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【本】『言の葉の森-日本の恋の歌 』チョン・スユン(吉川凪訳)

序文にこんなくだりがある。

言語には一種のマジックがある。心地よい言葉は私たちを心地よいところに連れていってくれるし、美しい言葉は美しいところに連れて行ってくれる。地獄を盛り込んだ言葉は地獄のようなところに連れてゆく。
말-マル(言葉)は人間の乗る말-マル(馬)だ。私たちは自分の言葉が進む方向に行く。これは真理だと思う。


本当にその通りだと思う。
自分にとって心地よい言葉。
それは人それぞれだと思うが私にとってはまさにそれが韓国の言葉である。
この言葉に導かれて色々な美しいもの心地よいものを沢山見聞きして体験してきた。

そんな韓国の言葉で日本古来の歌、和歌が私のもとに訪れた。
和歌の再発見である。

この作品では万葉集や古今和歌集などから日本の和歌を代表する歌人たちの作品を翻訳家であるチョン・スユンさんが韓国語に翻訳している。
それも和歌の決まりである五七五七七の31文字の型を韓国語でも守る工夫がされている。

韓国語訳の和歌→日本の原文→日本語訳という3つのカタチで和歌を楽しむことが出来る素晴らしい作品になっている。

選ばれた65首は主に百人一首などで私たちま慣れ親しんだ和歌だが日本人でも和歌の解釈を出来る人は多分少ないと思うのになんと素晴らしいことだろうか。

また和歌からインスピレーションをえたエッセイの一つ一つも楽しませてくれる。
言の葉が作り出す森の中でいっぱいの森林浴をした気分だ。

チョン・スユンさんは茨木のり子の詩を翻訳されていて読書会なども行っておられるそうだが「言の葉の森」はそこからきているのだろう。

参考までに原書のタイトルは『날마다 소독한 날(毎日が孤独な日)』。


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