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ほん(しがつ)

4月は、慌ただしかった。なんだか疲れた。うちの部署にも新しい人が入ってきて、新しい人はもちろん新たな環境なんだけど、それって受け入れる側もそうなんだなーと実感した。受け入れる側になったこと、あんまなかったんだよ。そういうこともあって、余裕がなかったっぽくて、あんまり小説は読まなかった。でも、DMMのアレでマンガはたくさん買ったので、通勤途中にマンガはめちゃくちゃ読んだ!

「ダルちゃん」はるな檸檬、小学館

どうせ買うなら単価がなるべく高いやつ!そんで読みたかったやつ!と思って何を買うか悩んでた。よく思い出したな、わたし。読みたかったの、ダルちゃん。

めちゃくちゃよかった。ダルちゃんは宇宙人(?)みたいな設定だけど、わたしは「普通じゃない」って悩むのは、人間も一緒だよね〜。普通なんてないってわかってるのに、普通ってなにって悩んじゃうよね。

「私を幸せにするのは 私しかいないの」

ひりひりした。わかるって言うと陳腐になるけど、ほんと、そう思う。誰かといた方が幸せだとか、それはそうも思うけど、じゃなけりゃ不幸せかって言われたらそうじゃない。

私は私を幸せにできるよ。自分のご機嫌の取り方を知っている。何が楽しくて嬉しいか知っている。誰か、に幸せにしてもらうことだけが全てじゃないよね。ひとりでだって十分大丈夫だよ。

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「めぞん一刻」高橋留美子、小学館

この頃の絵柄が超好き。ちなみに、一番絵柄、内容ともに好きなのは「らんま1/2」。今思えば、オタクへの入り口はらんまだったんじゃないかと思う。小さい頃、めちゃめちゃアニメにハマってずっと見てた。山口勝平の声が一番イケてる声だと感じるのも、らんまが大きい気がする。

今回のセールで、読んだことのなかった「めぞん一刻」を買ってみた。高橋留美子作品はよく「男がクズばかり」と言われるけれど、例にもれず「めぞん一刻」もクズばかり。というか出てくる女も大概である。クズと呼ばれるような人たちが、真面目にバカなことやってるのがとっても愛おしい。おもしろかったー。

『わたしの狼さん。』「Dear」藤原ここあ、スクウェア・エニックス

藤原ここあのことは一生好き! 「めぞん一刻」じゃないけど、もういない人はどうしても特別になってしまうね。

人間と魔物、勇者と魔王、不死の呪い(?)とかが出てくるファンタジー。「わたしの狼さん。」という一冊から物語が始まって、「Dear」というシリーズへ移っていく。興味がおありの方は、どちらも読んでください~!

ざっと好きなところを残しておく。

「みんな なんか頑張ってて 泣いたり笑ったり怒ったりできることが嬉しくて ついでに天気まで良かったりするともう 歌って踊りたくなるんです」(「Dear④」p.123)

キャロちゃんのこの言葉、ため息が出るほど好き。誰かと一緒に過ごして、その時の景色が綺麗だったら、そりゃもう最高に幸せだ! 美しい景色を見て、素直に美しいと思えて、それを幸せに感じられるのはいい。最悪な時に美しいもの見ると死にたくなるもん(笑)

「悔しいし 哀しいし 淋しい きっと一生忘れられない でも そうやって生きてくしかない」(「Dear⑥」)

魔王に、代わりのいない哀しいことに「貴女も慣れるの?」と問われたときの小桃ちゃん答えが上のセリフ。小桃ちゃんの抱えて生きていく覚悟たるや。このシーン本当にかっこいい。変身願望ってある。新垣結衣になりたいとか思う。有名人じゃなくても、痩せてモテたい、とか。でも、私は私にしかなれないんだよなー。「そうやって生きてくしかない」と言いつつ、それが後ろ向きなものじゃなく、前を向いてるこの小桃のセリフはかっこいい。

何もかもが解決したわけじゃない だけど 大丈夫 幸せはここに あなたと出会えた奇蹟に(「Dear⑥」)

このモノローグで一連の物語はおわりを迎える。すごく愛おしい。このモノローグの前、プリノが、哀しいことも嬉しいことも「そのどれもが私の中でいきて」いて、人は「いろんな巡りあいの集成」だと話している。これって磯野真穂が言うところの「ラインを描く」ことなのかなーと。

狼さんとDearには、3つのルートがあるというか、3組の物語が同時並行で展開されていく。みんなそれぞれ背負っているものがあって、でもたまたま出会った誰かと自分を作り直していくというか。出会った誰かと新しい人生のラインを描いていく。モノローグ前のプリノのセリフから最後のモノローグまでの流れがその3組の歩みが表現されててとても綺麗。抱えていた問題が全て解決はしてないけど、それぞれが出会ったかけがえのない誰かとの思い出とかがあれば、なんだか大丈夫だよね。

これをたまたま読んでくれているあなたが何年生きているのかわかんないですけど、生きてて、すっきり解決できることなんてたかが知れてるじゃないですか。でもすっきりしようがしまいが人生は続くし。そんな日々の中で、おまもりみたいな言葉とか出来事とかにも出会うじゃないですか。私にとってはそれが小説やマンガのなかの人物だったりするわけで。そういう出会いが時たまふっとあるから、解決できなくても、生きていけるんだと思う。

