見出し画像

河野咲子「奇術倶楽部の女」

◆作品紹介

この上なくやわらかい身体を持つ「わたし」と「あゆむくん」は、稀代の人体切断ショウを披露して回る。ありとあらゆる仕方で破壊され、再生される身体。それはもはや取り戻すことのできない喪失の再演である。とっぷりと暮れた夜の底で繰り広げられるグラン・ギニョールの夢。それが悪夢か否かは知るべくもないが、美しいショウであることにかわりはない。ところで「わたし」はファム・ファタールめかしてふるまうが、この「運命」を意味する "fatale" の語源は「(神が)話すこと」だという。物語ること、それはとびきりの魔術であり、奇術である。(編・青山新)

ここから先は

8,719字
〈anon press〉ではビジネスとフィクションを接続することを目指し、SF作家・文筆家・エンジニア・研究者・デザイナー・アーティストといった多様な方々のテキストを配信していきます。マガジンを購読いただくと過去の記事を含むすべてのテキストをお読みいただけます。

未来を複数化するメディア〈anon press〉のマガジン。SFの周縁を拡張するような小説、未来に関するリサーチ、論考、座談会等のテキスト…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?