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「ちゃおの付録いつかの飴のあじ」



拝啓 すずめ園さま

すずめちゃんこんにちわ🍮
文フリの準備に追われていますが、眠れていますか‥

とはいえもう今週末だなんて!楽しみなような、怖いような、そんな気持ちで朝を迎えています。でも、傑作選が完成するとか、嬉しいこともあったり‥!すずめちゃんの新刊が読めるのもとっても楽しみだ

そういえば、ウィッチンケアを読みました。行動が遅すぎたせいでどこでも売り切れていて、結局すずめちゃんに頂いてしまったのですが(本当にありがとう‥)、読んでいて涙がこぼれそうになりました。すずめちゃんの核を自ら見せないような、美学を保って生きているストイックさも凄く好きなのですが、このエッセイはそれを保ちつつ人間らしい部分まで描かれていて、すずめ園もすずめ園の文章も生涯読みたい、この土地を守っていきたい、と思いました。なんだって始めると大変なことばかりあるけれど、どうにかひだりききクラブが続いていきますように、とあさっての方向にお祈りしました。すずめちゃんの文章、大好きです。



そんなすずめちゃんの自由律俳句ですが、夏モードに既に突入していて読んでいて軽やかな気持ちになりました🎐

いくばくかのムダ毛をつつむ初夏の風

大好きです そこに焦点を当てるんだ‥!という驚きと、句としてヘルシーに纏めあげる力量に感動したしちょっとやきもちすら焼きました ゆびやおでこの産毛が風にふんわりとたなびくのはとても可愛らしいことですね🎐わたしもこんな句に挑戦したくなりました

かんぺきな前髪のまま寝そべる

これも同じ雰囲気を持ったいい句です‥🛌

アイドルを経験したことのある方って、現役女子高生よりも前髪に詳しいよね〜と友人と話したことがあります。それくらい前髪に厳しくって詳しくって、毛の一本すらずれてしまうのが嫌だと思うのに、家に帰ったら疲れちゃってて、あんなに大切に思っていた前髪もそのままで眠っちゃったりしますよね。わたしたちの世代にしか書けない自由律俳句だ、と思いました。

生まれる前からこの町にあるオムライス

すずめちゃんはオムライス好きのイメージがあります。だって、二人で喫茶店やファミレスへ行ったとき、七割くらいの確率でオムライスを食べている気がするから。すずめちゃんが一人暮らしを始めたと聞いたとき、毎日オムライス作って食べてるのかな‥なんて思ったほどです🥚🍅

でもこのエッセイを読んで、すずめちゃんにとってのオムライスは、“これしか食べないほど好きなもの”ではなくって、“とっても大切だし、風情のあるもの”として想っているのかな、と思いました。いつもかけている眼鏡でそれぞれの街を見るみたいに、オムライスを通してその街の生活の温度を感じるなんて‥大切な時間を共有してもらったような気持ちになりました。


それではわたしも自由律俳句ゆきます🐇

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うさぎになって帰ってきたね

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急に髪の毛をピンクに染めたくなって、ほんとうに染めて帰ってきた日があったならあなたは、あ、うさぎになって帰ってきたって思ってくれたらいい。



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黄色いシャツ走りゆく吾子

ちゃおの付録いつかの飴のあじ

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眠れない夜、同じく眠れなかった親友と、なぜかちゃおの話をした。

ちゃおは、小学館から毎月発行されているコミックだ。ちいさな頃も勿論あって、わたしと親友はちゃお〜Sho-Comiという少女漫画の遍歴を同じように辿っていた。小学生の頃からインドア派のわたしたちは、互いの家に行き無言で漫画を読み耽ることが「遊び」だった。

ちゃおには毎月付録がついていて、チョコの匂いのペンとか、スクールバック風のミニポーチとか、キラキラしたハートのついたぱっちん止めとか、小学生の夢をかき集めたみたいなちょっぴりダサめの風貌で、夢中になって集めていた。サン宝石のほっぺちゃんと同じ箱の中、今も実家の何処かにあると思う。

それから10年以上経って、わたしたちは21歳になった。たかが10年、と思うけれど、わたしたちは二人で鳥貴族とか行けるようになっちゃったし、ちゃおのコテコテのハート♡みたいな付録たちは、垢抜けたおしゃれなカチューシャとかになっていた。あのころ読んでいた漫画家は今も連載を続けていたけど、もうわたしたちの知っている絵柄じゃなかった。

でも、10年経っても二人の関係性は変わっていなくて、眠れない日にあれ食べたとかあれ面白かったとか、どうでもいい話ばかりしていて、今だってちゃおの話しながら朝を迎えちゃうんだ。わたしたちまだ子供だよね、と、遠く離れた場所にいる各々の気持ちを確認しながら、わたしと彼女との距離くらい遠くの、あまきキャンディーのような思い出を胸に抱いて眠った。



