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anon future magazine

未来を複数化するメディア〈anon press〉のマガジン。SFの周縁を拡張するような小説、未来に関するリサーチ、論考、座談会等のテキストを配信していきます。更新頻度は月4回程度…
〈anon press〉ではビジネスとフィクションを接続することを目指し、SF作家・文筆家・エンジ…
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2023年7月の記事一覧

平大典「【対東京《バーサス・トーキョー》】Versus Tokyo」(6)

   Ⅵ  拾得は、平常運転で真っ黒服装だった。  かという俺も黒一辺倒だった。多少の違いもある。拾得はいつもフード付きのパーカーだったが、俺はロングスリーブの上に釣り用上着を着るスタイルになっていた。拾得は手先が異様に器用なのだろう、パーカーのポケットから猫型ロボットのように的確に道具を取り出す技術を持っていた。一方の俺はそんな繊細な芸当はできず、ポケット数が多い服を着て、持参した道具の収納場所を習慣づけるほうが向いていた。

久乙矢「算業構造審議会 著作権制度小委員会「隷和5年度著作権制度改革(復活)の方向性検討に関する中間報告」」

◆作品紹介

北野勇作「亀の俳諧」

◆作品紹介

樋口恭介「極光」(2)

富永夏海『湖畔のエコー』

〈anon press〉から電子書籍第二弾となる、富永夏海『湖畔のエコー』が発売されました。 ◆収録作品 2011年から2014年にかけて『カオスカオスブックス』を手がけ、その精緻に構築された世界観で話題を呼んだ著者が送る、最新幻想/SF短編集です。 これまで〈anon press〉にも「眼窩の街」「何もない国 Blissful Era Edition」「天使」といった傑作短編を発表してきた著者。今回の短編集は加筆修正を加えた過去作2篇と、表題作「湖畔のエコー」を含む書

平大典「【対東京《バーサス・トーキョー》】Versus Tokyo」(5)

  Ⅴ  標高七一〇メートル。東京五角議事堂の中央塔の内部。  壁に螺旋状の階段が設置されているだけで、地上までは伽藍洞になっている。こんな深夜では人の影はない。申し訳程度の電燈。落ちれば死が待っている。  巨大な穴だった。 「よしよし。これから宵名物の垂直落下式根性試し遊戯だ。どっちかが死ぬか、両方死ぬか、誰も死なないかもだ。愉しめよ」  天井に付帯する作業用通路に立つ野獣道は俺の首根っこを掴んだままだ。武器の金属バットは持たせてくれているが、両脚はブラブラの状態だ。  

吉田棒一「俺太郎」

◆作品紹介  むかしむかし、あるところに俺たちがいた。俺はひろし。だがお前たちの知ってる昨日までのひろしはもうここにはいねえ。俺は元気もりもりひろしだ。もりもりになったんだ。元気が。ひろしの元気がもりもりになってマジでよかったぜ。なぜならずっと戦い疲れて元気がなさそうだったから。  そして俺もひろしだ。もう一人のひろしが登場した。出現した。ひろしは一人じゃねえ。世界にひろしはあいつ一人だけじゃねえんだ。俺たちは仲間だ。ひろしとひろしは仲間なんだ。ひろしは複数いる。ひろしは数