そして本当の終わり(?)は、物語のその後をうかがわせるような写真で締めくくられる。この終わり方も本当にすごく好き! だって「幽☆遊☆白書」の終わりも大好きだもんね! あの写真ぺらってやつイカしてる。どうかみんな健やかで。幸せで。祈らずにはいられない。

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誰かと分かり合うこと。誰かと一緒に時間を積み重ねていくこと。難しいから尊い。だけど難しいから歪にもなりえる。そういうことを藤原ここあは描いていた人なのかな、と思った。もっともっと先生のストーリーものを読みたかった。ずっと画集を買い損ねていたことが後悔だった。今回DMMのおかげで画集も安く買わせていただいた。いつか、紙も、ちゃんと手に入れたい。

「BEASTARS」板垣巴留、秋田書店

はーちゃめちゃに面白かった。好き。休日が溶けた。買ってよかったー。

「自分以外の人間との交流はいつだって異種族交流。」

最終巻あとがきの板垣先生のお言葉。本当にそう思う。この漫画の世界はもちろん、いろんな種族が暮らしているので、常に異種族交流なんだけど、それは私たちだっておんなじなんだよね。人種とか言語とかだけじゃなくて、友達や家族とだってそう。他者なんだもの。わからなくて当たり前だし、わからないからこそ、わかろうとしてかないとわからないままになってしまう。とっても難しいのよな。

マンガや小説を読んでは何度でも人はわかりあえないということを思い知らされる。普段、人の心って見えないから、何度でも思い出させてもらわないと、簡単に忘れてしまう。だから本を読むんだろうなあ。

めちゃめちゃマンガを描くのがうまい人だと思った。マンガは描いたことないからわかんないけど、恐らく構図とかめちゃくちゃうまいのでは。だってすごく読みやすいもの。コマ割りで迷うところないし、読み間違えた記憶がない。あと余白もうまくて、仕草だけで心情が伝わったり。すごく読みやすくて、その辺が読むうえでストレスがなかった。話もおもしろいし、すごい人だー。

「秘密」清水玲子、白泉社

面白かった! が、振り返るとなんだかよくわかんないマンガでもあった。桜木紫乃『砂上』を読んだ時と似ている…。なんか色々受け取った気はするんだけど、もやっとしている。「BEASTARS」がわかりやすすぎたせいもあるんだけど、こちらはわかりにくい…。言語化しにくい。

最終巻で、薪さんが滝沢のことで揺らいだ時、岡部が「滝沢は真っ黒です」「そんな男を善人にしないでください」とハッキリ言ったの、すごくよかった。悪い人も、全部が真っ黒じゃないから難しいんだよな。でも奴はやっぱり悪い奴だったよ。そう言い切れる岡部のすごさ。薪さんにとっては救いだったんじゃないかな。

『医療の外れで』木村映里、晶文社

こういうエッセイみたいな形式の本って、いまだにイマイチ読み方がわからない。小説より、区切りが早めにこまめにくる。だからか、なんか、毎回どこまで読んでいいのかつかみにくい。

世の中で生きづらいと呼ばれるような人たちのおはなし。自分のこともわからないのに、他人のことなんてもっとわからない。わからないのに、イメージや噂で決めつけてたり、最初の印象とかでラベリングしたり、そういうことって多い。簡単だし、楽だし。でも人間ってそんな単純じゃない。背景がある。わかろうとするのってとっても疲れる。疲れるけど、背景に思いを馳せないと、簡単になかったとこにしてしまう。「摩擦はゼロ」じゃない。まわりまわって自分の首をも絞める。

冒頭で、新人さんが職場に来たと書いたけど、そのうちの一人が恐らく、ADHDとかの発達障害を抱えた人だった。だった、というのも、たぶんもう職場に来ないからだ。やるせない。このことを私は忘れられないんだろうな。どうか、せめて、彼女が次の職場では、働きやすいといいなと思う。

『うつくしい人』西加奈子、幻冬舎

再読。文庫版あとがきがとてもよかった。

皆さんいつまでも、私の「誰か」でいてください。

でんぱちゃんの対バンでサンボマスターを見た時、似たようなことを言っていたのを思い出した。クソみたいなこの世界で、それでもこうやってあなたがいていくれるから、だからまた生き抜いてここで会おう、みたいなことを話していた。「すごくいいなあ」と思ったんだよ。アーティストからみたら、私たちってリスナーの一人でしかない、みたいな気持ちでいるわけじゃないですか。こっちからみたら、あなたは一人しかいないけど。でも、向こうから、あなたは大勢のなかのひとりじゃなくて、かけがえのないひとりひとりだって言われたら。すっごく嬉しい。その時と同じような気持ちになった。

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マンガや小説を読みながら、それがこの世界のどこにある世界かもしれないと思う物語であるほど、励まされる。わたしのいる世界にも、もしかしたらこの人がいるのかもしれない。こうやってなんとか生き抜いているのかも、と。なら、がんばろうって。ままならないことばかりだ。ちっとも楽にならない。明るい未来なんて信じられない。でも、おいしいもたのしいもたくさん知ってる。そばにいてくれる。しぶとく、すこしでもたのしく生きようね。

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