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飲んだお酒で涙の味も変わるの

餃子の折り目の数の憂鬱

氷溶けてわたしすら溶けた



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うまい棒分け合って食べるよな

唐揚げ色の犬見て

丘のようなデコに一蹴


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しっぽだけ掴んでちゃダメかな

欲しい、嫌われてもいいから、まつ毛、

許さないから君でいてほしい

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この句を作ったとき、詩のようなものを書いた、そうして消して、今現在書き直している最中だ、だからちょっぴり、走り書きかもしれない。

誰かと関わり合うとき。人と関わると色々なものが見えてくる。好きな食べ物の違いとか、眠る時間とか、価値観、愛や友情への感覚だったり、一目ではわからないことだし、そしてそれは、どれだけ好きな人でも割と違ったりする。

人と関わり合うときに出てくる違いのことを、わたしは消えてほしくないなとよく思う。合わせて欲しいとか、変わってほしいとかは思わない、変わってしまったらなんとなく寂しいし、それが相手の個性だから。たとえば、リラックスしたときに靴下を脱ぐ癖がある人のことをわたしは咎めない、行儀とかに関わる場面では「(あ‥)」と思うだろうけど、わたしの前ではそうしていてもらって構わない、と思う。わたしがそれを片付けたくなったら片付けるし、面倒くさかったらそのまんまにする。部屋には二足の靴下が点在することになる。でもべつに、それでいいやと思って、その分わたしは抱いた感情を短歌や句に廻す。循環だと思っている。

何かすれ違って「変わるから」と言われたら、そう言われた悲しみの方が勝ってしまうかもしれない。もしどれだけ傷ついたとしても、別に変わってほしいと思って傷ついたわけではないから。ずっと許さないままでいたいし、わからないことを許しあいたいし、いつか忘れるくらいの快活さを保っていたい。

わたしの文章には“わたしとあなた”という二つの立場が出てくることが多い気がする。それは本当のことだったり、居もしない誰かについて使っていたりする。わたしは相手のことを宇宙だと思っていて、馬鹿にされたり卑下されないかぎり、どんなことでもべつにどうだっていい、わたしと違う宇宙で起きていることだ、と思ってしまう部分がある。だからこそ、わたしとあなたが居れば、はじめて見るような湧き水みたいなものが生まれて、わたしは勝手に感動する。

この前、許さないから君でいてほしい、と思ったことがあった。わたしときみのふたりのせいで、多分それはどっちのせいでもなかった。君は君、わたしはわたし、しょうがなくて、だから許せなくても君は君のまんまでいてほしいと願った。そうして、誰にもわかってもらえなくてもいいから、この哲学に少し似たナニカを残していたくて、句にした。言葉になって誰かの脳裏に焼き付けば、わたしは生きていたことになるから。

許さないから君でいてほしい、ただそれだけのことを今日もあなたの背中に想う。



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前回のすずめちゃんの自由律俳句が完璧で、わたし大丈夫なんだろうかと不安になったけれど、そんなこと思っちゃダメだ〜〜!と喝を入れてなんとか出来ました。

“俳人マインド”の話、とってもわかります‥わたしは極度の出無精だし、ご飯もおんなじものばっかり食べちゃうからより日々に感動すべきだな、と思いました。と言っても結局今回も内在的な句ばっかりだけど‥ 

まずはふつふつと想ったことを形にして、あきらめないでいたら自分でいれるかな、そう思った5月がもう終わります。今月最後の思い出がすずめちゃんとの文フリなんてしあわせだ〜❕たのしく、たのしく、そして自由律俳句の素晴らしさを知らないひとにまでお届けできるようがんばりたいです🔥メラメラ

それではまたね〜すずめちゃん𓅮

にっきより


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📚 文学フリマ東京出店のおしらせ 📚

5月29日(日)開催の文学フリマ東京に、
作家で俳人のせきしろさんとの合同サークル
「ひだりききクラブとせきしろ」として出店いたします!

当日は自由律俳句集や個人ZINE(既刊・新作)を販売予定です。ひだりききクラブの作品をたくさんの人に、直接お届けできたらいいなと思っております!

ブース番号は【チ-25〜26】です

入場無料なので どうぞお気軽にお越しください🐈


日時:5月29日(日) 12:00〜17:00
会場:東京流通センター 第一展示場
ブース番号:【チ-25〜26】
入場無料 🆓


会場案内図(ブース位置)
https://bunfree.net/wp-content/uploads/2022/05/A3_OL_tokyo34_visitor_map.pdf

詳細⇒


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つぎは6月1日 すずめちゃんの番です🐶

『ひだりききクラブ』プロフィール
出雲にっき、すずめ園による自由律俳句ユニット。毎週水曜日にnoteにて自由律俳句の交換日記、「 #ひだりききクラブの自由律俳句交換日記 」を更新している。
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