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ほん(さんがつ)

桜が散ってしまった。生まれ育ったところは、3月はまだまだ冬っていう感じだったのでとても不思議だ。東京に来てから、桜が咲くと春って感じがする。今年はなかなか春を感じられなかった気持ちもあるけど。早くお出かけできるといいよね。

『転職の魔王様』額賀澪、PHP研究所

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めちゃくちゃ見たことある絵が装画になっていて、新刊コーナーに平積みされていた。しかも特色のピンクを使ってそうな色でめちゃ目立つ。圧が強い。装画はおかざき真理先生だった。「うおー」と思いながら手に取り、本の裏側を見ると、すげぇ!イケメンが!おる!!! 一目惚れした。買うつもりじゃなかったから、お財布の事情もあるし、抱えたまま店内を練り歩いてしまった。うんうん唸りながらレジまでもっていった。こんな風に思わぬ出会いがあるから、書店は楽しいし苦しいよね。ジレンマ。

内容も大満足。めちゃめちゃに面白かった。おかざき真理の「サプリ」「&」「かしましめし」などで描かれている内容や人物に繋がるところがある。装画をおかざき真理に!と思った人はナイス(ださい)。帯文には、おかざき真理先生の言葉が寄せられている。

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大人になったら、一日の大半を「仕事」に占められる。意図せずして「仕事=人生」になってしまう。だから、

「仕事が全て」とか、もう流行らないけど。けど、どうしても仕事は人生の大半を占める。仕事をすることによって、お金がもらえて、生活をすることができる。仕事をしているから居場所がある。うまく言えないけど、時間的な意味合い以外にも、人生において、「仕事」は結構な割合を占めている。だからこそ、仕事を考えるということは、自分の人生を考えることなのだと、この本を読むときりきりと感じられる。

ざっくり言えば、転職を考える人たちとそれを手助けするキャリアアドバイザーのお話だ。「転職」という道を、人が考えるのはいつだろう。身体を壊したから、知り合いが始めたから、将来が不安だから…… この本でもちょっとしたこと(でもきっとちょっとしたなんかではない)をキッカケとして、様々な人物が「転職(=仕事=人生)」を考える。

宇佐美由夏という女性が出てくる。彼女が「転職」を考えるのは、たまたま心がささくれだつようなことが重なったからだ。同じ派遣という立場の同僚に「転職活動をしてるんですよ」と告げられ、彼氏に「人生って一度きりじゃん。だからさ、お互い妥協したくないだろ?」と別れを切り出されたのが、たまたま同じ日だった。ちょっとした復讐じゃないけど、なにかそういう気持ちが、「転職」という選択肢になって彼女の前に現れたみたいだった。自分はかわいそうじゃない、見返したい、みたいな。

その2つの出来事が重なったのはたまたまでも、転職をしたい、という気持ちは、たまたま湧きあがったものではない気がする。

彼女は、同僚の「彼氏がいるなら結婚して派遣やパートでもいいですもんね」発言に、「『私は嫌だけどね』という本音が含まれているような」気持ちになってしまう。こういう描写が他の転職希望者にもたびたび見られる。彼女のように、誰かの発言にを読み取ってしまうときって、誰かではなく、なによりも自分がそう思っているのだろう。誰かの発言をどう受け止めるかは自分の解釈次第だから。だから、「転職したい」と何かのきっかけで考えるようになるのは、自分の中にその気持ちがどこかにあったということなのだと思う。

宇佐美は「雇ってもらえるならどこでもいい」と言って、後ろ向きな感じで転職活動を始める。そして現在の職場と似たような条件で、しかし正社員としてある会社から内定が出る。(正社員!)

「貴方が必要だ」と言ってもらえた。勢いで始めてしまった転職活動だったけれど、やってよかったと思った。混み合う電車の淀んだ雰囲気が、全部清々しいものに変わった。(p.80)

誰かが私を私と認めてくれて、私たちは自分を認識できる。呼びかけてくれる誰かがいないと困ってしまう。内定が出ることは、選んでもらえた、「貴方が必要だ」と認められたという気分になる。「全部が清々しいものに変わっ」てしまうくらい、とてつもなく魅力的だ。

でも私たちの人生は、誰かに承認してもらうことが全てなのだろうか。誰かから求められ、認められれば、自分は幸せだと自信をもって言えるのだろうか。納得できるのだろうか。

寺田ソフトは、歴史こそ長いが小さなソフトウェアメーカーだ。年収は三百万円。克行と結婚して、共働きで生活していくなら、充分な額かもしれない。でも、そんな未来はない。もしかしたら一生独身かもしれない。将来、親の介護をしなくてはならなくなったら? 年収三百万円で本当にいいのだろうか。あれ、昇給のこと、ちゃんと聞いてない。面接で質問しておけばよかった。大体、ずっと事務職でいいんだろうか。何かのタイミングで派遣や契約社員に切り替えられたっておかしくない。(p.81)

他人からの承認は、ほんの一瞬だけ、私たちを満たしてくれる。安心をもたらしてくれる。だけどずっとその承認を無条件に与え続けてくれるわけじゃない。自分の今に何かしら疑問を持ったから「転職」を始めたはずのに、なんでもいい、今と似たような、では納得できるわけないんだよね。

「ここに正解は置いてません。何が正解かは宇佐美さんが決めるんです」(p.84)

何が正解か安心かがわからないことを、自分で決めることはすごく怖い。失敗するかもしれないし、後悔するかもしれない。外に基準が欲しくなる。正解を教えてほしいと思う。他人が言うならと縋ってしまう。でも、何が正解か安心かがわからないことは、誰が選んだって結果はわからない。

何が失敗で成功なのかは、常に一定ではなく、変わっていくものだと思う。仮にその時、失敗だと思っても、その経験があったからこそ乗り越えられたと思う瞬間がくるのなら、その失敗も失敗でなくなるのかもしれない。物事が一面でないように、何が成功で失敗か、幸せか不幸なのかは捉え方次第なんじゃないだろうか。

他人は、私の人生を背負ってはくれない。何もわからないなら自分にとっての「正解」を自分が決めるしかない。とても大切なのにおざなりにしがちだ。仕事内容だったり、給料体系だったり、福利厚生だったり。仕事にどういうものを望むのかというのは、自分が「どうありたいか」ということに繋がっている。自分の人生をどうしていきたいか、だ。それにどういう仕事に就きたくて、何を望むのかということがはっきりしないと転職にめちゃくちゃ苦労する(体験談)。

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すごく長々書いてしまった!!!びっくり!誰が読むんだって感じ(笑)ここまで読んでくれた人ありがとう!

こんなに書いちゃうくらいには、この本を読んでいろいろなことを思って考えた。私は転職を経験している。望んでた業界で働けているし、心身ともに以前よりとても健康になった。だから転職してよかった。でも!やっぱり!それなりに今の会社に不満があることに気がついてしまった~!

何巻か忘れちゃったけど、「サプリ」に「自分が望む仕事が初めから用意されてはない」というセリフがある。最近になって本当そうだよなあ、と思う。望む方へ近づくように自ら努力しなきゃいけない。自分で自分の仕事をやりがいのあるものにしたい。だから!今年は!やりたいことをやるの!着たい服を着るし、資格の勉強する!自分で自分を幸せにしたい!失敗したってなんとかなってきたもん。大丈夫。がんばろ。

決意を新たにして、とりあえずおわり。(あ、本書に出てくる来栖さんが大好きです)(挟み忘れた)


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