組みなんです。僕らはそれを「地域承継」と呼んでます。

空き家でも使ってない工場でもテナントでもコミュニティでもいいんです。それを引き継いだり募集したりして、地域のプレイヤーを増やせればそこからアイデアが生まれると思うんですよ。

なので、いさり灯では多様なメニューをご用意してそれらすべてをお引き受けしてます。直近では、函館からJリーグを目指す「FC函館ナチャーロ」さんの運営スタッフやスポンサー募集なんかの記事も掲出予定です。

事業承継のワンランク上の「地域承継」ってニュアンスでぜひいさり灯をとらえてほしいですね。

想いを紡ぐためのインタビュー形式

ー現状のいさり灯はどんな感じですか?

後継者になりたい何か継ぎたいって方から総計で60件ほどご連絡をいただきました。こんなに多くの方からご連絡をいただけると思っていなかったのでとてもびっくりしています。

ただ、後継者を募集している企業様からのオファーはいただけていません。これにはいくつか理由があると思うんですけど、1つはいさり灯が情報をオープンにするやり方をしているところにあるんじゃないかなと。

ーインタビュー形式の記事掲載ですね。

その通りです。やっぱり後継者不足の問題って外にだしづらいし、いいにくいっていう雰囲気があるんですよ。「廃業するかも」って思ったら従業員も取引先もやりにくいじゃないですか。だから表に出てこないんですよね。

ーそれでもインタビュー形式にされてるのはなぜなんですか?

やっぱり既存の価値を大事にしてほしいんです。売上がかなりあってうまみのある企業だったら、それこそ大手のM&Aサービスを使えばいいんじゃないかと思います。でもこのご時世に「馬車屋」に関わろうと思ったら、強みはデューデリとかじゃないと思うんですよね。やっぱり人の想いだし、ここまでの歴史だし、函館との関係じゃないでしょうか。それをわかって承継してもらわないと絶対にイノベーションなんて起こらないと思うんですよね。

ー確かに上辺の経営情報だけじゃ、イノベーションの元になる既存の価値はわからないかもしれないですね。

その通りです。目的が事業承継やM&Aじゃなくて「想いを継いで次世代が新しい価値を生み出す」って考えたら絶対オープンネーム形式は、はずせないんですよ。

ー「いさり灯」では後継者になりたいって方の記事も掲載していますよね。

というか今はそれしかないです笑。これにはいくつか理由があって、大きなところでは「後継者になりたい方のニーズ」「承継元の事情」でしょうか。

「後継者になりたい方のニーズ」の点からお話すると、通常のM&Aサービスと違って当社に連絡いただく方ってM&Aが目的じゃない方が多いんですよ。

ーM&Aが目的じゃない?

一番のニーズは「函館を良くしたい」ってことなんですね。「函館なんかやばいよね」「どうにかしたいよね」って方が多いんです。事業承継を介して函館をどうにかしたいと思ってるんですよね。

そういう気持ちを発信したほうがいいと思ったんですよ。初回にご登場いただいた株式会社monopoの佐々木さんからもそういったアドバイスをいただいて、担い手の方も掲載することにしました。

なので「いさり灯」で担い手(後継者)のインタビューがあったら「事業を買い取りたい人」じゃなくて、「函館で何かを実現したい人」「函館を良くしたい人」と思ってみていただきたいと思います。そういう方と何かしたいと思ったらお繋ぎしますのでじゃんじゃん連絡いただきたいです。当社には一切お金は入らないですけど笑。

ーもう一つの「承継元の事情」についても教えてください。

これは先ほどお話した「後継者不足の問題って外にだしづらい」ってとこです。後継者探してるけど情報は外に出したくない=クローズドなM&Aサービスで募集するってなると思うんですけど、それだとお話したように金銭的な買収しか成立しないと思うんですよ。情報を非公開にしたまま想いのある方と出会うためにはどうするか。担い手(後継者)側が情報公開していればそこに応募すればいいわけですから、それが可能だと思ったんですよね。

ーよく考えたらマッチングって双方の情報が開示されてこそですもんね。

確かに、そういう意味でもマッチングにとって必要なことだったのかもしれないですね。今、全国的に見ても「担い手(後継者)が情報公開するマッチングサービス」って当社だけだと思います。これが成立するのはそれだけ函館に想いのある方が多いってことの示唆ですよね。

文化形成に向けて味方づくり

ー「いさり灯」の展望について教えてください。

展望といいますか今やろうとしていることは、「函館に無くすより託すの文化形成をする」ことです。ここでお話した廃業ではなく新たな方に継いでイノベーションを起こすことを函館で当たり前にする。この実現はアノニギワイの力だけでは難しい。そこで函館圏の企業様や団体様、コミュニティ様と協力したいと思っています。

ー何か具体的に取り組まれていることはありますか?

まもなく始まりますが、「ミッションパートナーシップ」という制度をはじめます。これはミッション――つまり、「函館に無くすより託す”の文化形成を」という趣旨に賛同いただいた企業様、団体様、コミュニティ様と結ぶもので、相互に協力してこれを実現しましょうっていう合意のようなものです。

お互いの出せるリソースを持ち寄ってミッション達成に向けて少しづつ前進したいと思っています。

ーCSR的な側面からも協力者がありそうですね。

まさしく。CSRの観点から大企業様も含めて賛同いただけれたらうれしいですね。もちろん東京や札幌の企業様でもウェルカムですし。

ー最後に何かメッセージはありますか。

最近、函館人って何かよく考える機会があります。僕の家も曾祖父ぐらいまでいくと函館人じゃないんですよ。”内地(本州の人という意味の方言)”の人です。だから生粋の函館人なんてほぼいないと思うんです。そういう雑多な人達が集まってつくりあげたものが函館なんですよね。だから従来、函館には外から入ってきたもの受け入れて昇華できるパワーがあるはずなんです。今、すごく内向きになる時期ですけど、外にいるいろんなプレイヤーに”次の函館人”になってもらうこと。函館がこれまでやってきたことを違う形で実現したい。「無くすより託す」。ご協力いただきたいと思います。

函館圏を未来に残す地域承継を「いさり灯」

 公式Twitter:@isaribihakodate
 公式Instagram:https://www.instagram.com/isaribi_hakodate/

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